兵士たちの休日
「なぁ、久しぶりにドラゴンを狩りに行かないか?」
上司が急にドラゴン狩りに誘ってきた。
「あ、いいですね! なんだか腕が鈍りそうでそろそろ行こうかなぁと思ってたんですよ!」
つい最近行ったばかりだよ。なんでこんな意味のない嘘をついてしまうんだろう?
「あぁ! それならば明日は休日だろう? ドラゴンを討伐しに行こう!」
明日?休日に何が悲しくて上司とドラゴンを倒さなきゃ行けないんだ。あんまり無茶を言うようだったら上手いこと言って断ろう。
「明日ですか? 明日いきなり二人で行くとなると……危なくないですか? 僕もう何ヶ月も弓矢使ってないなぁ……」
一昨日ぐらいに暇つぶしで外に出た。その時はドラゴンにまったく当たんなかったが。
「あぁ、それならあいつも誘うか……三人なら大丈夫だろう!」
「む、私も一緒にか! いいだろう、連れて行ってくれ!」
あいつってお前かぁーい。俺苦手なんだよなぁ、上司といいコイツといいみんな声がデカいんだから。
新しく入った仲間は王の間の門の番をしているから俺たちはみんな門番って呼んでる。一応先輩だから俺は呼んだことないけど……
「それじゃあ、また明日、正午頃がいいですかね? 城壁の門に集合しましょうか?」
「それがいいだろう、また明日な!」
そのまま帰宅すると憂鬱な気持ちで布団に入った。あぁ、明日はずっと眠るつもりだったのに。
適当な支度をすませると城壁の門に向かった。まだ正午になっていないのに門の前には二人が待っていた。
「すみません! 遅れてしまいました、待ちましたか?」
「ふん、気にするなそんなに待ってない」
「よし! 揃ったことだし出発だ!」
三人揃って外に出て行くと思った以上にドラゴンに出くわさない。このままじゃ帰りがいつになるか分からないうえ、無駄足になったら最悪だ。
「なかなかいませんねぇ、もう大分歩きました……」
「弱音を吐くんじゃない! 俺たちはまだ疲れていないだろう!」
それはお前が決めることじゃないよ。俺は疲れてるんだ。
「おい! あれを見てみるんだ! ドラゴンがいたぞ!」
門番の指差す方を見ると一匹のドラゴンが自由に空を飛んでいた。あぁ、あんな風に空を飛べたら気持ちいいんだろうけどなぁ。
「俺が行こう! ここから当ててやる!」
上司が矢をセットしながら言っているがここからだと距離が大分遠い、おそらく外すだろうな。
「クソ! しまった!」
予想通り外した矢は森の中に消えて行った。すると突然鳴き声が聞こえて、森の中からもう一匹ドラゴンが出てきた。余計なことしやがって。
「あ、もう一匹出てきましたよ!」
急速に近づいてきたそれに矢を射ると見事に頭に命中した。なかなかやるじゃん俺!
「こちらも倒し終えたぞ。もう帰るか?」
見ると門番が一匹目のドラゴンを倒し終えていた。どうやら腕は確かなようだ。
「貴様の弓矢使い……なかなかのものだったぞ! いいセンスをしている」
「あ、どうもありがとうございます。貴方もなかなかのお点前で」
門番が褒めてくれたので反射的に褒め返した。
「よし! それではもう帰るか! それがいいだろう!」
上司はまだ倒せていなかったが贅沢するには二匹で十分だろう。
「分かりました。そろそろいい時間ですしね。帰りましょう」
ただただ足を引っ張っただけだなこの人。
街の屋台が並ぶ場所でそれぞれ好きなものを頼んで行く。もう夜も近くなっていて大分賑わっていたから結構待った。
「すみません俺、串焼き頂けますか?」
「その、ドラゴンの唐揚げをくれないか!」
「私はそのサラダを頂くとしよう」
各々が好きに注文する。意外にサラダとか食べるんだなぁ、門番。
「へい! お待ちどうさま! あんたら仕事は?」
「三人とも城内の兵士です」
「分かった。ありがとう。美味しく食べてってくれよ!」
身分証明の意味で仕事を聞かれた。この時はちょっと誇らしい気持ちになれる。それぐらいしか良いとこないけどさ。
「今日はお疲れ様でした! 早速頂いちゃいますか?」
「あぁ! もう食べるか! お腹がペコペコだ!」
「いただきます」
上司がバクバク食べてる間に門番がしっかりと手を合わせている。この人育ちいいのかもなぁ。
「いただきまーす」
真似て手を合わせた。
串焼きを食べると、思ったよりも肉肉しく、噛んでも噛んでも噛みきれない。でもそこがいいんだよなぁ。門番に少しサラダを分けてもらったがサラダって言う割には嫌いじゃない味だった。
「これ意外に美味いっすね? 僕あんまサラダ好きじゃなかったんですけどこれは美味しいなぁ……」
「それなら良かった。遠慮せずに食べるといいぞ!」
結局サラダの半分は俺が食ってしまった。なんだか申し訳ねぇ。
「あー食った食った! もう満足だ! それじゃあ解散しようか、もうやることやったしそれがいいだろう!」
上司が場をお開きにしようとしているが個人的には門番ともう少し話していたかった。
「よし、それではまた機会があればよんでくれ! じゃあな」
「あ! 今日はありがとうございました。お疲れ様でした!」
それぞれが違う方向に散っていく、明日も結構早くに起きないといけない。
上司は相変わらずどうしようもないが門番は意外といい人だったなぁ。久々のドラゴン討伐も案外悪くなかった。まぁ、それなりにリフレッシュにはなったかな。
さて、明日も仕事だ……頑張って眠んないと。
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