163 門番とドラゴン達
荷物の準備は終わったらしい。
これから出発すれば、夜中には向こうに着いているかもしれない。というか、魔法を使えばすぐにでも着く。
うーん、出発だな。
「もう行く?」
「そうですね。このままだとずっとここに居ちゃいそうなので……」
「行くんですね? なんか私のせいでみたいになってしまって……今更ですが、少し申し訳ないですね」
「それは気にしないで良いよ。だってここに居てもね」
荷物を抱えて、家を出ようとする。
「出来るだけ汚さないようにします。いってらっしゃい」
「好きに使っちゃって良いよ。それじゃ、いってきます」
「いってきまーす、エラ、元気で!」
「はーい! お元気で!」
いやぁ。こうして旅立ちの時になると、地味に楽しみになってくるな。別に村に行くだけなんだけどな。
俺は剣の箱と革の袋を持って、街を出るために街を歩いた。
門のところまでいくと、門番に話しかけられた。相当高いテンションだったのでちょっと驚く。
「あ! 久しぶりだな! ていうか、あれからずっとここにドラゴン居るんだけど、これどうなってんだ?」
「え? ずっと?」
「……これはここだけの話だぞ? たまぁに食べ物とかやってるんだ……可愛くなってきちまってさぁ!」
「襲ったりとか、ないですか?」
「ないなぁ。むしろ俺のこと覚えてくれてるみたいなんだよ。見たらわーわー、鳴いてくれてさ?」
あの時のドラゴン達は殺されずに済んでるみたいだな。しかも、門番はドラゴンに愛着を持ってきてる。やっぱり大臣の言う通りなのか?
「ていうか、どこに行くんだ? そんな大荷物持ってさ」
「うーん……ちょっと村に帰ろうかなって」
「あれ、あ! そうか! お前たちって元々村から来てたんだよな?」
「そうなんです。それで」
「そうか……なら馬車呼ぼうか? 歩きじゃ流石にキツイだろ?」
馬車呼べるのか? そういうのは許されている?
というか、普通にドラゴンに乗って帰っちゃえば良くないか? どうせ国にはバレてるんだし、門番はドラゴン好きみたいだし。
「いや、大丈夫です。ちょっと、カエデさん、ドラゴンに乗っていく?」
「え? 大丈夫なんですか?」
「もうバレてるし、問題ないんじゃないかな?」
「そうなんですかね?」
「ちょっと必要なやつ取ってくる。待ってて?」
縄と留め具は流石に持ってきていなかったので、一回家に取りに行く。駆け足で向かった。
「あれ? 忘れ物ですかね?」
「まぁ、みたいなもんだね」
「お疲れ様ですね」
そう言って二人分の縄をカバンに入れ始める。
それをエラさんは不思議そうに見ていた。
「ドラゴンに乗るんですかー?」
「うん。まだ待っててくれてたから」
「まだ待っててるんですね。そうなるとやっぱりドラゴンって知能高いですよね?」
「まぁ、喋れるドラゴンもいるしね。相当高いと思う……てか、カエデさん待たせてるからもう行くね? ごめん」
「もうちょっと話しましょうよ。カエデならいくらでも待ってくれますよ」
「え? いや、ごめん。もう行くよ」
「はは。それなら、いってらっしゃいませ」
「いってきます! エラも気を付けてね」
「はい」
カバンを背負いながらだと、中々上手く走れなかったが、出来るだけ急いだ。
ちょっとしてから家の方を振り返ると、エラさんが二階からこっちを見ているような気がした。
はぁはぁ……と取りに行った時よりも急いで戻る。これなら荷物持ってない時に全力で走った方が絶対疲れなかっただろ。
「あ、待った?」
「いえ……汗だくで……そんなに急がなくても大丈夫でしたよ?」
「まぁ、急いだ方が良いかなって」
「ドラゴンに乗るんだろ? 俺にもちょっと見せてくれよ!」
「良いですよ」
少し休憩してから、ドラゴンと俺に縄を巻き、留め具でグッと固定する。それを見ている門番は「ふむふむっ」みたいな感じで頷いていた。
出発の準備のために、カエデさんは地上で荷物をドラゴンに載せてくれていた。
「えー、飛んで?」
俺の指示でドラゴンは空高く飛んでいく。その様子を門番は「うがぁー!」って感じで驚きながら見ていた。
心地良い風を感じながらの飛行は楽しかった。ここはいつでも晴れてるから見晴らしが良いし。
それからは軽く、空中を旋回してみせたり、降下してみたりと色々やった。これぐらいでもう良いかな?
「降りて」
地上に緩やかに着地していく。しかし、なんかいつのまにか怖い気持ちがなくなってきてるような気がする。
「すげぇなぁ! へぇ……空飛んでたな……」
「門番さんも乗ります? 多分、出来ると思いますけど」
「えーー! いや、でもあの距離から落ちたら……」
「落ちたら拾います。だから大丈夫ですよ」
支度を終えたカエデさんもこちらに来た。二人いればなんとかなるだろう。誤魔化しながら魔法使おう。
「……うーん。やっぱり難しいな、ドラゴンに乗るなんて心の準備が出来てないな!」
「まぁ、また今度?」
「その時は頼むよ! そろそろ出発だろ? 無事を祈るよ!」
「ありがとうございます! 行きますか?」
「行こう」
というわけで、さっき降りたばっかりのドラゴンに乗って、また空の旅に出る。
やっぱりドラゴンに乗るって普通は怖いよな。てか、俺たち、どこで降りれば良いんだろ?
疑問はまだまだあったが、細かいことは気にしないことにした。気にしてたら頭がおかしくなる……
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