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歴史書



 第1章 1-1 エドワード王政の()こり


 今ある生活の基盤はいつ出来たものだろうか?

 名誉あるエドワード王政の始まりは随分と昔に(さかのぼ)ることができる。しかしそれ以前、つまりは創世(そうせい)の時代にまで話を持って行かなければ、本質を理解することは不可能であろうから、ここに述べておこう。



――人間は神によって創られた、ドラゴンは悪魔によって(はな)たれた ランダー・カシナイズ 『エリオと病魔』


 今や誰もが知っているカシナイズの言葉であるが、彼の言ったとおり、世界の始まりには人間と豊かな自然、そして慈悲深い神が存在していた。

 世界には自然があった、山を丸呑みするほどの大きな一本の木に、空中を流れ、虹がいつでも架かる川、我々が想像する事も叶わない、神にしか創り得ない自然があった。そこで人間は不意に(あらわ)れた。それは自然への神からの贈り物だった。


 それらの人間には初めから知性が(そな)わっており、色々な知識を神への祈りを捧げるための祭壇と、文明を築き上げることに使った。

 自然が創造主に感謝をする為に、神から与えてもらった人類がそのようなことをするのは当たり前のことだった。

 人々は人生を謳歌(おうか)し、自然はありのままの姿で自由に育っていったのだ。しかしそんなある日、世界にとってあまりにも恐ろしく、そして文字に起こす事も躊躇(ためら)われるほどの悲しい出来事が起こった。


 神が創り出したのはこの素晴らしい世界だけだった、悪魔もその世界には手出しする事は出来なかったが、姑息(こそく)な悪魔は世界の外に地獄の(ほのお)を思わせるほどの燃え(たぎ)る球体を置き、自由に生長(せいちょう)していた木々をその恐ろしいほどの熱で燃やし尽くしたのである。自然は痛みに苦しみ悶えた、その苦しみは何百年と続き、いつしかその悲鳴は形となって巨大な一つの怪物を生み出した。それは世界をまるごと(おお)ってしまうほどの大きさだった。

 嘲笑(あざわら)うかのように怪物は咆哮を上げると、その振動で、空中を流れていた美しい虹の架かる川は地上に落とされて、もはや地上に人間が歩ける場所はなくなった。その後、木々の燃え(かす)を自らの体内に取り込むと、木々の痛ましい悲鳴とともに数万匹、いや、無数のドラゴンが、あの自然が溢れていた世界に解き放たれてしまったのである。


 何千年もの間、木々の熱を浴びてきた人間は今まで持っていた知性を失ってしまい、神への感謝を忘れ、自らが生き残るためだけに命を過ごした。

 そんな人類にも神は偉大だった。神の祝福により人類は生き永らえることが出来たが、知性を失ってしまっていた人間にはどうする事も出来なかった。そんなただ怯えて逃げ回っていただけの人類に神は反撃の機会を与えくださったのだ。


 燃えてしまった木々の破片で弓と矢を創り上げ、それを地上に落とすことでドラゴンに対抗する手段を(さず)けたのだ。


 人々は見たことが無いはずの弓矢を自由自在に扱い、お互いに支え合いながら宿敵であるドラゴンたちを討伐していったのだ。だが、そんな毎日は悲惨そのものだった。辺りを見回してもそこにはかつての輝きを失った木々の破片、ドラゴンの死体、それと亡くなってしまった人間しかない。自然を失ってしまった人間は日々続いていく、意味のない戦いに精神が摩耗(まもう)してしまっていたのだ。

 そこに一人の男が立ち上がるのである。その人物こそが我が王国の()でもある、エドワード・ステイクリフトだった。

 エドワードは皆をまとめあげ、木々の破片で家々を作り、石を積み上げ城塞(じょうさい)を築き、安心して夜を過ごせる居住区を作り上げた。それが今のセントラルの元となっている。


 希望の中心であり、自然が溢れる素晴らしい世界の中心だ。


 国民から後押しされる形で、エドワードが第1代国王となり、素晴らしい王政は今もなお続いている。

 我々は限りある平和の上で胡座(あぐら)をかくのではなく、いつか必ず、ドラゴンを討伐し、素晴らしい自然を取り戻さなければならないだろう。

 その為に国王、いや、国民はドラゴンに立ち向かわなければならない。


 それはこの国に生まれたものの宿命(しゅくめい)でもあるのだ。



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