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133 また増えた

 

 悲鳴のような声が巣から聞こえてきたと思うと、地響きが鳴り始めた。それと同時に燃え盛るドラゴンの巣から巨大な蛇が出てくる。

 お腹がプクッと膨れたソレはツチノコみたいだった。見たことないけど。

 色は緑で鱗が炎の光を反射して、ギラギラと輝いている。


「おぉ、今までよりも大きいね」

「そうですね」

「あれだけ大きかったら喋るよね? 多分」

「そうでしょうね……その為に?」

「ははは! それだけじゃないよ? はは!」


 こんな時にも楽しそうな大臣。やっぱりなんかおかしい。

 そんなことを考えてる間にもドラゴンは次々襲いかかって来る。油断してると一撃でやられそうだ。


「こっちに来てますよ!….…どうしますか!?」

「ホントだ。どうしよっか? はは!」


 さっきの馬鹿でかいクイーンのドラゴンが縫うように地を這いながらこっちにやって来る。近づけば近づくほどその大きさが分かる。

 マジでルドリー五十人くらいはありそうだ……ルドリーって人じゃねーか。


「流石に僕たちじゃ無理だね! スティー。頼める?」

『分かったよ』

「……いや、ちょっとだけやっても良いですかね? 無理?」

「ははは!! やってみてよ! 面白そうだしさ?」


 そんな訳で迫ってくる巨大な、恐ろしいほどマジで大きい蛇に向かって俺は進んだ。正気じゃないとは思うけど、絶対に無理とも思えない。


(どうするんだ?)

「さぁ。魔法でどうにか」

(やってみれば良いさ)


 スティーのおかげでまだ体力は残っていたので、全速力で走って蛇のドラゴンの元に忙ぐ。あっちもあっちでとんでもないスピードで近づいてきていた。


 地鳴りと一緒に、地を這うドラゴンは俺の目の前にやってきて、四階ぐらいの高さに口を開く。

 ……魔法のイメージ……こいつの首がいきなり取れて、俺の前にゴロンッと転がるイメージ。

 ………うーーーん。首が取れるイメージ……


 体にドラゴンの吹く息がかかる。ついでにピリピリする唾液もかかった。

 それを出来るだけ無視して目の閉じながらただ魔法をイメージしていると、全身に熱湯をぶっかけられた。


「うわぁ! なに!?」


 パッと目を開くと俺の前にゴロンッとドラゴンの首が転がっている。そしてその切り口から勢いよく血液が吹き出していた。


「あっっつ!! 何コレ!」

(そんなに元気そうなら大丈夫だろ)

「いや、コレマジで熱い!」


 その場から避難してすぐに全身を水で流す。それも魔法でやったので、結構もう無理だってぐらいの疲れが来た。


『良くやったな。後は俺がやっておくから』

「え?……でもまだまだドラゴンいるよね?」

『街には被害がないように上手いことやる。安心して眠れば良い』

「えー……なら寝ようかなぁ……」


 スティーは優しい……骨身に染みて行く。久々に話したけど良いやつだぁ……

 正直ちょっとこんなに上手くいくと思ってなかったから拍子抜け感がある。本当にあの馬鹿でかいドラゴンを殺せたのかな?


(また無理だったな)

「なにが?」

(契約)

「あぁ……ごめん。なんとかなっちゃった」

(気にするな。我はいつまでも待つ)


 いきなりみんな優しい。なんでか知らんが、ちょっとだけ怖い。なんでか分からないけど。

 さて、ホントに俺のやることは終わったし、寝るとするかなぁ……


「おぉ! スゴイね? まさかホントにやるとは」

「大丈夫ですか! アキラさん!」

「あぁ、大臣とカエデさんも……」

「ははは! 残りはスティーが全部やってくれたよ。最初からそれで良かったんだけどさ! ははは!」

「あんだけ居たのに?」

「はい。空からたくさんドラゴンが降ってきて……近づいてみるともう息絶えていて……」

「こわ……」


 俺たちもそんなふうに殺せるのかな……いや、その想像はあまりにも怖すぎるから辞めよう。

 みんなが心配してくれてる中で、もう眠たすぎて寝ようとしていたが、また話しかけられる。


(はじめまして)

「あ、はじめ……ん?」

(これからよろしくね?)

「おぉ! やっぱり話せるんだね! ははは!」

「え? なんですか? これ……」

(カエデさん?)

「え、あ、はい……」

(よろしく)


 どうやらさっきの女王的なドラゴンが話しかけてきてくれているらしい。思っていた通り頭の中に聞こえる声は女性のものだ。

 初めてドラゴンの声を聞くカエデさんは少し驚いている様子だが、もうすでに存在は知っていたからか、徐々に平常心へと戻って行った。


「聞きたいことがいくつもあるんだよ。聞いても良いかな?」

(後でね。今は落ち着きたくて)

「もちろん! 後でよろしくね!」


 大臣はデリカシーがないから今さっき殺されたばかりの人にも普通に話しかけて行く。てか、俺たちめちゃくちゃこのドラゴンにとって悪者じゃない? ホントに仲良く出来るのか?

 ルドリーとかグェールはいうても一匹狼だったから、そんなに背負ってるものはなかったかもしれないけど、これだけ多くのドラゴンを育ててきたこのドラゴンにとって俺たちってとんでもない悪になるんじゃ……


 今更になって血の気が引いてきちゃった……はぁ……寝て忘れよう。

 そろそろドラゴンにも意思があることを、本格的に理解してきた。このままドラゴン狩りを続けていても大丈夫なのか? モラル的に。



読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークから評価等もよろしくお願いします!


ありがとうございます!

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