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異世界で、なんか、流されるように生きている  作者: 豚煮豚


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215 コイツが殺人鬼だろ

 

 無様(ぶざま)に街へと戻ってきた俺は、親方から貰ったお金でご飯を食べてから鍛冶屋に向かった。

 もう夕方だし、点検も終わってるでしょうな。そもそも親方ならこんなに時間かけなくても出来る気がする。


「あ、こんにちは」

「はは……アレでしょ?」

「ありがとうございます。あの、おやか……ミリアさんは?」

「ご飯だよ」

「あぁ、分かりました」

「あの……」


 いきなり店主に話しかけられた。もしかして親方に何かあったりとかかな? それか、俺も手伝わないか? みたいな。そうなったら旅もしなくて良くなりそうだし、嬉しいかも。


「キミ、ツイてるね」

「え? どういうことですか?」

「ここには殺人鬼がいるの。なのに死んでないってツイてるよ」

「……そんなに頻繁(ひんぱん)に事件があるんですか?」

「死体が見つかってないのも含めると沢山起こってる。行方不明の人達」


 やっぱり旅をするべきですね。例え俺だけが生き残ったとしても、必ず大臣の故郷は見つけてやるからな……

 しかし、あまりにも怖すぎないか? こんなに殺人が頻繁に起こってる場所あって良いの? 殺されていないことに感謝しなければいけないって、極限の状態にあるじゃん。


「アルミコさんは大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ」

「でも、気を付けてくださいね」

「鍛冶屋だからじゃないかな? こんなに凶器ばっかり置いてある場所には誰も来れないよ」

「確かに。そうかもしれないですね……」


 思ったよりも会話が弾んでるな。この調子で他国のことについても聞いてみようかな? 良い人そうだし。

 それにすぐ会えなくなるんだし、ちょっとぐらい失礼なことしてもなんとかなるだろ。しないけどね?


「あの、聞きたいことがあるんですけど?」

「なに」

「実は、俺たち色々と旅をしてて、それでここ以外の国の話を聞けたらなぁって」

「はは……でも、僕も詳しくないよ」

「ずっとここなんですか?」

「違う。元々はメイにいた」


 お! メイってあれじゃん。前に大臣も言ってた国名じゃん。その感じからすると五月っぽい気候なんだろうか? まだまだ過ごしやすそうな感じですね。あんまり良くは分かんないけど。


「それは、遠くにありますか?」

「遠いよ。色々な国を転々としてたから」

「なるほど。ありがとうございました」

「……鍛治の国だよ? 好きなんでしょ」

「あぁ……ならそこでも鍛冶屋だったんですね」

「違うよ。ただ、その国の名前を使うと売れるんだよ」

「じゃあ、元々は?」

「普通の人だよ。元々は」

「普通の仕事?」

「普通に生きてたよ。それに、普通に怒られたりとかね? はは……」


 良い人そうで、しかも、ここで生まれたわけでもないのにここにいるってことは、色々なことがあったってことなんだろう。そこまで詮索(せんさく)するのは失礼になりそうだな。


「人付き合いが苦手でさ? どうしても上手くやっていけなくてね」

「まぁ、ありますよね……」

「どうしてもダメだったんだよ。だからね? はは」

「それでここに来たんですか?」

「今はここにいるよ。それに鍛治って楽しい」

「そうですよね。ははは」


 個人的には鍛治の楽しい部分にはあんまり触れて来なかったので、そんなに楽しい仕事だった記憶はない。親方と一緒に仕事をするのは楽しかったけど。


「どんなに汚いものでも、溶かしちゃえば一緒だしね」

「……へぇ……」

「だから、それを見るのが楽しい。目が痛くなっても見続けちゃうんだよ。はは」


 鍛冶ってそんなに魅力的なの? ちゃんとはやったことがないから分かんないな。

 親方とかも完全に取り()かれてるし、どこかに人を強く()きつけるような要素は間違いなくあるんだろうな。もし、セントラルに戻れたら俺も鍛治を本格的に始めてみようかな? 親方に教わったらすぐ出来るだろう。


(おい)

「……」

(コイツが殺人鬼だろ)

「え!?」

「どうしたの?」

「いや……あの、窓の外見たらもうこんな時間だって……」

「はは……それなら、渡すから」


 アルミコさんはそう言って店の奥の方へ行った。それにしてもルドリーはめちゃくちゃ突拍子もないようなことをいきなり言い出したけど、何? なんでそう思ったの?


「……なんで?……」

(どう考えてもおかしいだろ。あんな細い奴がどうして襲われてないんだ? この辺りで起こってることなんだろ?)

「うん……多分」

(それならもう少し(おび)えても良いはずだ。他にも、どうしてここに来ることになったのかが曖昧(あいまい)だ、隠してることでもあるんだろ)

「へぇ……」

(こんな話をする必要なんかないんだ。明日死ぬかもしれないような、酷く身近にある恐怖をどうしてあんな平然とした顔で話せるんだ?)

「……」

(ツイてる。というのはそういうことだろ? 運に任せなければいけないほどにここが危ないんだとしたら、普通の人間だったアイツはもっと怯えてなければおかしい)


 え、ルドリーが言ってるってことは本当にそうなの? 俺、良い人そうだなぁって思っちゃってたんだけど、めちゃくちゃ悪い人だった? だとしたら見る目がなさすぎる……


(消えた死体はあの、高熱の()の中だろうな。都合が良いんだろ。鍛治は死体を隠すのに)


 そんな気がしてきたぁー。えー、親方は大丈夫なの? こんな殺人鬼……いや、断定しちゃダメだけど、その危険性がある人の近くでって……マジか……


(幸いにもコイツは魔法を覚えていない。むしろ幸運だろうな)


 あぁ……ルドリーは俺の心が読めてるみたいにそんなことを言ってきた。確かに、人間離れした殺人鬼が人間だったって分かったのは良いことかもしれない。良くないけど。


(噂になるぐらいなのに、まだ犯人が捕まっていない理由も説明できるだろう。こんなに細い腕をした弱そうで物腰の低いような奴が殺人鬼である訳がないという先入観だ)

「持ってきたよ」

「はい!」


 ダメだ。俺の中ではもう殺人鬼で確定なんじゃないかって思い始めてる。シンプルに怖くなってきちゃった……なんで、このタイミングで言うんだ。帰ってからで良いじゃん。


「そ、それじゃあ、ありがとうございました!」

「はは……またね」


 出来るだけ違和感のないように……なんてするだけの余裕もなかったので、バリバリに変な感じになってただろうけど、なんとか普通にお別れをすることが出来た。はぁ……もうここには来ないようにしないと……


(ただ、確証は何一つない。殺人鬼かどうかは分からないと言うことだ)

「えー、でも、信じちゃったよ?」

(無用心にしているよりはいいだろう。どちらにせよ、この辺りには殺人鬼がいるそうだからな)


 どっちなんだ。ルドリーは俺を使って遊んでるのか? 俺の反応を見て喜んでる感じか?

 ここにも敵がいるぞ。俺の中にも敵がいる。


 普通に怖くなってきたので、少し早足で宿に戻る。やっぱり旅しよう! ここは怖い!

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