140 ドラゴンの巣跡地
大臣が帰ってくるまでの間に、この国を満喫することにした。どうせまたすぐ別の国を探しへ行くことになりそうだし、そうなったらまた忙しくなるし。
ただ俺はここに詳しくないので、ヘルミーさんに、オススメの場所を聞くことにする。しかし雨降らなくて良かったなぁ。
「帰る前に行った方が良い場所とかあります?」
「うーん。私たち、晴れの日はいつも温泉なので、他の場所はあんまり……」
「あぁ、そうなんですね……」
でもまた温泉行くのもなんかなぁ。もちろんまだ入ってないところもあるけど、倒れたりするのが軽くトラウマになってるから温泉はちょっと……
「お力になれず申し訳ありません……」
「いやいや、そんなことないです」
「ですが……」
「ははは……そんなに落ち込まないでください」
俺たちがドラゴンの巣を壊してから、ヘルミーさんがめちゃくちゃ気を遣ってくれるようになった。元々丁寧だったけど、それだけじゃなくなってきてる。
なんとなく家の中には居づらくなってしまったので、外に出る。なんかあったかなぁ……
ドラゴンの巣の跡地でも見てみようかな。もしかしたらエリーさんもまだ残ってるかもだし。
となると誰かと行きたいけど……カエデさんは誘ったら来てくれるかな……
「カエデさん、今日暇?」
「そうですね……でもエラさんと温泉に行く予定が……」
「あ、そうなの?」
「何かあったんですか?」
「いやいや、そんな……なんにもないよ?」
(気を使ってんの? それむしろダメじゃない?)
エリーさんが話しかけてくる。多分、あの時のカエデさんもこんな感じで色々指示を出されていたんだろうな。
「あ、ごめん。別に大したことじゃなくて、ちょっとドラゴンの巣を見てこようかなって」
「一人で、ですか?」
「いや、まぁ、大丈夫だけどね。もしカエデさんが暇ならって思って、でも、予定があったならそっちを優先して? うん」
「少し相談してみます。時間を遅らせてもらえば多分……」
「え? 大丈夫?」
「一人だと心配なので……私も行きたいです」
カエデさんは、エラさんと少し話してからまた戻ってきた。どうやら一緒に来れるようになったみたいだ。
「あの! 良いって言ってくれました!」
「それなら出来るだけ早く行こうか」
カエデさんが居るなら心配ないなとか思いながら、弓を背負い、入り口で馬を一匹借りて目的地に向かう。
まだドラゴンの残党が残ってたりすんのかな。まだまだ元気だし、魔法ならいくらでも使えそうだけど、エリーさんの前で殺すのはちょっと嫌だなぁ……だって昔の仲間を殺されてるってことになるからな。
「……帰ったら一緒に乗馬の練習しませんか?」
「え? 乗馬?」
「はい。乗れた方が楽だと思いますよ?」
「セントラルにも馬って居るの?」
ここで狩りをする時はどうなのか知らないけど、セントラルで狩りをする時は基本的に徒歩で探す。もしかしたらセントラルには馬が居ないんじゃ……
「居ますよ? あの……一緒に乗ったじゃないですか?」
「ん?……あぁ! 馬車?」
「ふふふ、そうですよ?」
俺はバカか? 馬車に乗ってセントラルに初めて来たのをすっかり忘れてた。ていうか懐かしいなぁ。あれからどんぐらい経ったんだろ。
もしかしたら一年とか余裕で超えてるかも……そんなに居た? セントラルっていつも気候が変わらないから分かりづらいんだよなぁ。
ここって雪とか降るのかな。雪しか降らない国もあったりすんのかな? ここって地球みたいに球体? もし違ったら色々なあれも変わってくるのかな。
「どうされました?」
「え? いや、懐かしいなぁって。もうどれくらい経ったのかなぁ」
「ここに来てからですか?」
「うん。この世界に来てから」
「そうですよね。なんか忘れちゃいます。アキラさんがここの人じゃなかったっていうの」
「俺ですら忘れてることあるからね」
この国に来てから、ハヤトとアヤカに会ってない。そのせいか自分の中で元の世界の存在が曖昧になってる。ホントに俺は日本に居たのかな。
……お母さんとか元気にしてるのかな。俺がいきなり居なくなっちゃって。もう戻らないとか勝手に決めてたけど、実際俺がどうするかなんて……そもそも戻れる方法なんかあるわけないけど。
「あ、着きましたよ?」
「……あ、ホントだ」
目の前にはドカンッと置かれたエリーの死体がある。それは首と胴体が分かれてしまっていた。俺がやったんだけど……
ドラゴンの巣の方は燃え尽きてしまって、元々の山の形がはっきり分かるようになってる。
しかもエリーだけじゃなくて、他のドラゴンの死体もまだ片付けられていない。そのせいかニオイが毒かと思うぐらい臭かった。実際あんまり吸わない方が良いと思う。
「ちょっと……ちょっとだけ片付けようかな。流石にこれ置いて帰るのは……」
「これでも綺麗になった方ではあるんですよ? 最初の方はホントに……」
「おぉ! お前らぁは大臣さんのぉ?」
「あ……ハリォードさん?」
「そうそうぉ! 良く覚えてくれてたなぁ」
ツギハギだらけの服を着たハリォードさんがここで作業をしていた。よく見れば他にも沢山の人が作業をしている。何してんだろ?
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