152 カエデ……さん
久々に自宅に帰ったが、どうもホコリっぽい。そこまで離れてないはずなのに……川の近くだからか?
適当に魔法で家を綺麗にする。綺麗になれ!って思うと勝手に綺麗になるのだ。楽だ。
何か食べ物はないかと色々家を探し回ったが、なにもない。はぁ……今、市場、開いてんのかな?
めんどくさいけど、このままお腹空いてるのもダルい。ちょっと歩いて行こうかな。
念には念を入れて、荷車を引いて行く。なんだかこれも懐かしいな。
荷車の音が街に響いている。きっとこれを懐かしがってる人も居るだろう。俺は帰ってきたぞ!
冷静に考えたら迷惑かもしれないけど、ちょっとだけ許してくれ……これが必要なんだ。
「あ! アキラさんですよね? お久しぶりです!」
「お、ルイスくん。元気だった?」
「はい! お手伝いしても良いですか? これからお買い物ですよね?」
「うん、ありがとう。今日帰ってきたんだけど、ご飯がなくてさ」
「もし良かったらお料理、お手伝いましょうか?」
「そう? 話したいこともあったし、ルイスくんが良ければそうしよっか?」
「はい!」
ルイスくんとは本当に話したいことがある。どれぐらい魔法のことを知ってるのか、魔法は使えるようになったのか? 親方とは仲良くやってるのか? ……俺がいない間の親方の様子とか??
とにかく色々聞いてみたい。家まで着いてきてくれるのはありがたいな。
コロコロと荷車を引きながら道を歩いていると目立つ。そしてそれが俺だと分かると挨拶してくる。場合によっては近寄って話しかけてすらしてくる。
もうちょっと時間があったら、普通に対応出来るのに。とかなんとか思いながら、半ばめんどくさがりながら進んでいくと、市場に辿り着いた。やったー。
「もうあんまりやってないですね」
「そうだね。まぁでも……夜ご飯だけだから……」
そうなると荷車は要らなかったな。ついつい持ってきちゃったけど。
「もしかしたらこれ要らなかったかな。持ってきちゃったけど」
「でも、これが無かったら、アキラさんに気付かなかったかもしれません。個人的には必要だなぁって感じました……はは」
「なるほど……」
なら俺も必要だったと思っておこう……
市場を周り、まだ開いてる店からちょっと悪くなりかけみたいな野菜を沢山買う。ちょっともー! 結局沢山買うことになるのか?
「アンタが居なくて困ってたんだ。野菜が腐っちゃってさ? ホントにありがとよ」
「いえいえ……」
もしかしたら一生、俺は死ぬほど食べ物を買い続けるのかもしれない。荷車いっぱいのご飯を買い続けるのかもしれない。
……お店でも開こうかな? それが一番良いかもな。でも、料理なんて上手くないし……魔法使えばいっか!
いっぱいになった荷車をゴロゴロと引いて家に帰ると、そこにはカエデさんがいた。いや、カエデが居た。
「あ、おかえりなさい!」
「ただいまー」
「お久しぶりです! ルイスです!」
「久しぶりだね? 今日も手伝ってくれたの? ありがと」
「そんな……アキラさんに話したいこと……いや見せたいものがあったので!」
「そうなの?」
「はい! これを見てください!」
元気いっぱいなルイスくんは野菜を宙に浮かべ、いつもの場所に移動させて行く。あぁ、やっぱり使えるようになってるんだ……
「あぁ、もう出来るようになったんだね……」
「親方さんに教わったんです!」
「え? 親方って呼んでるの?」
「はい! アキラさんがそう呼んでるみたいだったので」
「そうなんだ……」
なんか、アレだな……うぐぐって感じ。悔しいわけでも嫉妬してるわけでもないけど、なんかなぁ。別に誰が親方って呼ぼうが勝手なんだけれども……
「居ない間に何かあった? 変わったこととか?」
「変わったこと? うーん……」
悩んでる様子から別に何にもなかったんだろうな。それならそれが一番良い。なにもないのが一番幸せだと思ふ。
「まぁ、ご飯作っちゃおうか。ルイスくんも食べる?」
「でも、もう食べちゃいました」
「あ、夜ご飯食べてるんだ。てか、帰らなくても大丈夫なの?」
「はい! 夜中まで絵を描いてることが多いので、帰宅時間については特に言われてないです」
「そうなんだ。まぁ、それなら軽くだけ食べてってよ。こんなに沢山あるんだし」
ここってめちゃくちゃ治安良いのかな。そういえば喧嘩とかもあんまり見たことない気がする。今まであったかな?
そんなことを思いながらちょいちょいと料理を作っていく。大したことはしてないけど。
「美味しかったです! ありがとうございました!」
「それなら良かった。ルイスくんも帰り道、気を付けてね」
「はい! また今度!」
「はーい」
ご飯を食べ終わってすぐに帰っていくルイスくん。俺はただただそれを見送って居た。
家には俺とカエデさん。でももう食器洗って寝るだけだな。食器も魔法で洗うしね。
「カエデさんももう眠い?」
(コラ! さん付いてるよ!)
「あ、えー、カエデ……さん……」
いや、普通に無理だ。何故か分からないが口がカエデさんを呼び捨てすることを強く拒否している。
「どうされたんですか?」
「えー、ちょっと良い?……エリーさん? ちょっと無理っぽい」
(どうして?)
「口から出てこない。うん」
(なにそれ……出来ないの?)
「うん」
(それなら仕方ないけどさ。ホントにカエデのこと好きなの?)
「……うん」
(なにその間)
「……どうされたんですか?」
「いや、なんでもないよ。カエデさん……」
情けないけど、しょうがない。出来ないことは出来ないんだ。しかし、なんで言えないんだろ。別に呼び捨てでもおかしくないはずなのに。
謎に落ち込んだまま、食器を洗って寝た。布団に入ってからちょっとすると、寝た。
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