表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/334

186 アヤカとハヤトとアキラ

 

 親方とカエデさんは未だに寝てた。

 勢いで来たはいいけど、そもそも二人は着いてくるのか? てか、カエデさんが来ないって言ったら、俺もここで生活することになるけど……いや、考えるな! 大丈夫……


「どうするんですか? 寝てますけど」

「良いんじゃない? このままで。起きたら出発しようよ」

「……その間、俺たちは?……」

「隠れてれば良いじゃん。それに、まだここでやる事もあるでしょ?」

「まぁ、確かに」


 隠れるのか、どこに隠れるのかは分からないけど、魔法さえ使えばなんとでもなりそう。てか、魔法といえばアレだよ。みんなに教えちゃったけど大丈夫なのか?


「あの、みんなに魔法、教えて良かったんですか?」

「良いよ。だっていつかは気付くでしょ?」

「大変なことになったり……」

「魔法使った方が早くない? はは」


 なんで今までこんなことで悩んでたんだろ。普通に魔法を教えても良かったんだ。

 そうだよな。いつかは必ず魔法もバレるだろうし、そんなこと言ってられない状況になってるし。

 うーん……わざわざ俺たちだけでどうこうする必要もなかったのか。


「ちょっと……これからどうしましょう?」

「ははは。僕もやる事があるからさ。君は寝てたら?」

「手伝いますよ」

「いや、大丈夫。はは」

「あ、なら、頑張ってください」


 大臣は一人で外に出て行く。手伝わなくても良いって言うのはどうしてだろうか? 手伝いたかったのに。

 うーん。それならちょっとみんなに連絡するか。特にハヤトとアヤカはいきなりで良く分かってないだろうし。


 あーあー、ハヤト……アヤカ……


(あれ? アキラくん?)

(お、繋がった)

(え? これハヤトも聞こえてるの?)

(聞こえてるよ? 三人で話せるんだ……)

(あの、いきなりだけどさ、ごめん……ここから出ることになっちゃった……)

(うん……なんとなく知ってる。僕も驚いたよ)

(私も驚いたんだから。もう居ないの?)

(いや、まだ近くにいる。死体置き場のとこ)

(……ちょっと会いに行っても良い? せめて挨拶ぐらいさせてよ)

(良いと思う……いや、良いよ。きて)


 二人を呼んで三人での話し合い。

 この二人なら信頼できるし、説明する責任みたいなのもある。本当はアイラとか、エラさんとか、村のみんなとか出来るだけ多くの人と話し合いたいんだけど、それは無理だから。


 待っていると、建物の扉がコンコンッとノックされる。どうやら二人とも着いたみたいだ。


「あ、いらっしゃい」

「アキラくん……」

「まぁ、入ってよ。いや、外で話せる?」

「良いよ。ハヤトは?」

「僕も大丈夫」


まだ親方もカエデさんも寝ているからな。

 外に出て、適当な場所に椅子を作る。地べたに座るわけにもいかないだろうし。


「ホント?」

「うん」

「そうするしかないの?」

「まぁ、今はね」

「それは、アキラくんも望んでるんだよね?」

「……どうだろ」

「え?……」


 望んでいるのかはハッキリ言って分からない。

 ただ、大臣を殺すくらいなら、間違いなくここを出て行った方が良いっていうのは確かだ。てか、心配させないように、「はい」って言っておけば良かったわ。


「それならここに居たら良いじゃん。無理なの?」

「いや、望んでるかも……はは」

「……僕は、僕はハッキリいうと、ここに居て欲しい。それが無理なら一緒に行きたい」

「私も」

「大変だよ?」

「良いよ。だって……もう会えないかもしれないんでしょ?……」


 ハヤトの目がいきなりウルウルし出した。いやぁ、泣かせるつもりとかは全くなかったのに……


 うーん。どうしよ、泣いちゃった。本格的にどうしたら良いのか分からなくなってきたな。元々良く分かってないけど。

さっきはあんなに晴れやかな気持ちだったのになぁ……


「会えるよ」

「でも、またドラゴンと戦うんでしょ? どうせ」

「戦うけど、また会えるよ。死なないようにするから」

「アンタさ、もっとちゃんと考えないと。みんな心配するよ」

「俺は、多分、大丈夫だと思う。いや、大丈夫」

「「……」」


 実際は分からん。でも、大丈夫な気がしてるのは本当。なんでだろ? そんなわけないのに。


「心配しなくて良いよ。って言ってもするか……」

「アキラくんは……アキラくんは、それで良いかもだけどさ……」

「私たちは心配だよ。だって意味分かんないし」

「ははは……」


 俺も良く分かんないって言おうとしたけど、これ以上失言を重ねるわけにはいかない。どうしたら、心配しないでくれるか……いや、心配してくれるってありがたいな。


「心配してくれてありがとう。でも、俺は行くことになったからさ」

「またお別れ? もう嫌だよ」

「また?」

「アキラが死んだ時、私たちホントに辛かったし、悲しかったんだけど。ねぇ、分かってる?」


 ハヤトだけじゃなくて、アヤカも泣き出してしまった。いや、なんか俺も泣きたくなってきちゃったよ。でも、流石にそれはしちゃいけない気がする。


 覚悟なんて決まってるわけないけど、決まってるフリしないと。だって、俺が悪いんだし。


「大丈夫」

「……」

「大丈夫だから……」

「アキラは」

「……え?」

「お前が決めたんなら、それで良かったよ! でも、そうじゃないんでしょ!?」

「……」

「なんでそんな大事なことも自分で決められないの!? アンタの人生でしょ!?」

「いや……」

「そんなにあの人のこと信頼してんの? それならちゃんと最初からしっかりしろ!」

「……はい」


 感情を剥き出しにしたアヤカにそう言われて、涙が出てきた……はぁ……その通りです。ホントに。


「……こめん! でも、着いていきたいのはホント! それだけは信じて。ぶっちゃけ死ぬかもしれないけど、俺も他国行きたい」

「……アキラくん」

「それはなんでよ」

「うーん。面白いから?」


 予想外なことを口にして焦る。いや、こんな理由で出て行くのダメだろ。


「正気?」

「じゃないかも……いや、正気です」

「うん。分かった」


 ハヤトは涙が引っ込んだ顔で、俺の目を見た。


「帰ってくる。それは約束してね」

「約束する。帰ってくるよ」

「はぁ……私たちも頑張って、大きな街にする。その時は案内してあげるから」

「ありがとう」


 なんとか話がまとまったみたいだ。もしかしたら呆れられてるのかもしれないけど、二人に直接話せたから、まぁ、あんまり後悔みたいなのはないかもな。


「戻るね。あの、出発する時は僕らにも教えてよ?」

「うん」

「アキラなら大丈夫だよ。色々言ったけど」

「ありがとう。じゃあ、また」

「うん、またね」


 二人と別れた。

 いやぁ……なんか今になってもっと涙が出てきちゃうな。ホントにお別れかもしれない。

 うーん……でも、決めたんだし、やるしかないな。


 もしかしたら覚悟が出来てきたのかもしれない。もっと曖昧な人間だと思ってた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ