134.5 ドキドキ
家に帰ってぼんやりとしていると、玄関からガララッという音と一緒に大臣達の声が聞こえてきた。
「あ、起きたんだね? おはよう! はは」
「おはようって時間でもないですよ」
「そうだね! はは!」
楽しそうだなぁ。まぁ、大臣は楽しいだろうな。
「何してきたんですか?」
「鱗とか取ってきたんだよ。家の前にあるよ? 緑色の鱗」
「へぇ……おつかれさまです」
「見に行かないの? 綺麗だよ?」
「まぁ、後で」
「ははは! 後でね?」
「後で」
やっぱり鱗とか取りにいってたんだな。ヘルミーさんも言ってたけど。
こんな感じでダルいなぁと思ってボケッとしていると、カエデさんが何故かめちゃくちゃ近くに座った。肌と肌が触れ合うんじゃないかってぐらい近くに。
顔を見るとめちゃくちゃ赤い……体温が上がっていることが、触れなくても分かる。
「あ……あの、えっと……」
「え、どうしたの?……」
「……いやぁ……あの……」
口を開いて何かを言おうとしているが、言葉が出てきていない。マジでなんかあった?
「ふ、二人で温泉行きませんかぁ?……もし良ければなんですけど……」
「え?……うん、もちろん良いよ?」
「は、はぃ……」
声がめちゃくちゃに震えてるし、さっきも赤かった顔が茹でダコみたいに、もしかしたら茹でダコよりも真っ赤に染まっている。そんな状態で温泉入って良いの?
なんかマジでおかしいぞ? 大臣の仕業か? それとも……え? なんか他にあったっけ? 心当たりがあんまりない……
「……大丈夫?」
「あ! だ、大丈夫です! ホントに大丈夫です!」
「なんかあったの?」
「なんでもないですよ!! なんでもないです!」
なんかあったのかぁ……何があったんだ?
そんな疑問も抱きつつ、二人で温泉に向かう。そういえばこの前はのぼせて倒れてしまった。今度はそういうことがな……え?
腕を組んできた。あら? マジでなんかおかしくね? 今までこんなことあった? 腕を組んできたことなんてあった?
「……え?」
「あ! ご迷惑でしたか!?……ごめんなさい……」
カエデさんがパッと腕を離す。ちょっとしょんぼりしていたので、フォローの言葉をかける。
「え? いや! 迷惑じゃないよ! うん!」
「……ホントですか?」
「うんうん! 迷惑なわけない!」
「……」
カエデさんはまた腕を組んできた。ふ、ははは! 何が起こってるんだぁ!
異常に体温が上がっているカエデさん。多分俺もおんなじぐらい上がっているけど、そんなことどうでも良かった。
マジで何があったんだ!! ホントに分からんすぎて困ってるぞ!
当然、口数も少なくなる。イチャイチャしながら温泉に向かう姿は完全にカップルだったし、実際そういうところはあるけど、こんなに近づいたことはない。だからちょっと怖い。嫌じゃないけど、怖い。
(良かったな。嬉しいだろ)
「……」
ルドリーが話しかけてくるけど、流石にこんなに近くにカエデさんがいるのに会話は出来ない。絶対バレちゃう。いや、バレちゃっても……うーん。このムードを壊すことになりそうだから、辞めとくか?
嫌じゃないんだよ! なんだったらスゲェー嬉しいんだけど、いきなりすぎて怖いんだよ! いや、もしかして決めてたのかな? ドラゴンの巣をあーだこーだしたら積極的になろうとか? それにしてもだけどね。
「……アキラさんが無事で本当に良かったです……」
「え?」
「いつまでも起きなかったので……大臣さんは心配しなくても良いって言ってくださっていたんですけど。心配で」
「……ごめんね」
うーん……そういう理由なのかなぁ。だとしたら俺が悪いじゃん。
本当は俺がもっと積極的にならないと行けないのかなぁ。でもこれ以上何を積極的にすれば良いの? こんな街中でキスでもすんの? バカップルじゃん。
そういう考えが良くないのかなぁ。そんなこと言ってたら一生、何にも出来んじゃんか。どうする? えーーー、無理。
(困ってるようだな)
黙って首を縦に振る。俺はめちゃくちゃ困っている。何をしたらいいのか分からないし、早く温泉に辿り着け!って思っている。
(悪いようにはならないはずだ。今は受け入れろ)
なんだそのアドバイス、クソの役にも立たんぞ?
困りながらなんとか温泉にまで辿り着いた。心臓はドラゴンの巣を攻略した時よりも跳ね上がっていたし、もしかしたらその時よりも疲れているかもしれない。
背中には汗がブワーッと流れていて、もうすでに温泉に入ったみたいになってる。
おそらくそれはカエデさんも同じで、腕は組んでいるはずなのに肌があまり触れない。ちょっと体を俺から離しているのが分かる。ならなんで腕を?
なんとなく誰かに言われてやってるような気がしなくもない。こんなことを計画するのは大臣か? でも恋愛とか興味無さそうだし、もしそうならここに着いてきてそう。
じゃあエラさん? この前仲良さそうに話してたしあるかもしれないなぁ……なんか腑に落ちないけどなぁ……
この状況を作り出した犯人を探そうと思ったが、そんなことどうでも良い気もしてきた。なんなら犯人に感謝しないといけないかもしれない。
ありがとう……誰か。はぁ……
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