156 やさしいハヤト
「俺たちが必要になった後はどうなるんですか?」
それが一番大事だし、この感じだとそこが一番大変そうだ。話を聞いてちょっとだけ覚悟しておこう。どうせやることになるんだし。
「うーん。王様にでもなる? もし君がなりたいならそうしてみようかな? はは!」
「え? 王様?」
「うん。なれると思うよ。君だったらね」
「大臣は良いんですか?」
「はは。僕はそういうの興味ないからさ」
マジでクーデター起こすつもりなのかな。国家転覆か? えーー、ちょっと流石に王様にはなりたくないかも。そこまでの地位はいらない……
てか、大臣なら出来そうなのが怖いわ。やる気出せばすぐ王様になれるってことなのかな。
「……まぁ、とりあえず今は待ってれば良いんですか? そうしたらなんか起こるっていう」
「そう。待ってれば良いよ。だから勝手に他国探しに行ったりとかはしないでね? はは」
「言われなくてもしないですよ。多分」
「君も意外と無茶するからさ。ははは!」
無茶させてるのでは?
「話は終わったか、なら私は作業に移る。出て行ってくれ」
「あ、手伝いますよ。暇なんで」
「いや、おそらく私一人でやった方が早い。気持ちだけ貰っておくよ」
「あぁ……分かりました……」
なるほど。こうなるとホントに暇になってしまうな。いやぁ、忙しいのも疲れるのも嫌だけど暇なのも嫌だわ。
暇を抱えながら親方の家を出る。さて、なにをしようか。
うーん、それならハヤトのとこ行こうか。元気かな? てか、他に会ってない人って居ないよね?
そんな感じでハヤトが働くご飯屋に辿り着く。ここのご飯も、もしかしたら食べれないのかな。そうなったらちょっと悲しいなぁ。
「ハヤト? 久しぶり」
「あ! アキラくん! 大丈夫だった!? 座って? 食べてってよ?」
「いや……それはいい。仕事無くなっちゃったから」
「え? どういうこと?」
「仕事してないとこういうの食べれないんでしょ? 聞いたけど」
「おい! 無駄話は後にしてくれ!」
「あ、ごめん……ちょっと……」
「……またね」
「後で! もうすぐで休みになるからまた後でね!? 待ってて!」
なんだか必死な様子で俺に声をかけてくれるハヤト……あぁ、優しい……その優しさが沁みる……
やっぱり持つべきものは友達だよ。大臣とか親方とかも頼りになる時はなるけど、やっぱり友達だな。
そうだ! 前からみんなで遊ぼうみたいな話してたじゃん! それを今、暇な内にやったりしようかな。
ハヤトのお陰で少しだけこれからが楽しみになってきた。言うてここには娯楽が少ないからなぁ……温泉でもあれば気分転換になるのに……
しかし、どこで待ってれば良いんだ? このまま店の前で立ってるのも迷惑だろうし……うーん……
そんな感じで待っていると、案外すぐにハヤトは店の外に出てきてくれた。思ったより早いな。
「アキラくん、何かあったの?」
「うん……ちょっとね」
「マスターに時間もらったから。だから、ちょっと話そうよ」
「……ありがとね」
昔っからハヤトは優しかった。で、優し過ぎていろんな面倒事とか、やりたくないようなことを沢山やってた。クラスのどうでもいいような委員に就いたりして。
それでもちゃんと勉強とかしてて……てか、勉強って懐かしいな……
近くにハヤトがよく行く本屋さんがあるそうなので、そこに行く。どうやら紅茶みたいなやつも飲めるみたいだ。
「大丈夫なの? 店は?」
「マスターに頼んだら休憩くれた。ちょっと申し訳ないけどね……」
「なら時間はあんまり……」
「あ、それは気にしなくて大丈夫だよ? 今いるお客さんで一回打ち止めるって言ってたから。もちろんあんまり長くは抜けられないけどね」
「まぁ、とにかく、無事帰ってこれたよ。他国も見つかったし」
「おかえり。でも、それなのになんで?」
「王様がさ。俺たちがドラゴンに乗って他国に行ったって知った時に、めちゃくちゃ怒ってさ。それで、仕事辞めさせられちゃった」
「でも……」
「俺、一応、お城の仕事で他国探してたからさ。なんか、よく分かんないけど、公務員みたいな感じだったんじゃない? だからかな?」
他国を探すための部隊で隊長だったんだっけ? 後半は、大臣が全部やってたけどね。俺は単なる雑用係……
「だから食べれないかもって言ってたんだね」
「……てかさ、俺、そこらへんのシステムがよく分かんないんだよね? なんで食べれないの?」
「僕も、本で読んだだけだから曖昧なんだけど……ここでは職に就いてない人は、配給でしかご飯が食べられないんだって」
「お店じゃダメなの?」
「うん、贅沢しちゃいけないってことになってる。まぁ、普通はその間も就職の支援とかしてもらえるらしいけど……今回の場合はどうなんだろ」
「自力でやるしかないのかな。自分でやっても良いのかな?」
「良いらしいけど、結局お城の大臣に申請しないとダメらしいよ」
「へぇ、なら難しいのかな……てか、詳しすぎない?」
「一応、僕の職場も飲食だから。あと……」
「あと?」
ハヤトは沈黙した。俺は口に出しづらいことを言い出そうとしているハヤトを待った。もはやいくらでも待つぞ?
「……転職したかったから……今、忙しすぎて……はは」
「そっか。忙しそうだもんね」
「はは……」
なんて世知辛い話なんだ……どうして俺たちはこの歳でこんな……やっぱり元の世界に戻りたいかもしれん……普通に勉強しとく方が楽だった可能性があるな。
うーん、忙しいなら難しいかもしれないけど、最後に遊ぶ約束でも……
「最後にちょっと良い?」
「ん?」
「俺、もう暇になったから、時間が空いたら三人で遊ぼうよ。ずっと言ってるけどさ」
「……ちょっと話してみる」
「あ、もし、無理なら無理で……」
「僕も、頑張ってみるよ。アキラくんも他国見つける為に頑張ってたの知ってるから。僕も頑張らないと」
「……」
ハヤトはもう十分頑張ってると思う。休みに遊ぼうっつってんのに、どうして俺はハヤトに頑張らせようとしてるんだ?
俺もちょっと頑張ろうかな。どうせ暇だし。
「この後ちょっとマスターと話してみて良い? どうせ俺は暇だしさ」
「え? なに話すの?」
「まぁ……色々?」
今ある問題の全部とかいかなくても、そこそこは解決できる策を見つけた。別に大したことじゃないけど。
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