155 証拠はある
地下に潜るとそこにはどこまでも広い作業場と信じられないぐらい大量の剣や鎧があった。これ、一人でやったの?
「これって親方の?」
「そうだな」
「こんなに……」
「グェールと一緒になってから疲れないんだ。全く」
「へー、すごい」
そんなにスゴイんだな。だとしたら契約しとけば絶対死なないんじゃないか? むしろ契約した人間って強すぎないか?
「それで? どうしてクビになったんだ?」
「あの、他国行く時にドラゴン乗ってたじゃないですか? それがバレちゃって」
「なるほどな。そりゃバレるだろ、だってもう噂になってるぞ」
「もう!? まだ一日も経ってないのに?」
「昨日門番に預けただろ? それが噂になってるんだ」
「あー、なるほど」
じゃあどうせバレてたんだな。やっぱり分かっててやってるでしょ大臣。
「お前も大変だな」
「まぁ、はい」
「だが、これからもっと大変だぞ。落ち着くまでは気を抜くなよ」
「へ? そうなんですか?」
「お前よりはアイツのこと詳しいからな。いつもこうだったよ」
昔から変わらないんだね。
そんな感じで、ほとんど世間話みたいな話をしているといつのまにか階段から大臣が降りてきていた。勝手に入ったのか?
「はは。元気?」
「あ、大臣」
「ははは! 思ったより落ち込んでないみたいだね」
「お前も良い加減にしろよ? あんまり人を巻き込むな」
「ダメ? でも君はどう思ってるの?」
「え? 俺ですか?」
「そう」
俺はどう思ってるのか。迷惑だと思ってる、めちゃくちゃ嫌だと思ってる、けど、実際大臣が居なかったらどうなってたんだろうとかは思う。
だって鍛冶屋の仕事を紹介してくれたのも大臣だし、ルドリーと会えたのも大臣のおかげだし、魔法を使えるようになったのも元を辿れば大臣のおかげだし。
そんな感じで俺は大臣に感謝しないといけないことの方が多いような気もする……洗脳されてる?
「俺はもうちょっとだけ危ないこと、とかを辞めてもらえたらそれで……てか、やる前に教えてもらえれば……もちろん危険なことはもうやらない方が……」
「次は前もって知らせるかもね。はは」
「次……これからもやるってことですか?」
「そうかも。でも大丈夫だよ? スティーが居るしさ」
大臣は心の底からスティーを信じているのか? なんか意外ではあるけど、確かにスティーが居たら絶対死なないんだよなぁ。
「まぁ、本題に移ろうよ? これからの話」
「これからどうするんですか?」
「ふぅん……私は作業に戻っても良いか?」
「ダメ。だってこれはミリにも関係あるからね」
「……勝手に……私を……」
「僕が予想するに、これからこの国は混乱すると思うんだよね?」
「混乱? どうしてですか?」
「今まで僕とエラがやってた仕事を代わりにやれる人なんてお城に居ないしね。となると必ず不満が湧き上がるよ」
「あ、でもエラさん、お城に行っちゃいましたよ。許してもらおうってことで」
「そう? でもそれでもだと思うよ? それでも足りない」
大臣って仕事は出来るっぽいからな。ぶっちゃけどんな仕事してんのか知らないけど、大臣って言うぐらいだからそこそこ大事な役職なんだろう。
そう考えると王様もちょっと落ち着いた方が良かったのに。そうすれば俺も仕事を……いや、俺は無理だったかもなぁ。
「他国のこと、そしてドラゴンに乗れるってこと。どっちも分かりやすい証拠があるし、みんなの中で共通の話題になって行く。うん」
「証拠?」
「僕たちはドラゴンを門番に預けた。それが証拠」
「ドラゴンって、まだ門で待ってるんですかね?」
「うん。このまま大人しく待っててくれたらさ、みんなのドラゴンに対する意識も変わるんじゃないかなってね」
「なら、他国の証拠はなんだ? そんな物あるのか?」
「はは。僕たち連れてきてたじゃん。他国の人をさ」
リアシーさんのことか? てか、二人を再会させたかったんじゃなくて、利用したかっただけなんかい。
「それで俺たちはどうするんですか?」
「どうしよっか?」
「え?」
「だって今は待つだけだしね。みんなが僕たちを必要とするのを」
「ホントに必要としてくれますかね?」
「王様以外はしてくれるんじゃない? もしこれがダメならみんなで一緒に他国探しに行こうよ? はは」
待つだけか。嫌だなぁ。なんかしていたいけど、何もできないのか。それならちょっとドラゴンに乗って……あれ? でも、門のドラゴンって殺されちゃうんじゃないの? 王様に。
「預けたドラゴンですけど、もしかして殺されちゃいません?」
「それでも、もう沢山の人が見てるからね。それに門番はお喋りだからさ」
「……それで? 私になんの関係があるんだ?」
「それからの話。僕たちが必要になったあとに関係してくるんだよ」
「なんだ? またグェールと会話させるのか?」
「ハナスゾ!」
「コイツも話したがってるみたいだな」
「はは。それもやってもらうかもしれないけど、そっちよりもこっちだよ」
大臣は部屋の中に大量にある剣や鎧を指差した。
「これがどうした?」
「これをみんなに使ってもらいたいの。この国のみんなに」
「なるほどな」
「関係あるでしょ?」
「……あるな……はぁ……私も協力するよ。どうせ最初から協力させるつもりだっただろうがな」
「流石に良く分かってるね? ははは!」
会話は一応まとまった。でも今は待つだけらしいけど、その後はどうなるんだ? そこもちゃんと聞いとかないと。聞いたところで、ではあるかもだけど。
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