148 信じてもらえる?
それから長い沈黙が流れた後、リアシーさんがまた口を開く。
「それなら……それならどうして私はドラゴンに救われたのでしょうか?……」
ドラゴンに救われた? 初めてドラゴンの巣を見つけた時かな。
「……私はドラゴンの群れに囲まれていました。最愛の人は私の為に命を懸けてくれました。それでも私ではどうにもならずに……」
やっぱり逃げ切らなかったんだ。
「そこに巨大な、それはもうとても巨大な蛇のようなドラゴンがやってきて、私の周りをグルグルと這い回り、私のことを守ってくれたのです」
(それ私だ。懐かしい……)
「それから私はドラゴンを信仰するようになりました。きっと神聖な存在なんだと確信しました……」
そっか。てか、あの宗教の開祖っていうの? 始まりの人ってリアシーさんだったんだな。それにしても色々あったっぽい。
〈我々は神聖な生き物ではない。だが……人間が思ってるほど野蛮な生き物でもない〉
それはあるかもな。ルドリーもグェールもエリーも話してみると案外普通だ。たまに人間と話してんじゃないかって勘違いすることもあるし。
「ははは、だってさ」
「ならどうして……どうして……」
「どうしてだと思う? 教えてあげるよ」
大臣がしゃがみ込んだリアシーさんに話しかける。確かに俺達はどうして救われたのかを、知ってる。
「それは君がタグュールさんと一緒だったから、恋人だったから、助け合おうとしてたから」
「……え、え?」
ちょっと泣き出しそうになってるリアシーさん。てか、もしかして大臣って良い人?
「そうだよね? エリーくん?」
(そうそう! 彼女には聞こえてないだろうけどさ!)
「そうだってさ? あ……君を助けたドラゴンの名前はエリー、覚えておきなよ?」
「……これはどういうことなんですか?……全く分からない……」
「はは。大きなドラゴンを殺すと、意識が近くの人間に移るんだよ。僕たちはエリーを殺したでしょ? その時から僕たちの中にはエリーが居るの」
「証拠は……」
「そんなこと言ったら君達も証拠がないのにドラゴンを神の使いとか言ってたんでしょ? まぁ、でも証拠はあるよ」
あるの? どうやって俺達の中にドラゴンが住んでることを教えるんだろ。
「レイくんと久しぶりに話したら? ルドリー? 僕達の口を使ってさ」
(はぁ……やっぱりか)
「予想してたんだね。それじゃ二人ともよろしく」
これって俺を使って、レイとルドリーが話してる様子を見せるってことなのかな? それで信じてもらえる?
〈久しぶりだな。そこは楽しいか?〉
(はぁ……ホントにやるのか……普通だ、と返してくれ)
「普通だそうです」
〈契約は出来そうか?〉
(さぁな)
「さぁなって言ってます」
これ本当に俺の中にドラゴンがいるように見える? なんか口裏合わせて適当なことやってるようにしか見えなくない?
(話すことなんてないぞ。元々そこまで話さん)
「ははは。そう? これでドラゴンが居るって信じてくれた?」
「…………」
「まだ信じてないかぁ。ははは! なら街に帰ってからもっと見せてあげるよ。だからもうここは出よう」
〈帰るのか?〉
「うん。また」
俺たちはレイに挨拶をして、ここを去る。肝心のリアシーさんは、もうどうにもよう分からんって顔をしていた。信じようとしてるけど、信じきれないみたいな。
実際俺たちの中にドラゴンが居ることの証明って難しいな。考えてみればカエデさんとか良く信じてくれたよ。
「……どうするんですか?」
「ん? なにが?」
「いや、リアシーさん」
「ははは。心配しなくても信じてくれるよ。いや、もう信じてるかもよ?」
「ドラゴンが居るってことですよね? アレで?」
「ははは! アレだけじゃないよ!」
色々やったし、信じてくれてもおかしくないのかな。まぁ、俺はなんにもやってないけど。
ドラゴンに乗ってまた空を飛ぶ。今回の目的地はセントラルだ。やっと帰れる……
見慣れた道が地上に見える。帰ってきた感がスゴイ。遠くにはセントラルも見えてるし、この旅もそろそろ終了か。
大臣はどこまでもセントラルに近づいて行く、ドラゴンに乗ったまま……そろそろ降りないと見つかるんじゃ?
「降りないんですか?」
「降りないよ。このまま街まで行くよ?」
「え!? なんでですか!?」
「ダメ?」
「え……でも、ダメじゃないですか?」
「良いよ。だって、どうせいつかはバレるんだし」
えー、そういう問題なのか? じゃあ今まで隠してたのはなんだったんだーー。もしかしてみんなもドラゴンに乗せようとしてるのか? 実際それぐらいしかここと向こうで行き来する手段はないけど……
そんなわけでドラゴン達は街のすぐそばに降り立つ。がっつり門番さんに見られてるけど大丈夫なのか?
「あ、あ! アンタ達、今ドラゴンに?」
「うん。ただいま」
「は……大臣さん!? お、おつかれさまです……」
「その子たちは殺さないように言っといてね? ははは!」
「でも、危ないんじゃ……」
「危なくなったら殺して良いよ」
そういうと大臣はスタスタと中にセントラルに入っていく。これからどうなっちゃうんだ……絶対なんか考えてるよ。
「大臣……なにかやりたいことでもあるんですか?」
「そうだね! 君も分かってきたじゃん? はは」
「まぁ、もう長いんで」
久しぶりに帰ってきたセントラル。でも心の中は安堵感よりもドキドキとか恐怖の方が勝っていた。せっかく帰って来れたのになぁ……
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