153 悪い人?
今日はどうすれば良いんだろう。そういえばいつから仕事が始まるのか聞いてない。帰ってきてまだ休みもないし、休んでも良いだろうという自己判断で休んで良いのだろうか?
……そういえば別れ際、また明日って言われてたような気がしてきた……今日が休みなのか仕事なのかは知らないが、とりあえずお城にでも行ってみるか。どうせやることなんて、ないこともないけど。
「こんにちは……」
「あ! 来てくれたんだ! 言ってなかったよね? はは」
「まぁ、なんとなくそうかなって」
「うん、今日も仕事。しかも結構大事だよ?」
「へ? なんですか?」
「王様と話すんだよ。僕たちの四人と報告会だってさ? ははは!」
「へぇ」
「その途中でドラゴンに乗ったことも言うから。多分怒鳴られると思うけど、驚かないようにね?」
「……言っちゃうんですか? 大丈夫ですか?」
ここの王様って確かドラゴンのこと大っ嫌いだったよな。神聖とか汚れているとか変なことずっと気にしてるイメージ。どうせこれも適当に作られた宗教でしょ? リアシーさんのやつみたいに。
まぁ、とにかくエラさんとカエデさんを待つ。二人とも各自で用があるらしい。
うーん。怒鳴られたくないなぁ。なんとかしてバックれられないだろうか? 無理か?
「みんな集まったね。それじゃ王様のとこ行こっか?」
大臣を先頭に俺たちは王様の元に向かった。胃がキリキリしてきた。気持ち悪い……やだぁ……
「お久しぶりです。王様」
「スューリだな。今回はご苦労であった。無事に他国を見つけたのだな?」
「はい。はは」
ここでも笑うんだ。でも流石にちょっと控えめだ。
「それでは報告を頼む」
「こちらの書類にまとめてありますので、ご参考に」
「助かる」
なるほどね。そういう感じで報告会は進んでいくのね? なんで昨日じゃないんだろ?って軽く疑問に思ってたけど、まとめる時間が必要だったわけか。
それから当たり障りのない報告が続く。ただ、俺たちは歩いて他国に辿り着いたことになってる。あれ? 言わないの?
そんな感じで思ったよりら和やかな雰囲気で進んでいた会議は、ドラゴンの巣を壊したことの話を始めると、不穏な空気に変わった。
「なるほどな。どれほどの規模だったのだ?」
「山ほどの大きさです」
「どうやってそんな大きな巣を?」
「燃やしました。それで大半は焼けたことかと思います」
「それでも山ほど大きな巣であろう?」
「生き残りのドラゴンの中には我々に目もくれず遠くに消えていくのもありました」
そこまで嘘はついてないのかな? ここに居るのが俺だけだったらもっと大胆に嘘つくんだろうけど、エラさんとカエデさんが居るからな。だから四人で来るように言われてるのかもな。
「この報告には不可解な点が多すぎる。お前にしては珍しいな」
「……はは」
「ん? どうした?」
「……バレましたか。王の機嫌を取る為、虚偽の報告をしてしまいました。僕たちは歩いてではなく、ドラゴンに乗って他国に向かったのです」
「なに!? なにを言ってるんだ?」
マジでなにを言ってるんだ? 機嫌を取る為とか言わんで良いことを……
「ふざけるな! ドラゴンに乗ってとはどういうことだ!」
「そのままですよ? 僕たちはドラゴンに乗って他国に向かった。そうだよね?」
「まぁ……はい」
「ドラゴンに乗る……はぁ……憎むべき相手であるドラゴンの力を借りたのか……」
王様は落ち込んだ様子で椅子に座り込んだ。可哀想に。こんな大臣が部下だと頭を痛めることも多いだろう。
座り込みながら何かを考えている王様。思ったよりも怒らない感じか? 怒鳴られないで済んだ?
「お前らにはもうこの城から出て行ってもらう……分かったな」
「え?」
「出て行け!! 二度と城に入って来るな! 顔も見たくない!!!」
そ、そんなに怒らなくてもぉ……
そんなわけで城から追い出され、無事無職となった俺たち四人。ということは大臣が大臣じゃなくなっちゃったってことでもあるのか。
「これからどうするんですか?」
「さぁね」
「えー、大臣……」
「自分のことは自分で考えなよ。僕はやりたいことをするだけだからさ! ははは!」
ひ、酷い……大臣に着いて行ったのが間違いだったのか? それとも、俺もなんか失敗してる? ずっと大臣に利用されてただけなのか?
「でも、そんなに悲観的にならなくて良いよ? きっとすぐ良くなるからさ? ははは!」
そう言った大臣は逃げるように去って行った。はぁ……マジで大変なことになっちゃったよ……
「みんなはどうする? これから」
「どうしましょう……」
「いや、ヤバいのは私ですよー。だって今まで衣食住の全てをお城に依存してきたので、これからどうしたらいいのか分かりません……」
「とりあえず家に来る? そこでちゃんと話し合おうか」
話し合うつってもどうすんのよ、これから。怒鳴られたのも嫌だし、仕事なくなっちゃったのも嫌だわ……向こうの国で生活しようかな……
…………ん? なんかあれ? そもそも大臣は怒られるの分かってたんだよね? ならこうなってもおかしくないって分かるはずじゃ……
うん、大臣は俺たちが思っていた以上に悪い人なのかもしれない。そんな疑惑を胸に抱いたまま、自分たちの家に帰った。
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