145 一緒に帰れる?
晴れ。そして大臣が帰ってきている。これはもう今日が出発の日になるだろう。うん。
俺はリアシーさんに会いに行かないといけない。もし、本当に今日出発するなら早いとこ教えて欲しいな、って思いながら焚火の部屋に入る。
「おはようございます……」
「おはよ? 今日出発だから。ははは!」
「あ、やっぱり……」
「僕も分かってると思ってた。早く呼んできなよ」
「すみません……もうちょっとだけ」
「ははは。いくらでもゆっくりすれば良いよ。別に明日でも良いんだしね!」
眠気が飛ぶまで少しの間、火に当たる。ついでにメモっておいたリアシーさんの家の場所も見ていた。
一人で行くの地味に嫌だなぁ。カエデさんならついてきてくれるかな?
「カエデさんも来てくれない? ちょっと地図、自信ないから……」
「あ、はい! もちろんです!」
「ありがとう……もう出発出来る?」
「はい! 行きましょう!」
うーん。これでこの街を歩くのも、もしかしたら最後になるのかな? 出来れば温泉でも入りに来たいけど、忙しくなりそうだしな。
そんなことを考えながら、手を繋ぎながら二人で歩いている。これぐらいのことなら普通に出来る様になった。ある意味エリーのおかげかもしれない。
「こっちかな?」
「いや、そっちじゃないですよ?」
「え、そうなの?……来てくれて良かったよ。ありがとう」
「どうも……」
慣れない街でも迷うことないカエデさん。俺は地図とかを見ながら歩くって経験があまりにも無さすぎて、道に迷いかけた。もしかしたら方向音痴なのかもしれない。
「ここかな」
目的の家を見つけたので、トントンと扉を叩く。すると中からリアシーさんが出て来た。
「こんにちは」
「お久しぶりです。出発ですか?」
「はい。ちょっと遅くなっちゃってすみません……」
「……準備は出来ております。みなにも説明を終えました」
「今日なんですけど、大丈夫ですかね? いきなりなんですけど」
「行きましょう」
落ち着いた様子のリアシーさん。でもきっと内心ドキドキなんだろうなぁ。何年振りなんだろ。まだ若かった時の話だ。
お互い色々あったみたいだけどそれでも、こうして再会出来るって良いなぁ。
カエデさんと繋いでいた手は、リアシーさんの前で自然と離れていた。
「はは。おかえり。それじゃあもう行こうか?」
「俺はもう大丈夫ですよ。風邪も治りましたし」
「君たちも大丈夫だよね?」
「大丈夫ですよー? カエデも大丈夫だよね?」
「うん……大丈夫」
「よろしくお願いします」
出発の準備が出来てしまったので、ここで買った小さなカバンを持ってヘルミーさんの家を出る。中には買わされた謎のやつと、ここの名産品がちょっと入ってる。
「それでは行ってらっしゃいませ。どうかご無事で」
「これまでありがとうございました……また来ます」
「待ってます」
ヘルミーさんに別れを告げると、本格的にもう出発なんだなぁって思えてちょっと悲しい。別に仕事じゃなくても良いから来ようかな。気合で。
街の外に出て少し歩いた薄暗いところに、六匹くらいのドラゴンが居た。
背中に荷物が結びつけられてるところを見ると、この子達に乗ってセントラルに帰るらしい。めちゃリアシーさんも見てるけどいいの?
「ごめんね? これだけなの。はは」
「……これはどういう事ですか?」
「これに乗って行くんだよ? 僕たちの国まで」
「……それは……それは出来ません! ドラゴンは神聖な生き物なのです!」
「ははは! ドラゴンについては君より僕たちの方が詳しいよ? ね?」
大臣が俺たちに同意を求めてきた。まぁ、実際に喋ったことあるしな。
適当に首を縦に振り、詳しいということにしておく。
「そんなことは関係ありません! ドラゴンに乗るなんて……」
「じゃあ浮かんでいく? 彼に頼めばドラゴンに乗らずに帰れるよ?」
「俺ですか?」
「魔法でなんとかしてあげたらいいじゃん?」
魔法でっていうけどさ。ここからセントラルまで魔法でって死ぬほど大変じゃないか?
なんかもうこのまま喧嘩別れして終わり? どうなるんだろ? 普通に考えて説得は難しくないか?
「どうしますか? 大臣」
「ん? 置いてくつもりなの?」
「え? でも……」
「ははは! 無理やりでも連れて行かせるよ。そっちの方がいいしね。ははは!」
「む、無理やり?」
無理やり連れて行くの? なんで連れて帰ることにそこまで執着してるんだ……あぁ、ドラゴンが見られちゃったからか? うーん、大臣のことは分からん。
「君が選んでよ? 無理やり連れて行かれるか、自分の意思でドラゴンに乗って行くか。どっちでもドラゴンには乗るんだけどね。ははは」
「……私は、私は帰ります」
「なら無理やりだね。魔法で気絶させられない?」
「ええー、それはちょっとヤバくないですか?」
「ははは! そんなこと言ってる癖にやってくれたじゃん!」
「え!?」
リアシーさんは気を失って倒れた。いや、俺はやってないぞ! えーー、なにこれ?
「いや、なんでそんな演技……俺はやってないですよ」
「ははは! ごめんね? 一応聞かれてもいいようにさ?」
「てか、なんでそんなに連れて行きたいんですか? なんかありました?」
「はは。僕は会わせたいだけだよ。それじゃあ行こうか?」
カエデさんとエラさんですらちょっと引いてたし、大臣の異常なところがバレ始めてるぞ……
大臣はリアシーさんを抱えながらドラゴンに乗った。俺たちもセントラルへ帰る為にドラゴンに久しぶりに乗った。これから空を飛ぶんだなぁ。
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