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19 顔色悪い背の高い大工

 

「……すみません……」


 なんか俺の家のドアを叩いてる背の高い細身な白髪(しらが)が混じった男性がいる。ここからでも骨のように細い腕が見えた。


 家のドアを腰を屈めて叩きながら小さな声でボツボツ呟いている。なんだろうあの人。

 しばらくじっと見ていると諦めてしまったのか帰ってしまいそうになっていたのでここから声をかけてみた。


「あのー! その家に何か用ですか?」

「……………………」


 振り返った真っ白な顔がこちらを向いた。何か言っているようだけど、何も聞こえてこない。歩いてそこまで向かうことにした。


「……君は、ここの人か?……」

「はい、この家は一応、俺のです」

「……私は……この家を綺麗にしに来たんだ」


 綺麗にってどういうこと?リフォームしにきたってことかな。


「あ、大工の人ですか? よろしくお願いします」

「……終わったら言うから……どこに行けば会えるか……」

「真向かいの家に居ると思うんで、来てくれれば大丈夫です」

「……おそらく……時間はかかるけど……待っててくれ……」


 近くでみると想像よりもデカい。曲がった腰をぐっと伸ばしたら二メートルはあるかもな。


 家に戻って親方に話してみた。


「さっき家の前になんか、ガイコツみたいな背の高い人がいたんですけど知ってる人だったりしますか」

「あぁ、彼なら知ってるよ。たまにここにも見にくるしな」

「何者なんですか?」

「大工だよ。きっと下見に来たんだろうな。いつもは図書館でずっと本を読んでる」

「時間がかかるって言われちゃったんですけど大丈夫ですか? 二人ともそんなに世話になっちゃって」

「ん? かかるに決まってるだろ。元々すぐに終わるなんて思ってないからお前は気にしなくてもいい」


 親方! この人めっちゃかっこいいわ。職場の先輩がこの人で良かったわ。


「……あの……鍛冶屋の管理人の方ですか?……」

「ああ、そうだが! 何か?」

「……店も崩れかけだ……ついでに直してもいいか?……」

「もう私たちの褒美は残ってないんじゃないか? あとで何か言われても知らんぞ」

「……見たところそこまでの破損じゃない……だから余るんだよ……」

「それって、どういうことですか? 褒美が余るなんてことあるんですか?」

「……あぁ……ちょっと疲れたから座ってもいいか……」


 そういうと玄関に座った。そういえば名前聞いてないな。


「なんて呼べばいいですか? これから何度か会うこともあると思うんで」

「……アーノルド……よろしく……」

「俺はアキラです。よろしくお願いします」

「……話を戻そうか……君の家は壁もあるし、床も一応ある。屋根もチェックしたが、とくに問題はない……」


 ゆっくり喋ってるだけなのにものすごい大事な話を聞いてる気がしてくる。顔もピクリとも動かないし、とにかく血色(けっしょく)も悪い、こっちも身構えちゃうな。


「……だから余るんだよ……つまり、君のやったことと吊り合わないんだ……」

「なるほど、それで鍛冶屋もやってくれるってことですか」

「……もちろん……他のことでもいいよ……」


 俺としては職場が綺麗になるのはありがたい。けど、これは親方が決めることだな。

 親方の顔色をみるとなんだか悩んでいるようだったが口を開いて言った。


「それじゃ、渡航券(とこうけん)をもらおうかな! 山への渡航券をもらいたいのだが、いいか?」

「……いいが……何しにいくんだ?……」

「ドラゴン狩りだよ。決まってるだろ」

「え! またドラゴン狩り??」

「ああ、ダメか? 前回で分かっただろう? 私の作った物は安全だ。もちろん今回は君だけじゃなくて他にも助っ人を呼ぶよ」


 助っ人って誰だろうな。知ってる人か?


「助っ人って誰ですか?」

「君も知ってるだろ、アイラだよ。雑貨屋で働いてるあの子だ。あの子を連れて行くんだ!」


 この世界にいる以上は弓を使えたりはするんだろうけどあんな鈍感そうな子で大丈夫なのか?


「あの子って弓使えるんですか? そんな感じには見えなかったけどな」

「……邪魔なようだから……帰らせてもらおうかな……」


 あ、忘れてた。


「あ、すみません。じゃあ、工事よろしくお願いしますね?」


 今まで座っていたが立ち上がってみると本当に巨人かと思うくらい、背が高い。しかし玄関が低いせいか腰はクソ曲がっている。猫背を超えた猫背だ。


「アイラって子にはもう話してあるんですか? 断られたりとかありそうじゃないですか? 危ないし」

「断らないんじゃないか? まぁ、嫌だと言うなら無理強いはしないよ。大丈夫だと思うがな」


 やけに自信があるな。あの子が親方に対してなんかすごい熱を持っているのは俺も分かるけど命の危険のことを考えたら断るのもありそうだけどな。


「あの! それ私が行っても良いですか? きっと力になれると思います!」


 カエデさんなら俺も安心できる。色々と助けられたことがあるから。


「君には城での仕事があるだろ? 大丈夫だよ! そんなに大変なことをするわけじゃないからな」

「でも、大丈夫ですよ。休みの時もあるはずなので、そう言う時とかに」

「君は王子の子守だろ? 休みなんてないと思うけどな?」


 休みなしってマジか。この国って結構ブラックなんだな。


「あ、そうなんですか……すみません、出来ないこと申し出(もうしで)ちゃって」

「ドラゴンを倒すことなんかよりも、君の仕事の方が何倍も大事だよ。だから、君はもっと誇りを持っていい!」

「ありがとうございます! あの、がんばります! 頑張って親方さんの助けになれるように一生懸命働きます!」


 たしかお城での仕事は明日からだっけ? じゃあ、今日がちゃんと話せる最後のチャンスかもしれないのか。


「このあと、街をちょっと歩かない? 話したいこともあるしさ」

「あ、はい! じゃあ、ちょっと支度しますね?」

「うん。わかった。」


 話したいことがあるかは置いといて話しておきたい。


 親方の視線が痛い。別に親方が思っているようなことを話すわけじゃない。と思う。



読んでいただきありがとうございます!


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