210 UFO?
今日泊まる部屋は二階だった。そんなに綺麗ではなかったけど、別に泊まれないわけじゃない。一応シーツも白の色をしているし、ホコリもあるにはあるが、気にしなければ問題ない。自分の家だと思えば問題ないはず……てか、カーテンは? 朝になったら目覚めちゃうじゃん。
はぁ……とその部屋で一息ついた後、すぐにまた部屋を出て行く。親方に会いに行くためだ。
このままのんびりしてると絶対めんどくさくなるから早めに行こう。うん。
鍛冶屋へ向かっている途中の道で、ふとした瞬間に不思議な物を見つけた。
空に浮かんでいて、軽く光っている謎の物体。前の世界ではアレをUFOというのだが、この世界にも……いや、この世界には宇宙人がいるのか?
もしかして飛行機? 機械がどうのこうのって言ってたけど、そこまで発達した技術があるのか? ヤバいな。
あまりにも分からないので、指を差してカエデさんにも知らせてみる。知ってるかな?
「ん? あれなんだろ?」
「なんでしょうか?」
「ああいうのって見たことある? 今まで」
「うーん。もしかするとドラゴンかもしれないですね」
カエデさんが言うにはアレはドラゴンみたいだ。ホントに? なんかそんな気はしないけど、考えても分からない気がしたので、ひとまずドラゴンだということにしよう。どうせすぐ忘れるし。
「まぁ、そういうこともあるのかな?」
「そうなんですかね……あ、こっちです」
俺は方向音痴だからカエデさんが居てくれて助かる。大臣もイーリカも来ないって言ってたし、もし一人で行くことになってたら絶対に迷ってた。良かった。
二人が来ない詳しい理由は知らない。今頃何してるんだろうか?
カエデさんが目的地の家の扉をノックする。おそらくここが鍛冶屋だ、川沿いだし。
しばらくすると中から親方が出てきた。もうすでに作業を始めているのか、服が身軽なものになっている。
「あ、親方」
「お前か。中に入れても大丈夫か?」
「あ、大丈夫ですよ。どうぞ」
「店主ですか?」
「そうだ。この街に居る間はここで手伝いをすることになったんだ」
「え、ずっとですか?」
「そうだ」
「ははは……ありがたいですよ。僕の知らない技術もあったりして……」
「私もそうだよ。会えて良かった」
「はは……そうですか……」
少し気弱そうな色の白い細い男性だった。ホントに鍛冶屋やってる? ガッツリ肉体労働だから自然と身体ももっとデカくなるはずなんだけど……体質か?
「名前はアルミコというらしい」
「よろしくお願いします……アキラです」
「私はカエデです」
「そうですか……よろしくお願いします」
しかし、こんな気弱そうな人がこの街でやっていけるのかな? てか、失礼なことばっか考えてるな。
治安が悪いって噂だったけど、そこまでじゃなさそうだな。親方も無事に鍛冶屋に着けたところを見ると、ちゃんと案内はしてもらったんだろう。
それから鍛治の様子を少しだけ見た後、宿に戻っていくことになった。途中、親方が本当にここに泊まるのかを聞いてみたが、今日は寝ずに一晩中鍛治をするらしい。
可哀想なアルミコさん……これ以上やつれたら死んじゃう……
帰り道に空を見上げてると、またUFOが飛んでいた。ずっとあそこに留まってるってことは、多分だけどドラゴンじゃないな。だってドラゴンだったら、すぐにどっか行っちゃうでしょ。
じゃあなに?って疑問は無視して、宿屋の中に入って行く。カエデさんとの話も盛り上がってたから、そんなことはどうでも良かったのだ。
部屋は一人一部屋。まぁ、別に俺とカエデさんは一緒でも良かったんだけどね。ただ、これだけ借りられたってことはお金には困ってないのかもな。
このままここでお金を荒稼ぎして、別の街に無理やり入り込んでいく感じか?
大臣がどうやって自分の故郷を探そうとしているのかは分からないけど、きっと上手いことやるんだろなぁ。
(あー、大臣?)
(ん? どうしたの?)
(これからの目標って決まってたりします?)
(うん。とりあえずはここで次の目的地を探すのが目標だね? はは)
(じゃあ、結構ここにいる感じですかね?)
(そうかもしれないね。でも、今日中にはどこかへ出発してるかもしれないよ? ははは!)
(それは……それは流石に嫌ですけど……まぁ、目的地を探してるってことですね。わかりました)
(そうだよ。その間は君も好きにしてて良いよ。はは!)
(まぁ、手伝える事があったら言ってください。あの、いきなりすみませんでした)
(気にしないでよ。僕も同じようなものだから)
(それじゃ、また明日)
(ははは。明日かな?)
テレパシーで色々と聞いてみた結果、ここに長居しそうな気配を感じた。やっぱり正攻法で街に入れないのって情報収集をする上で相当な障害になるだろうし、透明とかじゃなくてちゃんとしたやり方で入った方が良い。
でも、別にここで生活するのもそんなに悪いことでもないかもしれない。間違いなく野宿よりは良い環境……そんなこともないか、魔法使いづらいし。
治安もそんなに悪いわけじゃなさそうだ。それになんだか新しいものに触れるのは面白い気がする。
本格的に旅って感じがしてきた。これはこれで楽しいかもしれないな。
そんな気持ちでベッドに横たわる。はぁ……もう寝よう。女神様に会えるかもだし。
特に魔法とかも使う事なく眠気はやってきて、最終的には寝た。おやすみ。




