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166 大臣が言ってたんです

 

 もう夜も深くなってきている。もはや、(かす)かな話し声すら聞こえなくなってきている。

 そんな中でどうやってエリーと契約したのか、話を聞いてみた。


「ど、どうやって……」

「守りたいって強く思ったんです。『みんなを守りたい』って。そしたら……」

「私が誘ったんだよね? こういうのどう?って」

「え? 二人で相談してたってこと? そうじゃない?」

「違います。私が悩んでいるところにエリーが話しかけてくれて」

「……そういうもんなの?」


 契約ってどんな感じでなるの? ルドリーが言うには思えば出来るらしいけど、本当にそうなのかな?

 そういえば親方がグェールと契約した時の具体的な話、聞いたことないな。あの時は色々大変だったから仕方ないかもだけど。


「まぁ、とにかく。それならなんとかなるのかも……フーマさん、もう帰っちゃったかな?」

「なんとかしたいです!」

「ちょっと、繋がらないだろうけど、連絡してみるね」


 聞こえてはいるはずだから、報告だけしておこう。もし、アレだったらフーマさんにテレパシーすれば良いし……


 あーあー、大臣……


(大臣? 実はカエデさんがエリーと契約? したみたいです)

(え? ホント?)

(あ! 返事が……ホントです)

(はは。報告ありがとう。僕はまた作業に戻るから。ごめんね?)

(あ、アレ、ホントなんですか?)

(じゃあね?)

(あの! なんでなんですか?)


 それから返事がない。一体何してるんだ……やっぱり聞いてくれてはいるみたいだ。

まぁ、でも、これからはあんまり邪魔しないようにしよ。質問しても答えてくれないだろうし。


「あ、一応、大臣には伝えたよ。うん」

「ありがとうございます!」

「あぁ……カエデ……なにかあったのかぁ……」

「あ、ご、ごめんなさい……」


 さっきから騒ぎすぎたせいで村の人が起きちゃったようだ。これは街では中々無いな。そもそもあの通り、あんまり人住んでない。


「実は、聞いてほしいんですけど……無理なお願いかもしれないんですけど……」

「ん? いきなりどうした? カエデ」

「セントラルにみんなで行ってほしいんです。全員で行ってほしいんです」

「どうしたんだ?」

「信じてください。ここが危ないんです! ドラゴンが襲ってくるんです!」


 カエデさんは真剣にそう言ってる。いやぁ、多分信じてくれなさそうだなぁ。


「はぁ……でもなぁ。ここから離れたこともない人も多い。離れたくない人も多い。カエデの願いでもそれは無理だな」

「でも……それなら、無理やりにでも……」

「無理やり? カエデ? どうしたんだ? 街で何かあったのか?」

「出来る? エリー?」

「出来るよ? やる?」

「こ、声が……ホントにどうしちゃったんだ、カエデ……お前のせいか!!」

「あ、俺ですか?」

「そうだ……お前がカエデをおかしくしたんだろ! コノヤロー! ふざけるな!」


 あまりに大きな声で怒鳴(どな)るもんで、みんな起きてきてしまった。野次馬がいつのまにか出来上がる。はぁ……どうしよ……

 野次馬からはなんとなーーく、俺に対する不信感的なものも感じる。まぁ、被害妄想であることを祈ろう。


「あ、ご、ごめんなさい……私が……」

「いや、大丈夫だよ」


 全然大丈夫じゃないけど、そう言っておこう。もはやこれぐらいのことじゃ動揺しないわ。色々ありすぎた。

 でも、実際どうしようかなぁ……ルドリーにでも聞いてみようか。


「……どうしよ……」

(……さぁな。本当に街に連れて行くというなら、一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないぞ)

「カエデさん。絶対に連れて行きたい?」

「はい!」

(それなら、一つ案があるぞ)

「なに?」

(正直に話すんだ。大臣からドラゴンが襲ってくると聞いた。それで良いだろ)

「それって言っていいのかな?」

「さっきから何を話してるんだ! 人の話を聞け!」

(それ以外に説得する方法はあるか? ないだろう)


 ドラゴンのことを言わないで、とは言われてないけど、なんとなく秘密な感じもしたしなぁ。いや、それぐらいなら言っても良いのかな?

 今はもう大臣じゃないけど、大臣って言っとこう。そっちの方が納得してくれそうだ。


「あの……すみません……これは俺が言ったってことは絶対内緒にしてほしいんですけど……ちょっと良いですか?」

「なんだ!」

「大臣がそう言ってたんです。大臣が」

「大臣様が!? カエデ、ホントなのか?」

「ホントです! さっき、大臣さんからの連絡が来て……」

「連絡?」

「さっきまでここに人が来てたんです! 見てた人、居ませんか? 誰か……」


 カエデさんが村のみんなに問いかける。ザワザワとするだけで、誰からも声が上がらない。

 魔法使ってバレないように入ってきたのかな? そうなるともうお手上げか?


「……カエデ。ホントなのか?」

「はい!」

「嘘じゃないよな?」

「はい。絶対嘘じゃないです」

「……少しみんなで考えさせてくれないか……いや、カエデも一緒に、みんなで話そう」

「はい……分かりました」


 その場には俺だけが残された。しかし、これでもし、もし仮に大臣の勘違いだったら、どうして良いのか分からない。

 でも、ドラゴンの話が本当だとしたら、セントラルからそう遠くないこの村は間違いなく壊滅(かいめつ)するだろうから。

 結局、大臣の勘違いで、結果的に俺たちが嫌われることになったとしても、どうにかして少しでも安全な場所にみんなを避難させることが出来たら、それはそれでいいのかな。


「良く分かんないけど……なんとかなりそうかな?」

(なれば良いな)

「無責任な……」

(なるさ。なんとでもなる)


 とりあえず、家の中に入ろう。ちょっと風が寒くなってきた。

 カエデさんの帰りを待とうと、布団に入らずにいたが、あまりにも帰りが遅くて眠ってしまった。



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