171 水道も……
一通り話が終わったからか、大臣とエラさんが黙ってしまった。
気まずい……どうしよう……俺から会話を切り出そうにも別に話題なんて何にもないしなぁ。
そんなことを悩んでいると、親方が立ち上がった。
「親方?」
「私は寝る。これから忙しくなるんだろ?」
おそらく外はまだ昼だ。これから明日まで寝るのだろうか?
「それ良いね。僕も寝ようかな?」
「大臣も?」
「もういつ来てもおかしくないからね。休める内に休んだら?」
「寝てたら分からなくないですか?」
「頼んであるからさ。大丈夫」
「誰に?」
「フーマさん。それじゃあね? ははは!」
「あ、また……」
大臣は立ち上がり、この場を去った。
そういえばさっきの作戦にフーマさんは出てこなかった。避難指示をするのか? でも、あの人、一応、犯罪者ってことになってるはず……
また何か隠し事でもしてるのかな? またって言うほどでもないか。普通にいう必要がないのかもな。
「……とりあえず、帰る? 親方の邪魔になるかもだし」
「そうですね……」
「あ、すみません。先に謝っておいても大丈夫ですかー?」
「ん? なにを?」
「家をめちゃくちゃ汚くしちゃいました。とりあえず報告と謝罪だけは済ましておきます」
「え? や、それぐらいなら大丈夫だよ。てか、問題なかった?」
「はい。私にはなかったです」
「……とりあえず、行こう。エラさんも一緒に」
汚くなったとはいえ、数日の間だし、たかが知れてるだろ。そもそも、買い物が出来ないなら汚くなりようがないしな。
そう思いながら、家の中に入ると、中は何故か泥だらけだった。あれ? そういう汚れ方?
「……どうして?」
「ここの川って汚いんですね。気付かずに使っちゃいました」
「あれ? 水道は?」
「止められてたので、使えなかったですね。まさか、こんなに泥だらけになるなんて思わなかったですね。いやぁ、川の水って見た目は綺麗なんですけどねー」
「まぁ、それならしょうがない。うん」
驚いた。なによりもエラさんがそういうミスをすることに驚いてる。
ホントにそんな理由なのか? 疑うわけじゃないけど、ちょっとおかしい……聞いてみよっかな。
「……それだけ? ホントに?」
「後は魔法の練習ですね。窓とかずっと開けっ放しだったので、それもあるかも知れません」
「開けっ放しだったんだ。まぁ、そうか」
ここは川が近くにあるせいで、長いこと家に居ないとすぐ汚れる。この前他国から帰ってきた時も、めちゃくちゃ汚れてたような覚えがあるし、ずっと開けっ放しならそうなるのも分かるな。
「なるほど。ちょっと汚くなったから、綺麗にしようとしたら、こうなった感じ?」
「そうですね。完全にそうです」
「でも、これぐらいなら魔法で綺麗に出来るし、全然気にしないで良いよ」
「あ、あと、快適でしたありがとうございます」
「どうも。てか、なんで開けっ放しだったの?」
「川が綺麗だったので、ずっと見てましたねー。はい」
確かに綺麗な川ではある。だから、水も綺麗なんだろうなぁって錯覚するのも分かる。
はぁ……なんか、もうすぐドラゴンが来るなんて思えないなぁ。いきなり過ぎる。
「私が綺麗にします! 良いですか?」
「ありがとう。それじゃ、俺は……」
「はい?」
俺はなにしよ。
みんなに会いに行きたい気持ちもあるけど、いまやるべき事ではない気がするな。
それなら大臣や親方みたいに眠る? マジで全然眠たくないけど……魔法でも使って寝るか? うーん……微妙。
「俺も手伝おっか?」
「あ、もう終わっちゃいました……」
「はや! 流石……」
寝るか! それ以外にやる事ないわ!
と思ってはみても、どうしても気持ちがフワフワしてしまっている。なんかやりたい。暇潰せるような事。
少し話そうかな。
「エラさん。大丈夫だった? なんか有った?」
「有りましたね。沢山」
「どんなこと?」
「さっきも言ったんですけど、水道が使えないので、みんなが使う井戸まで水を汲みに行ったりだとか、それにお城の引継ぎ作業が十分じゃなかったせいで、配給を貰うときに少し揉めました。なんとかしましたけどね」
「やっぱりお城も大変なんだね」
「そもそも私も忙しかったですからね。ただ、元々私たちは他国に行ってたので、その時に代わりにやってくれてた人達が頑張ってます。それでもいきなりすぎて驚いてましたけどね」
「そっか。エラさん達はお城行ったんだっけ?」
「一緒に行きました。ね?」
「そうだね。一緒にね?」
「まぁ、驚くよなぁ」
タイミング悪すぎないか? だって、そんな混乱をしているのに、またドラゴンが来るんでしょ?
大臣はこの国が終わる、みたいなこと言ってたけど、マジなのか? じゃあ、誰が代わりにこの国をまとめるの?
大臣? エラさん? その二人とも今はお城の仕事をしてない。それともやっぱり王様が今まで通り続けるのかな?
……そういえば王子様ってまだ子供だよな。ていうことは今まで通り王様がトップにいる事に?
ヤバい……これはずっと考えちゃうやつだ。
「……」
「どうしましたー?」
「いや……なんでもないよ」
これからどうなるんだろ?って言うのは苦しい。なんか口から出ないようになってる。
「結局のところ、私たちに出来ることなんて限られてるので、心配する必要なんてないと思いますよー? もし、私の勘違いなら申し訳ないですがね」
「いや、心配してた。だから勘違いじゃない」
「そうですか。私も寝ます。今日もここに泊めてもらっても良いですか?」
「もちろん。てか、俺も寝ようかな」
「それならおやすみなさい。カエデは?」
「私もそうしようかな? うん。そうします!」
というわけで、まだ夕方にもならない時間ではあったが、みんなで寝る事になった。
(このままドラゴンは来ない方がいい)
横になるとその事ばっかり考えてしまった。
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