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196 お荷物係

 

 朝になってもまだ雨は降っていた。

 出発する直前、ドラゴンに縄を巻きつけている時に、前の日に建てた家の存在が気になった。


「あの、家ってあのままで良いんですか?」

「良いんじゃない? だって、いつかはみんなも他国に行くでしょ」

「……セントラルのみんなの為にってことですか?」

「うん。きっと使うと思うよ? ははは」


 使うのかな? ていうか、やっぱりみんなも他国を探しに行ったりするのだろうか?

 実際どうなるのかは分かんないけど、エラさんがセントラルに残っているってことはそういうのもありそうだな。一応、他国なんとか隊だし。

 あ、そういえば、エラさんにハヤトのこと聞くの忘れてた。ま、いっか。仲良くしてるでしょ、多分。


 雨の中でも山は高い。空気が薄いのか、そうでもないのかはよく分からなかったが、とにかく今はこの場所から抜け出して、少しでも暖かい場所に行きたいと思っていた。


 朝の寝ぼけたような自分のままで、とにかく大臣のドラゴンに着いて行ってみると、なんとなく向こうの空が明るくなってきているように見えた。あら? 雨、降ってないのかな?


 山を抜けた先では雨が止んでいた。ついでに他国も見つかった。あ、本当にあるんだ。


(あったね)

(そうですね! 今日はあの国に行くんですか?)

(そうだよ。僕も初めていくから問題があったらごめんね? はは)

(まぁ、なんとかなるだろう)


 他国はここからみると、セントラルと変わらない感じだ。至って普通、まぁ、この世界の普通が分からないけど、特別、セントラルとの違いは分からない。なんかもっとワクワクするようなのを期待していた自分もいるけど、まぁ、しょうがないだろう。


(降りるよ)


 そう言って大臣は街から少し離れたところに降りた。まぁ、ドラゴンに乗りながら知らない人たちが街に入ってきたら物騒だしな。

 少し歩いて、街のちょっとした門みたいなところに着く。人が立ってるけど、入れてもらえる? 面倒な事になったら、嫌だなぁ。


「こんにちは」

「な、見ない顔だな。誰だ?」

「別の国の人間なんだけど……ちょっと旅の途中でさ。入れてもらえない?」

「それなら先にどこの国の人間かを言え。国の名前はなんだ?」

「国? そうだよね? はは」


 確か、ここでは他国同士の交流があるみたいな話を聞いたような覚えがある。

 でも、いきなり門番に聞かれて大臣も困っているようだ。人任せだけど、大臣ならなんとかするでしょ。多分。


「セントラルって知ってる?」

「セントラル? 知らんな」

「だよね。これまでも、どの国でも、誰にも知られてなかったから、君が知らなくても当然だよね」

「遠くの国なのか? それとも小さいのか」

「遠いね。あの山の向こうにあるんだけど、分からないよね?」

「あぁ、知らない」

「で、どう? 僕たちはこの中に入れそう?」

「ダメだな。私はその国を知らないが、もし、敵対関係にあった場合、面倒だ」


 敵対? なんか仲悪い国とかでもあるのか? ていうか、敵対ってもしかして戦争的なこともあったりするの? 怖いなぁ。


「敵対かぁ。分かったよ。それなら諦めようかな?」

「え? 諦めちゃうんですか?」

「うん。はは!」

「いや、でも、他国……」

(アイツのことだ。何かしら考えがあるんだろう)


 親方が俺の頭の中に直接話しかけてくる。まぁ、確かに大臣がこんなところで諦めるわけないよな。出来るだけ普通な、安全なやり方で中に入れるといいんだけど……うーん。


「あ、セントラルって国のことは、後で誰かに知らせておいてね? 知ってる人もいるだろうからさ?」

「分かった。数日後にまた来れば、敵対かどうかの判断もついてるかもな」

「そう? ならもう一回来ようかな」


 そんな感じで会話は終わり、結局はさっきドラゴンと降りたところへ帰ることになってしまった。そりゃ知らない人がいきなり来たら、そうなるよね。それに、今は国の仕事で来てるわけでもないし、入れられないっていうのも分かる。


「大丈夫でしょうか?」

「まぁ、親方も言ってたけど、なんか考えてると思うよ?」

「そうなんですかね?」


 それからしばらく歩いて、ドラゴンの元へと帰ってくる。はぁ……やっぱり帰りたい……そっちの方がマシだ。そういう話じゃないか。


「あっはは! はは!」

「え? どうしたんですか?」

「ははは! あっはははは!」


 みんなが一息つこうとしている時に、大臣がいきなり笑い始めた。しかも相当大きな声で。頭が……大丈夫かなぁ……


「……ふぅ……ダメだったね。はは」

「考えはあるんだろ?」

「あるよ。はは」

「何があるんですか?」

「透明になって勝手に入っちゃおう。どうやら調べないといけないことが沢山あるみたいだしね? ははは!」

「魔法でってことですか?」

「うん。僕だけだとずっと透明になるのは無理だから、ミリにも着いてきてもらおうかな?」

「いや、私にも調べたいことはある。それはカエデに頼んでくれ」

「わ、私ですか?」

「なら、よろしくね? カエデくん」

「は、はい! わかりました」


 透明になって勝手に入る。まぁ、それが一番無難だよな。流石に透明になればバレないだろうし、このまま何もしないのは……てか、俺は何をするんだ?


「え、俺は何をすれば?」

「ん? ここで待ってれば?」

「あ、いや、でも、手伝えることとか?」

「負担が増えるだけじゃないかな? 目的がないなら待ってれば? ははは!」

「はぁ……ならお前は私に着いてこい」

「あ、親方。良いんですか?」

「その方がマシだろ」


 親方は俺の方を見て、ちょっと笑った。あぁ、親方……カッコいいッス。うん。

 というわけで俺は特にやることも無かったが、ここで待つのも暇なので、親方に着いていくことにした。街の中の様子も気になるし。ただ、本当に俺が着いていく意味はあるのか?


 疑問を抱いたまま、さっきの街の方へと歩いていく。もしかして、俺はお荷物なのでは?

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