136 帰宅
エリーさんに案内されてきた場所はこの前の気絶した温泉だ。遠くから薔薇の香りがしてきた時にやばいと思ったが、まさかホントにここにきてしまうとは。
「……ここですか?」
(うん。ここならゆっくり出来るよ?)
「そういえばエリーさんってここに入ったことあるんですか? 俺たちも一応、入ったことあって」
(小さな頃は良く入ってた)
「そうなんですね……」
ドラゴンって温泉入るんだね。でもこんなに人がいるのにどうやって? 雨の日に入ってんのかな? バレないように。
「……アキラさん、大丈夫ですか?」
「まぁ……大丈夫だと思う」
(どうしたの? なにかあった?)
「いやぁ……」
ドラゴン相手だとしても温泉入って気絶したとか言いづらい。いいか。別に。
「ここで気を失ったことがあって、でもそれだけです」
(そう。ここはそういう効能があるからね。あなたのせいでもないかも)
「へぇ……そうなんですね」
流石に今回は倒れないだろ。ちょっとだけ入ってすぐ出ちゃえば絶対に大丈夫だし、うん。
そんなわけで足を温泉に踏み入れる。やっぱり気持ちはいいんだよなぁ。
「どうしてここがオススメだったんですか?」
(それは……秘密)
「え? 秘密ですか?」
(うん。もう少ししたら分かるよ)
言われるがままに浸かり続けていると、また頭がぼんやりしてきた。「そろそろ出ようかな」……と思った時にカエデさんが肩に頭を乗せてくる。こんなこと前にもなかったっけ? あれ?……
「あの……カエデさん?」
「……ダメですか?……」
「ダメじゃないけど……」
やっぱりなんかあれだな。ちょっとここの温泉は変な効能があるな。なんか興奮作用的な、じゃないと説明つかない……
このままだとこの前と同じ結末が待ってるぞ……でもこの頭をどけてお湯から上がることなんてマジで無理だし。
(また倒れるか?)
「うーん……」
「どうかされました?」
(もう無理そうだな)
ここは多少無理してでも上がらないとダメだ。こんなこと繰り返してたらヤバいし、クラクラしてきたし。
「……あの……」
「どうしました?」
「ちょっと、もう限界かも?」
「あぁ! すみません!」
カエデさんは頭をどけてくれた。なので立ち上がり温泉から出る。立ちくらみ、みたいにクラクラしたが、なんとか正気を保った。
その後は温泉に入らず、水を浴びて、炭酸を買って帰った。いやぁ……色々と疲れたなぁ
街はまだまだ人混みが沢山でご飯屋を探すのもそこそこ時間がかかったが、なんとか昼食を食べることは出来た。
「あ、おかえり!」
「ただいま……」
「なんか疲れてると様子だね! はは!」
「ちょっとだけ……」
「まぁいいや。実はもう帰る準備始めてるんだよ。このままいくと明後日ぐらいには帰れそうだね」
「え? もう?」
「もうって言っても相当旅してるよ? それともまだここに用事ある?」
「用事……」
ないと言えばないけど、あると言えばある。タグュールさんの恋人? をまだ見つけられてない。でもそもそも見つけ方が分からないし、本当に見つけようとしたら何日かかるか分からない。
本人をここに連れてきた時で良いかな……でも見つけるぐらいはしたいよな。出来れば。
「とにかくもう帰る準備は始まってるよ? 君が寝てる間にね! ははは!」
「まぁ、分かりました」
なんか不服みたいな態度を取っちゃったけど、不完全燃焼感は凄いあるんだよなぁ。でもそこまで重要なことでもないし……まぁ、残り時間で気合い入れて探してみようかな。
「僕たちはやることあるからさ。じゃあね?」
「あぁ、おつかれさまです」
「ははは!」
大臣は笑いながら部屋から出て行く。俺たちを、いや、俺を待っててくれたのかな?
さて、俺も暇じゃなくなってしまった。どうやって探せばいいのか検討もつかないが、出来るだけ頑張らないと。
「カエデさん? あの、タグュールさんの事覚えてる?」
「え? はい。もちろんです」
「その、あの人の恋人? がここに居るかもしれないからさ。探そうと思ってるんだけど……なんか手がかりとかあったかな?」
「恋人? そうだったんですか?」
「もしかしたら違うかも……まぁとにかく友達を探そうかなって」
「……うーん。難しいですね……」
そう、難しい。向こうから来てくれれば話は別だけど、そんなこともないだろうから。
そういえばヘルミーさんに頼んだアレはどうなってるんだろ? タグュールさんの名前と一緒に俺たちを知らせるってやつ。
今ヘルミーさんどこかな? こんなことを頼んで申し訳ないけど、でも見つけないとモヤモヤしたままになりそう。
「ヘルミーさんって今までどこかな? あぁ……大臣に聞けば良かった…….」
「私も分からないです……すみません……」
完全に行き詰まってる感がある。これ多分無理じゃないか? やっぱり次来た時、本格的に探した方が良さそう。
「……うーん。ルドリーはなんかある? 案とか?」
(ないぞ。そもそも生きてるのか分からないだろう)
「それは確かにそうだけど……」
(アイツに聞いてみたらどうだ? エリーだかに)
「意味あるかな?」
(ここのことについては俺より詳しい。そもそもドラゴンの巣ではぐれたんだろ?)
「あぁ、そっか」
そもそもなんでタグュールさんを助けたのかも聞いてないな。それも含めて話してみるか。
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