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150 再会

 

 エラさんがタグュールさんまでの道を先導(せんどう)してくれている。普通に道覚えてるのスゴイなぁ。


「ここですよー。もう呼んじゃいますか?」

「良いよ。はは」

「こんにちはー」


 大臣が応えてるけど、今のは多分リアシーさんに聞いたんだと思うよ?

 返事があったので、ドアをノックする。中から出てきたのは若い女性だ。

 あ……そういえばタグュールさんって息子居なかったっけ。この人も多分娘じゃないの?


「あ、お久しぶりです。もしかして……」

「もしかしてなんですか? もし他国を見つけられたかを尋ねられているんだとすれば「はい」ですね」

「お、お父さん! 大臣さん達が帰ってきたよ!」


 …………ヤベェ。俺、タグュールさんが結婚してたこと知ってたじゃん。これスゴイ悪いことしちゃってるかもしれん。

元恋人が結婚してるところを見せたりしていいのか? リアシーさんが既婚者であることを祈るか……でも、そんな様子もなかったしなぁ。

 リアシーさんの表情は変わらない。うーん……どうしよ。


「どうぞ! 中に入ってください」


 その女性に案内されて中に入って行く。このまま進むとタグュールさんに会える。ひぃ……俺まで緊張してきちゃった……はぁ……


「お久しぶりです。タグュールと申します」

「タギュール?」

「…………」


聞き慣れない名前でタグュールさんのことが呼ばれた。本当はそういう発音だったんだな。

ドアが開いた瞬間に、タグュールさんの時間はおそらく止まった。持っていたお茶のカップを落としたからそうだと思う。

 それから立ち上がるとタグュールさんは無言でリアシーさんに抱きついた。二人とも涙を浮かべている。俺も、涙が……

 それから長い間、二人はそのままだった。俺たちもずっと立ち尽くしたままだった。


「変わらないですね? リィーアシーさん」

「アナタはちょっと変わりましたよ。でも懐かしい……」


瞳に涙を溜めたまま、懐かしそうにお互いの顔を見合う…………うん。俺たちはもう帰ろうかな。

二人で話したいことが山ほどあるだろうし、早いとこ抜けたほうが二人の為になるな。


「……それじゃ、俺たちはもう行きますか?」

「ははは! そうだね。まだお城も行ってないし。ははは!」

「本当にありがとうございます。この御恩(ごおん)は必ず……」

「お礼は彼にしてね? 見つけたのは彼だからさ! はは」

「俺ですか?」

「うん。それじゃ行こうか」


 みんなでこの家を出て行く。家の中でタグュールさんの娘さんとすれ違ったけど、今どんな気持ちなんだろ。いきなりすぎて複雑だろうな。

 しかし、数十年くらい会ってなくてもあんな風に抱き合えるんだな。俺なら普通にためらっちゃってダメだわ。いや普通はああなのか?


「良かったです! 二人再会出来て本当に良かった……」

「そうだね。うん」

(お前、そんなに興味ないだろ)


 え? いや? それはおかしいでしょ! だって俺もリアシーさんを連れて来る為にそこそこ頑張ったよ? なんてこと言うんだルドリーは!

 ……まぁ、興味ないとはちょっと違うけど……もしかしたら本当は会わないほうが良かったんじゃ? とは思ってる。なら連れて来るな!って感じだけど。


(色々頑張ってくれてありがとね! 私も見れて良かった。うんうん)

「それなら良かった」

(今度はアンタ達だね? もっと仲良くしても良いのに……お互い好きなんでしょ!?)

「……うん。俺は、うん」

(まぁ、時間の問題だよ。きっとね)


 さて、リアシーさんにはまた会いに来るとして、これからはなにするんだろ? 大臣が先頭を歩いてるけど、行き先はよく分からない。まぁ、なんとなくお城なんじゃねーかって気はしてるけど。


「どこ向かってるんですか?」

「ん? 城だよ? 一応報告しないとだし……あ、というかもう解散しちゃおうか? 君たちはもう良いよ」

「え? もう良いんですか?」

「だってお城でやることなんて無いでしょ? なんかある?」

「まぁ、確かに」

「もう暗くなるし、帰りなよ。また明日ね?」

「あ、じゃあ……また明日」


 エラさんと大臣はお城に帰っていく。俺とカエデさんは二人で残された感じだ。

 なるほど、いきなり時間が出来ちゃった感じだけどなにしようかな。


「これからなにする? もう帰る?」

「どうしましょうか……少し歩きませんか?」

(二人とももっとガツガツいっちゃいなよ!さっきの見てたでしょ!?)

「「……」」


 今の声は二人に聞いていたんだろう、俺もカエデさんも喋らなくなってしまった。エリーさんが色々してくれるのはありがたいけど、逆効果なところもあるんじゃないか?


(もう手とか繋ぐのは当たり前にしたら? なぜ手を繋がないの?)


 うっざ! とか思いながらカエデさんと俺とがお互いの手を目指す。二人とも動くからなんか空中ですれ違った。はぁ……恥ずい。


 二人で手を繋ぎながら久しぶりの街を歩く。やっぱりなんだかんだこの街の方が落ち着くわ。

 日が暮れそうになっている街は懐かしいようで、見慣れない。どうも帰ってきたっていう感覚が湧いて来ないのは何故だ?


「あ……」

「ん? どうしたの?」

「すみません、私もお城に用事ありました……」

「え? そうなの?」

「はい……帰ったら伝えるように、言われてて」

「そっか……じゃあお城までか」

「すみません……」

「そんなに謝んなくて良いよ。うん」


 そういえばカエデさんもお城で働いてたんだ。となると暇なのは俺一人ということになるな。

 普通は長旅から帰ってきたとなるともっと色々ありそうだけどな。もしかして俺はこの街にあんまり知り合いが居ないのかもしれない。


 お城の前でカエデさんと別れる。中に入るのも良かったかもしれないけど、中で大臣にすれ違ったら恥ずかしいからやめた。

 さて、みんなに挨拶でもしに行くか。 



読んでいただきありがとうございます!


よろしければ下の☆マークから評価等よろしくお願いします!


ありがとうございました!


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