164 来客
村の近くまで来たので、バレないような場所に降りる。そういえば前もドラゴンでここに来たことがあった。他国探しに出発する前、村に寄ったんだよな。
「じゃあ行こうか。でも、いきなりで大丈夫かな?」
「大丈夫だと思いますよ? きっと向かい入れてくれると思います!」
「そう? なら安心していこう」
荷物を抱えて、ドラゴンをじっと待たせて、村の方へと歩く。仕事のこととか聞かれたら嫌だけど、上手いこと誤魔化せるのかな?
まぁ、なんにせよ向こうに居るよりは良いだろう。あっちでやることなんてないし。
懐かしの村の入り口。故郷みたいな気持ちでいるけど、普通にセントラルで暮らした時間の方が長い。それでも何故か、ここを自分の中で実家的に扱ってしまう。
「え?……カエデちゃん!? それに…………アキラくんだな!」
長い沈黙の後、俺の名前。忘れてたな?
「どうも。こんにちは」
「いきなりごめんなさい……実はここにちょっとの間だけ、居ようかなって思って……」
「そうかぁ! 嬉しいな! どんぐらい居るんだ?」
「まだ分からないんですけど、でも、すぐには帰らないです!」
「いくらでもここに居ていいんだぞ? いきなりでびっくりしちゃったなぁ」
二人が大きな声で話しているから、村のみんなが段々気付き始めた。
人が入り口に集まり始めている。
俺はなんとなく気まずい。あぁ、全然実家じゃなかったわ。向こうの方が落ち着く……
まぁ、こうやって人に囲まれるのも、たまには良いよなぁ。いや、あっちでも似たようなもんか。
「カエデ! 元気だった!?」
「旅はどうだったのよ! 楽しかった?」
「しかし、なんでまた帰ってくることになったんだ?」
質問攻めでもう良く分からんことになってる。地味にドラゴンに乗って疲れてるから、休みたいんだけど、そうはさせてくれないっぽいな。
そんな感じで、ボロボロになりながらも村の人たちに一通り挨拶を終えると、いつのまにか空はオレンジ色になっていた。
挨拶に疲れたカエデさんと俺は、自分の家に帰り、少し一休みをしていた……はぁ……ちょっと疲れた。
「ふぅ……」
「ちょっと疲れましたね……こんなに歓迎されるなんて……嬉しいですけど、びっくりしちゃいます」
「確かに。でも、思ったより心配なさそうだね。なんとかなりそう」
「そうですね。みんな優しいので」
考えすぎも良くないな。良くない癖かもしれない。
それから村の人たちに食材を分けてもらって、ご飯の用意をする。このままだと申し訳ないから、今度狩りにでもいこうかな。
そこで気付いたが、剣でドラゴンを倒すと傷口でバレてしまうかもしれない。となると、やっぱり弓か? うーん……また考え事か。
「出来ましたね? 食べましょう?」
「食べよう。いただきます」
食材を分けて貰いすぎて、もはや昨日の夜ご飯よりも豪華になってしまっている。
テーブルいっぱいに食器が並んでいた。なんか見たことある景色。
「うーん。ホントに村に帰ってきたんだね。だって昨日まで向こうだったし、その前は別の国だったし」
「そうですね。色々とめまぐるしいというか。でも、こういうのも楽しいです」
「それなら良かった。もう受け入れるしかないしさ」
「ですね。でも、私はホントに楽しいと思ってますよ?」
「ホントに?」
「ホントです!」
自信満々に楽しいと「ホント!」というカエデさん。まぁ、これだけ言うなら本当なんだろう。
それから食事が終わり、懐かしい台所で洗い物をしていると、コンコンッと扉を叩く音が聞こえてきた。誰だろ? もう夜だけど。
「誰だろ?」
「私が出ます」
「うん。ありがとう」
俺は食器を棚に片付けながら、来客の様子を見ていた。すると意外な人がそこには居た。ていうか、フーマさんだった。
「あれ? どなた……」
「君は、はじめましてだな。しかし、少年。久しいな」
「あ、どうも……なんでここに?」
「大臣に言われてここに来た。言わなければならないことがある」
「え?」
扉はまだ空いたままだ。月明かりが漏れて、部屋の床が微かに明るくなっている。
「どうやらこの国はもう長くないらしい」
「え?」
「ドラゴンが群れでやって来る。信じられないほどの数だ。それによって国の政治は立ち行かなくなる。そう言っていた」
「え? どういうことですか?」
「とてつもないほどの被害が出るだろう。スティーには守れないそうだ」
「スティー……知ってるんですか?」
「言ってくれと頼まれた。それだけだ」
スティーでも守れないってどういうこと?
もしかしたらって心配することは今までもあったけど、結局は守ってくれてたのに……
「ミリの力でも無理だそうだ。必ず多くの人間が死ぬ」
「親方の?」
「ミリといえば伝わると聞いた」
「…………」
マジか? ちょっと良く分かってないんだけど……
それはカエデさんも同じみたいだ。怯えてる様子はあるけど、別に何かを言うわけでもない。
「ちょっと……直接聞いてみます……」
「話しかけられても答えられない。それも言っていた」
「…………ホントなんですか?」
「大臣がこう言っていた、というのはホントだ」
「ホントに?」
「ホントだ」
マジか?……ドラゴンの群れが来て、街が? ホントに? なんで?
(大変なことになったな)
「……うん」
ボケーッとしたまま、家の外に出た。
もうすぐで丸くなる月を見ながら、軽く絶望した。
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