137 怪しげな集会
考えてみれば本当に不思議だ。タグュールさんが言った通りドラゴンの巣は本当にあった。でも、本当だとするとなぜ見つけた人間が生きてるのか分からなくなる。
本人がその時のことを覚えているかは分からないがとにかく聞いてみないと。
「あの、エリーさんに聞きたいんですけど」
(ん、どうしたの?)
「えっと……昔、覚えてるか分からないんですけど、ドラゴンの巣の辺りに迷ってきた人居ませんでした?」
(沢山居たけどなに?)
「あぁ、そっか。なら逃した人は居ませんか? 二人で来てた。最初の方に来た人で……」
(……ん?……ああ! 二人って恋人の?)
「やっぱりそうなんだ……。その人達のこと知ってます? どこに居るかとか……」
自分で聞いといてなんだけど、知ってるわけないだろ。だってほとんど無関係じゃん。
(知らない。元気にしてるの?)
「まぁ、そうですよね……」
(何? どうしたの?)
「実はその男性の方が俺たちの国に来てるんです。それで女性の方も見つけられないかなって……」
(君たちの国?)
「あ、俺たちここの人たちじゃないんですよ。聞いてませんでした?」
(もしかして離れ離れになってるの!? ホントに!?)
思ったよりも食い付いてきてくれた。もしかしたらなんか知ってる? でも知らないって言ってたし。
「そうですね……てか、なんで助けたんですか?」
(当たり前じゃん! 仲良さそうな二人だったんだよ?)
「え?」
(二人で手を繋いで良い関係だったから邪魔しないであげよーって思って)
「……なるほど」
そんな理由だったんだ。色々理由を考えてたけど、関係なかったんだな。
……えー、そういう理由で? そういう理由で決めてたりするの?
もしかしたら悪いドラゴンじゃないのかもしれない。そもそも本当にこの街にとってあの巣は害悪なものだったのか? だって一応は共存出来てたわけだし……
まぁ、でもリスクはあるしな。いやぁ、そんな人間味ある理由で人を助けないでくれよ! これからやりづらくなるじゃないか!
(私も手伝うよ! 何すれば良い?)
「……顔とか覚えてます?)
(覚えてるけど、顔変わってるでしょ?)
「そりゃそうなんですけど……」
これもう無理だな。でもせめてなんかやった感は出したいな。
この街に図書館ってあんのかな? 街の人に聞いてみて、そこに行ってみようか。
「このままだと無理そうだし外行く? 色々探してみようよ」
「私も行きます!」
(楽しそう! もし居たら教えるからさ?)
街は人がいっぱいだ。もしかしたらこの中に俺たちの探している人が紛れ込んでいるのかもしれない。ただ、そんなの見つけようがない。
さて早速だが、街を歩いてる暇そうで優しそうな人に声をかける。なんか情報が欲しい!
「あの……すみません」
「はいぃ? なんですか?」
「えっと、調べ物とかしたいんですけど、図書館とかって……」
「あぁ、図書館? それならあっちの方にありますよ」
「あ! ホントですか? ありがとうございます!」
「いえいえ」
それから詳細な場所を教えてもらい、図書館を目指した。図書館でヒントが見つかるのかはよく分からないが、なんもしないよりは……
そこそこ大きな図書館に辿り着いて、中に入る。そもそもどういう本を探せば良いのか検討も付かん。って感じだけど。
「来たは良いけどなに探せば良いんだろ」
(ドラゴンの巣関係じゃないか)
「確かに。よし時間もないから頑張るか」
その後二人で手分けして目的の情報を探したが、見つかるわけもなかった。そもそも、今その人がどこにいるのかを知りたいのに、過去のことを調べても意味ない。もし情報を見つけたとしてもそれからどれぐらい時間がかかるんだ?
なんとなくダメそうな雰囲気が流れながら本のページをめくる。そろそろ切り上げるか。
「カエデさん。ちょっと別の方法に変えてみる。このままじゃ無理っぽくない?」
「そうですね……でも、どうしたら」
「ちょっとヘルミーさんが帰ってきてるか確かめてみようよ」
「なるほど。そうしましょう!」
もし帰ってきていなかったらどうしよう。そんなこと考えてたらキリがないか。
図書館の外に出て、来た道を戻っていると道の隅の方で集会のようなものが開かれているのが見えた。なんだ?
どことなく周りの人たちと雰囲気が違って、深刻で怒ったような表情をしている。
「……なんだろ……」
(どうせすぐ帰るんだ。聞いてみたらどうだ?)
「えぇ……それはちょっと」
「私たちは! 大きな過ちを犯した! それを償わなければならない!」
ヤバ。ヤバい人たちだった。とっととこの場から立ち去ろう。トラブルになりそうだし。
「ドラゴンは神の使いだ! それを惨たらしく虐殺するなんて……この過ちは償わなければ!」
ヤバいヤバい…….俺たちがドラゴンの巣を壊したことがバレたらヤバい……早足でこの場から逃げ出そう……ヤバい。
(あれ? あの人……)
「どうされました?」
(あの人、ちょっと似てるかも? 逃した女性に)
「ホントですか!? その方はどこに?」
(あそこで……なんか言ってる人達の中の……紫の服をした人?)
「ホントに?……」
エリーさんが言うにはあのクソ怪しげな団体の中に目的の人間がいるらしい。うーん……やっぱり探すのやめようか!
「アキラさん……どうしますか?」
「……いやぁ、でも流石にさ……」
(行かないの? 見つけたんだから話ぐらい聞いたら?)
(お前の方が強いしな。なにかあってもどうとでもなるだろう)
ドラゴン達がノリノリで突撃させようとしてくる。はぁ……ちょっと……どうしよ…….
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