131 落ち着かない日
今日は晴れ。そして明日はドラゴンの巣に行く日。
急展開だが、決まっているものはしょうがない。
魔法の練習でもしようかなと思ってもいたが、流石に明日に備えて休むことにした。温泉も辞めとこうかな。となると相当暇になってしまう。
喜んでんのか怖がってんのか分からない心臓の高鳴りが気になって落ち着ける気配もない。
さっきから街の中を散歩しては戻ってしては戻ってを繰り返していた。とにかく落ち着かない……
(落ち着かないみたいだな)
「そりゃーね。そりゃそうだ」
(……前から気になっていたが、人によって口調変わりすぎじゃないか?)
「え? そういうもんじゃないの?」
(そうでもないぞ)
「へぇ、そうなんだ……」
地味にショック! なこと言われた……みんな俺に対して雑じゃない? もっと丁重に扱ってくれ……
あぁ……もう無理だぁ。もう今日にでも行きたい! 明日まで待てないよ! はぁ……
「街のみなさんも忙しそうでしたね。私たちも頑張らないと……」
「うん。頑張んないと……」
散歩していても街は騒がしい。街の広いところでは多くの人が弓矢の練習してたり、お祭りみたいに屋台があったりで、色々と騒がしい。
失敗することはないと思うけど、いきなりこんなことを言われた街の人達も可哀想だ。
もしかしたら明日、この街に大量のドラゴンが襲ってくる。普通にそんなこと言われたら嫌だわな。
みんなもドキドキしてるんだろうなぁ。でも、俺も相当ドキドキしてるぞ!
大臣やエラさんは今日もなんか話してるんだろう。何話してんのか俺は知らないけど。
とにかく落ち着かないまま、部屋の中でじっとしていると不意にまたあのジュピだかなんだかのことを思い出す。それを荷物から取り出した。
(お前、大丈夫か?)
「……ダメかも」
(心配するな。言っても無駄か)
無駄だ。今、頭の中には上空を埋め尽くすぐらいのドラゴンの群れが想像されてしまっている。きっと普通に失敗するんだ……いや、大丈夫なんだけどさ。
きっとうるさいんだろうなぁ。てか、どんな作戦で行くのか知らないから心配なのか? それとも……
「楽しみにしてる説とかある? ありえる?」
(どうだろうな)
楽しみに思ってる気もする。なんか遠足も前みたいな気分になってる気もする。ちょっと前にルドリーにも言われたけど、自分がなにを考えてるのかが分からなくなってるみたいだ。
めんどくさいから寝ようかな。ただ、今寝たら夜寝れないような。いや、そんなことしなくても夜寝れないだろうし、なんなら今も寝れないと思う。
やっぱりこのユニだかなんだかを眺めるのが一番良いなぁ。周りからみたらちょっと病的に写ってるかもしれないけど、もはやしようがない。しようがない。
……暗闇の中でカラフルな石がキラキラ輝いている……はぁ……マジでもう無理だぁ。
てか、なんなんだこれは。いくら見てもこれの意味が分からない。アクセサリーってそういうもんか? そもそも雑貨屋ってそういうのが沢山置いてあるお店か?
なんだかんだ時間は過ぎていき、大臣達も用事が終わったようでここに戻ってきた。
「どう? 明日はドラゴンの巣だけど?」
「えぇ……まぁ、緊張してますよ」
「ははは! なんか変だもんね? はは!」
「ははは……」
不思議な話だが、大臣と話してるとなんかアホらしくなってちょっと冷静になれる。もうちょっと早く話しかけてくれたら今日を無駄にすることもなかったのに。
「かいつまんで説明するよ。明日のこと」
「あ、はい」
「目的地までは馬に乗って行くんだけど、君は馬乗れる?」
「いやぁ……ちょっと……」
「はは! だと思ったよ! なら誰かの後ろに乗せてもらってね?」
逆にみんな馬に乗れるのか。悪いけどエラさんとか乗れなさそうじゃない?
「で、ドラゴンの巣に着いたら一番最初に君が火をつける」
「あぁ……はい」
「それでもう出番は終わりだね。だから後は休んでても良いよ! ははは!」
「え? もう?」
そんなにすぐ終わるんならもっと早く教えてよ! こんなに緊張した意味がマジでないじゃないのよ……
でも俺たち四人で行くなら別に良くないか? それともここの人達も手助けに来るのかな?
「でも、別に良くないですか? 俺たちだけですよね?」
「エラがいるじゃん。言ってないんでしょ?」
「まぁ……言ってはないですけど、もう言っても良くないですか?」
「そんなにドラゴン殺したい? ははは! 君はそうだったよね!」
「いやいやいや! 手伝いたいだけですよ! マジで!」
「じゃあ、僕たちが危なくなったら手伝ってよ。それでいいじゃん」
「いや、でも……」
「僕たちが疲れたら全部君に任せるからさ。それで良くない?」
「全部……」
「なに? ドラゴン狩りしたかったんでしょ?……はははは!」
なるほど、もしもの時は俺が全部やることになるのか……それはそれでプレッシャーだなぁ。
……自分から手伝いを申し出る必要もなかった気がしてきた。
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