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18 女神像の部屋

 

 どこかで見たようなボロボロの建物があった。鍛冶屋に初めてやってきた時のことを思い出す。ここら(へん)はスラム街なのか? 汚い建物しかない。


「ここだよ。これから長い付き合いになるだろうから、しっかり挨拶しておけよ」


 中を開けるとこれが意外に綺麗で棚を触ってみても手にホコリやらがつくことがなかった。

 商品を見てみると親方が作ったであろう鉄製品やどこかで見たことがある木像(もくぞう)があった。あれ? どこで見たんだっけ?


「あぁ! ミリアさま! こんにちは! 今日もお疲れ様です!」

「この前も会っただろうけど……鍛冶屋の新入りだ。何か分からないことがあるようだったら教えてやってくれな? それじゃあ私はもう帰るから」

「えー! そんなぁ! まだ話も何もしてないじゃないですかぁ!? 待ってーー!」


 アイラさんは親方の後を追いかけてしまい、雑貨屋に一人で取り残されてしまった。その(あいだ)にもう一度木像を見てみてもやっぱり絶対どこかで見たことがある。

 それの前でじっと考えていると目の前に大きな影が見えた。びっくりして振り返る。見たことがある人が立っていた。


「やぁ、少年よ! このあいだは本当にありがとう! お礼と言っては(なん)なんだがな。この女神像を二つ君にプレゼントしてあげよう! 一個はここの少女に渡してくれ」

「え、たしか兵士に追いかけられてた人ですよね? なんでここにいるの? また逃げ出したとか?」

「今日はここにこの女神像を届けに来たんだ。逃げたわけじゃないさ!」


 自身満々にそう言っていたが外からドタバタと音がする。


「あの、外が騒がしいですけど、関係ないですよね? 大丈夫ですよね?」

「うーん、君は耳がいいね! いい男になるよきっと。しかし! まだ、私には外の世界に用があるんでね。こんなところで捕まるわけにはいかないのだ」

「やっぱり逃げてるじゃん!」

「はははははは! さらばだ! 少年!」


 そう言うと棚の器用に使って天井の(すみ)を外して屋根裏に消えて行った。そのあとでこの前お城で見た兵士の二人が息を切らして入ってきた。


「はぁはぁ……君! フーマを見なかったか!」

「え、フーマって白髪(しらが)のおじいさんのことですか?」

「あ、はい! そうです! その人がフーマです!」

「それならさっきここから出て行ってましたよ!」

「ご協力感謝する! それではいくぞ! 決して逃すんじゃないぞ!」

「分かりました!」


 前にも見たなぁ、こんなやり取り。なんだかボケーッとしているとアイラさんが戻ってきた。


「お待たせ致しました。あら? それってあの人の?」


 俺が両手に持ってる木像を指差してそう言った。フーマのおじいさんのことなのかな?


「確かフーマさん? だっけ? なんか女神像を渡しに来たとか言ってたな。代わりにもらっておいたからこれ」


 アイラさんにそれを渡すと少し頭を下げて、奥の部屋にそれを置きに行った。気になったので後を付けてみると不気味な部屋だった。


「え、なんでこんなにあるの……」


 部屋の四方八方に女神像が飾られていて、おそらく数百は軽く超えているだろう。

 薄暗いロウソクの明かりがぼんやりと灯っていた。


「いつのまにか増えていっちゃって。誰も買わないので困ってるんです」

「それにしても部屋一面に置いてあって、ちょっと怖いね」

「そうですかね? 一つ一つとてもステキです。まるで本物の女神様みたいで」

「女神様を見たことがあるの? この世界のことよくわかんないからさ。女神様のことも詳しくないんだよね」

「夢でたまに見たりします。とても綺麗な方なんですよ」


 あ、本来の目的忘れてた。掃除道具もらいに来たんだった。


「そういえば俺、あれ貰いに来たんだよ。ホウキとか雑巾とか」

「そうだったんですね。じゃあ、そこの部屋にあるので持っててください」


 中に入るとそこにも女神像が山ほど置いてあった……何個あるんだろ。全部あの人が作ったのかな。


「それじゃ貰ってくよ。じゃあね」

「ぜひまたお越し下さい。その時はしっかり歓迎させていただきます」


 なんか態度すごい変わってるけど、親方になんか言われたのかな。


 両手に荷物を抱えて雑貨屋を出て行くとまだ兵士の人たちが近くをうろついていた。こちらに気づくと荷物を鍛冶屋まで運んでくれると言ってくれた。それならと頼み込んだ後、遠くの方に白髪のフウマさんが見えた。

 兵士達は頭を下げて、向こうへ行ってしまう。なんであんなに逃げられちゃうんだろうな。


 親方の家に着いてゴミ掃除を一応、そこそこ終わらせた。これならここで寝泊りできる筈だ。我が家のリフォームが終わるまではここに泊めてもらう。ありがとう親方!


「だいぶ綺麗になったな。次は私の部屋を掃除してくれるか? どうせ暇だろうしやってくれよ」

「分かりました。それじゃちょっと行ってきますね」


 二階にいたカエデさんと一緒に掃除を始める。

 まぁお世話になるんだし、これぐらいは喜んでやろう。



読んでいただきありがとう!


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