128 はかあな
話し合いで疲れたので、カエデさんと外を散歩する。大臣とエラさんはみんなでまだ話し合っていた。
そもそも焚火がずっと焚かれているので、ちょっとだけクラッとしそうになる。ここでも一酸化炭素中毒とかあんのかな。
「それにしてもいきなり大変なことになったね」
「そうですね。ホントに私たちでなんとかなるんでしょうか?」
「まぁ、でも大臣が大丈夫って言ってんなら……それにスティーも居るから」
「そうなんですか?」
「うん。ちゃんと見ててくれてると思うよ」
死ぬことはない気がする。それ……に確信が持ててるわけではないけど、死ぬことないだろう。
ならなんでこんなに嫌なんだろう。当たり前といえばそこまでだけど、それにしても……
戦うことは嫌いじゃない気がするのに。
「この前のクシ、ありがとうございました! あれのお陰で寝癖とかも直せるので助かります!」
「あぁ、気にしないで良いよ……あ、そうだ。カエデさんって、狩りとか好き?」
「え? はい。昔からずっとやってきたことですし、人の為にもなるじゃないですか?」
「人の為?」
「ドラゴンの材料が必要な人が居たり、襲われる人が少なくなったり、ドラゴンを狩るのは誰かの為になってますよ?」
「あぁ……そっか」
誰かの為? それは誰の為? 俺は今まで誰とも知らない人の為に頑張ってドラゴンを狩っていたのか?
……そんなこともないな。普通に親方に言われたからドラゴンをずっと狩ってただけだし、誰かに言われたことをずっとやってたような気がする。それははっきりと誰かの為の行動だろう。
めんどくさ! もう良いわ。普通に言われたことやっとけば良いだろ! はぁ……でもまだドラゴンの巣に行く覚悟は出来てないよぉ。怖いよぉ。
「ちょっと温泉の方行ってみる?」
「でも遅くなったら心配されるかも……」
「じゃあ一回帰ってからにしよっか。もう話し合い終わってるかなぁ」
「そうですね! 戻りましょうか!」
帰ってからって当たり前みたいに言ってるけど、普通に俺の家じゃないという。ホームステイしてると考えればそこまで変じゃないか?
ヘルミーさんの家に帰ってみると話し合いはもう終わっていた。どうやら色々と決まったらしい。
「あ、ドラゴンの巣はに行くのは四日後だよ。準備しといてね?」
「四日後ですか?」
「うん。もしかして明日にでも行きたい?」
「いや、元々明日になるかもって話だったじゃないですか? それなのになんで四日後に?」
「明日は雨なんだって。で、それが乾くまで待つって感じかな」
こんなに雨降るところで木が乾き切ることってあるのかな。ボヤで終わるんじゃない?
「ホントにドラゴンの巣って燃えるんですかね」
「燃やすよ」
「えぇ? 燃えますか?」
(スティーに頼んだから大丈夫だよ? でも建前は君が燃やすことになってるからさ。だから巣に火が付いたら疲れた演技よろしくね?)
「え?」
「ん? どうしたの?」
今、脳に直接……
「それじゃあその時はよろしくね? それまでは自由にしてて良いから」
「分かりました。あと、温泉行ってきます。それじゃあ」
「はは。じゃ、また後でね」
温泉に浸かってリラックスしよう。てか、四日間も何しようかなぁ。明日は雨だし……明日ちょっと外に出て魔法と剣の練習しようかな。大臣も来るかな?
「温泉楽しみだね。まだ入ってないところもあるみたいだしさ」
「そうですね……」
もはや当たり前みたいに手を握ってくる。あれ? もしかして本当は俺からいった方がいいのか? 割とカエデさんから来られるけど、もっとやった方が良い?
まぁ、握ってきてくれてるってことは嫌われてるってことじゃないからな。間違いなく悪いことじゃないし、悪い気がするわけもなかった。むしろ良い気だ。なんだそりゃ。
温泉に着いたので前と同じように服を着替える。この前のやつを服の下に来てくれば楽だったのか。なんかプールかよって感じだけど。
前は行けなかった温泉の方へ二人で並んで歩いて行った。
「はぁ……落ち着く……」
「そうですね……」
セントラルに戻ったら温泉にも入れなくなるのかな。それはちょっと悲しい。家に湯船作ってもらおうかな? アーノルドさんならやってくれそう。
薔薇の香りがするワイン色の温泉はなんだか頭が良い意味でクラクラする。良い意味で。
「カエデさん……」
「……え?」
クラクラしたまま唇にキスをした。カエデさんは驚いていたけどそれ以上に俺が驚いている。あれ? ちょっとのぼせてる?
なんか周りが良い雰囲気過ぎてついついアクティブになってる。だって男女で入ってる人もめちゃくちゃ多い。しかもみんな仲良さそうにしてる。
この温泉はそういう効能なのか?? ありえるー。 クラクラしたままそんな感じのことを考えていた。
キスをしてからは二人とも無言なので、上がるタイミングを完全に逃してしまっていて、困っている。クラクラがグラグラになりそうだ……上がらんと……
「アキラさん。好きです」
「あぁ……俺もカエデさんのこと好き……」
「「…………」」
変な空気が流れだしたので、尚更上がらなくなってしまった。墓穴だ。
額から流れる汗も止まらないので、どうしたらいいのか分からない。うー…………
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