158 夜はみんなでお話し
村かぁ、良いなぁ。
元々帰りたいねって話はしてたし、どうせここに居ても出来ることなんてないし、それなら村でみんなの手伝いでもした方がよっぽど良いな。
「村かぁ」
「お二人はそれで良いかもしれませんけど、私はどうすれば?」
「私たちの家で住んでみるとかどう? アキラさんも良いですか?」
「それは良いよ。てか、それが一番良さそうじゃない?」
なんとなく色々と決まりそうになっている。意外となんとかなりそうなのが、怖い……まさかそこまで大臣もお見通しだったりしないよね。
「まぁ、なんか、なんとかなりそうだね」
独り言みたいに呟いた言葉に、二人とも共感してくれてるみたいで、頷いていた。
不思議な安堵感から、口数は自然と減り、いつの間にか食事の時間が終わっていた。
「……美味しかった?」
「そうですねー。こういう豪華なご飯を食べれるのも、これで最後かもしれませんし、気が済むまで味わいました」
「もし、ダメだったらみんなでもう一回他国にでも行けば良いだけだよ。うん」
「それはどうですかね。そもそも、私たちは国同士の交流を最終目的に旅を始めていた訳ですから、そんな簡単な話でもないと思いますよ」
「でも、俺たちには魔法があるから。なんとでもなるよ。多分」
結局そこなんだよな。下手したら俺たちだけで文明を築くみたいなこともありえんのかな。それは流石にやりすぎ感……飛躍しすぎてないか? まだそんな段階じゃないはず。
「片付けはやっとくから、寝る場所適当にみつけちゃって? 布団とかあったっけ?」
「いや、大丈夫です。布団ぐらいなら作れますし」
そう言って、少し空いた場所に作り出したのは立派なベッドだった。まぁ、これからここで生活するならそれぐらいあった方が良いのか。
それにしてもちょっと気が早いような気がしないでもない。
そもそもエラさんってどういう人なんだ? 理屈っぽいけど、別に人を避けてるわけでもないらしい。
最初の方は人目を気にしてる感じがあったけど、他国に行ってからは全然そんな感じもしないし、なんなら顔の布外してるし。
「まぁ、とりあえずもう寝る? やることも大体終わったし」
「私、普段もっと遅い時間に寝てるんです。なのでまだ寝ません」
「どんぐらいに寝てるの?」
「明るくなる前には眠るようにしてますね。流石に体調が悪くなるのでそうしてます」
そうなの? 割と朝早い時間でも起きてたりしてないっけ? 大体起きて待ってたような記憶があるんだけど、どうなってるんだ?
「え? いつもどれぐらいの時間、寝てるの?」
「普通の人よりは短いですよ。昔から短いんです」
「眠くない?」
「眠いですよ。ただ、別に眠くても良くないですか?」
「へぇ……」
眠くても良い? そういうもんなのか?
そもそも国の中で内政的なことを任せられてるって実は超エリートだし、ちょっと普通の人とは違うところがあるのかもしれない。大臣にも似たようなところあるしな。
「カエデさんはもう眠い?」
「眠たいんですけど……なんとなく眠れなさそうです」
「そう。それならもうちょっと話そう」
俺も今日は眠れそうにない。夜が、考えないといけないことや、不安なことを無理やり見せてくる気がする。うん。
「あのー。お二人はいつ頃からお付き合いされてるんですかー? そもそも出会いは? 聞いてませんでしたよね?」
「えっと……その……」
「あ……」
カエデさんは動揺して、ビクッと体が軽く震えた。ちなみに俺もそうなった。
まさかそれを聞かれるとはなぁ……てか、それぐらいしかもう話すことないか。
(私も聞きたいなぁ。教えてよ)
エリーまで……顔なんて見えないから分からないけど、多分、めちゃくちゃニヤニヤしてんだろうなぁ。
はぁ……沈黙が辛くなってきた。カエデさんは顔が真っ赤になってるし、ここは俺が説明するしかないのでは?
「……そうだなぁ、えー……何から話そう……」
「では、出会いから、よろしくお願いします」
最近も思い返した気がするけど、出会いは俺がこの世界に来た直後だ。寝てたところを起こしてくれた。はぁ……懐かしい。
「俺が、この世界に来てすぐ……草原で寝てたところをカエデさんが起こしてくれたんだよね?」
「はい、あの時はアキラさんも少し混乱してましたよね?」
「うん。来たばっかりで、何にも分かんなかったけど、でも、カエデさんに会えて」
「ふふふ……懐かしいですね……」
「ノロけてますね」
はぁ……そっちから聞いといてなんなんだぁ……もう疲労感が溜まってきてるんだけど、眠気は飛んでるけども。
「告白はどちらからですか?」
「……俺から……」
「へぇ。なんて言ったんですか?」
「なんて……」
覚えてる。覚えてるけど……あれ? なんて言ったんだっけ? あれ?……相当大胆な事、言ってなかったっけ? あれ?……今思えばあの時の俺どうかしてないか?
「……」
「まさか、忘れたんですか?」
「いや……忘れてはないけど……」
「……一緒に暮らそうって言ってくれたんですよね? 私と一緒に暮らそうって……アキラさんがそう言ってくれて」
「……はは……うん」
(めちゃくちゃ大胆じゃん。ホントに?)
「……うん……はは……」
恋人にもなってなかったのに? おいおい……ちょっと……ホントに俺なのか?
今日はもしかしたら眠れないかもしれない。情緒がめちゃくちゃになりそうだね。はぁ……
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