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173 うるさい翼の音

 

 三人で顔を見合わせる。これはもう出発か?


「行こうか。もう大丈夫?」

「まぁ、やるしかないんで」

「良い感じだね! ははは! 行こう!」


 こんな時にも陽気な大臣の後ろで空を目指す。俺の後ろにはフーマさんが慣れない様子でドラゴンに乗っていた。その後ろにはドラゴンの群れ。


「着いてきてますね」

「そうだね。やって良かったかな? はは」


 後ろからも前からもバタバタと翼の音がする。なんだったら俺が乗ってるドラゴンからも鳴ってる。ふぅ……落ち着け? なんか動揺しかけてるぞ?

 俺は大臣の後を着いていくだけ……とか思ってるとなぜか街の方へと向かっていく。あれ? なんで?


「こっちですか!!?」

「うん!! 僕たちだけじゃ無理だから!!」

「でも、被害とか!!?」

(こっちで話そう?)

(あ、はい)


 静かな夜中にも関わらず、翼の重なった地鳴りのような音が邪魔で、ずっと声を張り上げて喋っていたが頭の中での会話に変わった。


(どっちにしても被害は出るんだし、それに僕たちが死んだらここは終わりでしょ?)

(え? でも死なないって……)

(スティーにも限界があるんだってさ? はは)

(じゃあ、死ぬかもってことですか?)

(君は死なないよ。僕が死ぬかもしれないの。ははは!)

『よっぽどのことがない限りは大丈夫だ。安心しろ』

(あ、久しぶり)

『そんな場合じゃねーだろ。ったく』


 久しぶりに話したスティーは、前よりは明るい気がする。いや、久しぶりすぎて、こんなもんだったかなぁって思ってるだけだな。


 今、俺たちの後ろには従えてるドラゴンが着いてきている。そして、その後ろには恐ろしいほど大量の群れがある。


 そのまま進んでいくと街が見えてきた。

 そこにはさっきよりも明かりが点いている。

 みんなも頑張ってくれてるみたいだ。もしくは、この音で目覚めたのかどっちか。


(どこまで行くんですか?)

(もう少しだけね)


 大臣がなにを考えているかはあんまり分からなかった。それでも着いていく、それしかないし。


 その内、地上の人たちが俺たちに手を振るようになってくる。ここからでも腕をブンブン振っているところが見えた。


(良し! もう戦おうか?)

(ここで?)

(ここなら弓矢も届くんじゃない?)

(あ、弓矢も使うんですね)

(もちろん。ははは)


 というわけで大臣がUターンをして、ドラゴンに向き直る。目の前に迫ってくる大きな雲。みたいな群れ。

 それに近づくと感じるのは全身の振動。耳が割れそうなほどの轟音(ごうおん)は、「あっちの耳の方が辛いだろ」と思うぐらい大きかった。


(耳が……)

(スティー? よろしく)


 大臣がそれをお願いすると、すぐに耳の痛みが消えた。ただ、それなのに音は聞こえてくる。なんか、気持ち悪い感覚だなぁ……


 てか、考えてみれば上空でどうやって戦うんだよ。もしかして、大臣も勢いで言ったとか?


(あの、どうやって戦えば?)

(さぁ? 適当に剣を振ってれば大丈夫じゃない?)

(そんな……)

(じゃあ、広がって)

(え?)

(君じゃないよ、ドラゴン。はは)


 大臣が従えたドラゴンはさっきの指示が聞こえたからか着いて来るのをやめ、群れから少し離れつつ大きく広がる。


(エラ。みんなに指示して)

(はーい。分かりました)


 エラさんの声だ。

 一人だけとしか話せないと思ってたけど、何人とでも話せるのかな? 試したことないから分かんないわ。


(僕たちは上に飛ぶよ! 早く!)

(分かりました!)


 上に急上昇してしばらくすると、下の方から弓矢がめちゃくちゃ飛んできた。親方たちがみんなにこの事を教えてくれたのかな? もう、よく分かんないけども。

そしてそれは多くのドラゴン。適当に数えても百は超えてそうなほどのドラゴンを落下させた。


「凄いなぁ……」


 ただ、これをきっかけにドラゴンの矛先が俺たちじゃなくて、街の住人に向かっているような気がする。

 大丈夫なの?


(俺たちも戦いましょう! みんな危ないです!)

(まだ大丈夫。守って)

(守る?)

(はははは! 君じゃないよ! あっはは!)


 弓矢の攻撃を受けて、街のみんなを殺すために急降下していくドラゴン。

 そして、それからみんなを守るために、俺たちのドラゴンが戦っていた。大臣のドラゴンが。


(守ってくれてるんだ……)

(今から向かいます! 待っててください!)

(あ! カエデさん?)

(後はエラに任せる。私たちも戦おう!)


 下からまだまだ弓矢はきているが、明らかに数は減っている。それに二人が来るということは、エラさん達がもう避難を開始しているのかもしれない。


「大変なことに……」

(我にも初めて見るような光景だ)

「そうなんだ……」

(次はお前も頑張る番だ。しっかりな)

「うん。頑張る」


 大臣の指示がないので、次第に減っていく下からの矢と、そこに行こうとするが阻まれているドラゴンを見ていた。もはや戦いたい。でも、勝手に動くよりは絶対に指示を待った方が良い。


(遅れました! 大丈夫でしたか?)

(え? はや)

(大丈夫だよ。まだ戦ってないからね)

(そうか。なら早く戦おう)

(そうだね。主戦力も来たし、もう行こう!)


 二人と合流してからすぐに、大臣はドラゴンの群れへと突っ込んでいった。それにカエデさん、親方、フーマさんと続いていく。俺が一番最後だ……行かなきゃ……


(我の力を求める時を楽しみに待ってるぞ)

「その時はよろしく。はぁ……むりだぁ!! でもやるぞぉ!!!」


 翼の音で聞こえないだろうから、大きな声で自分を奮い立たせる。

 そして、空中に浮かぶ、もはやなにがなんだか分からないくらいに多いドラゴンの群れに俺も突っ込んでいった。


 はぁ……本当に生きれるのかな?




読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークから、評価などもよろしくお願いします!


ありがとうございました!

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