127 ドラゴンの巣会議
今日は朝からみんなで話し合うことになっている。言っても俺はその場に居るだけだろうけど。
議題はドラゴンの巣をどうするのか。多分上手いこと大臣が壊す方向に持っていくんだろうけど、みんな納得してくれるかな。
「あ、おはよう」
「おはようございます」
焚火の部屋には知らない人も沢山居た。そりゃそうだ、めちゃくちゃ大切な話になるだろうからね。
その中にはツギハギだらけの服を着たあの人も居た。名前は忘れちゃったけど。
「君は別に参加しなくても良いんだよ?」
「流石に俺も……」
「そう? まぁ、どっちでもいいけどね? ははは!」
どっちでもいいならどっか行っちゃおうかな。どうせ何にも話せないだろうし。いやぁ、でも流石にこれは参加しといた方が……
その後、人が集まりきったところでヘルミーさんが口を開く。緊張してきたぁー。
「それではドラゴンの巣、についてですが、スューリさんからどうぞ」
「うん。僕たちはこの前、ドラゴンの巣の辺りまで行ったんだよ。その辺りでドラゴンを倒していたんだけど、ドンドン数が増えちゃってね? それでもう無理だってなって逃げてたんだよ」
「なぁるほどぉ。俺ももうちょっと危ねぇーってことぉ、教えてやりゃ良かったなぁ」
「そうしている時に、遠くの方から咆哮が聞こえてきたんだ。僕たちの経験上アレはとんでもなく巨大なドラゴンの咆哮。で、それをきっかけにドラゴンの群れが去っていった」
もっと嘘ばっかりつくのかと思ってたけど案外正直に言うんだな。でもみんなちゃんと聞いてくれてるし、普通に正攻法で行けんのかな。
「つまりはドラゴンの中で組織が出来てるかもしれないってこと。それは一声大きな声を出せばみんな指示に従うような組織が」
「まぁ、俺たちもそんな気はしてたよぉ。そもそも誰も近づかねぇから詳しくはないんだがなぁ」
「そして巣は今も大きくなってる。それはここのみんなの方が分かるんじゃない? 僕たちですら分かったんだからさ」
「……確かに……初めて発見された時よりも大きくなってるそうです」
「うん。で、そんなドラゴン達がどうしてここを襲わないか分かる? 僕も分からなかったから考えてみたんだけど……」
分かる。これから大臣は怖いようなことを言う。やっぱりこの人怖い人かもな。
「ドラゴンがまだ足りないんだと思うんだよね? この街を壊すために必要なドラゴンがまだ足りない」
ザワザワとみんなが騒ぎ出す。どこか愉快そうな大臣はそこに火薬を投げ込むように言葉を続ける。
「だから今の内にやらないといけないんだよ。ドラゴンの巣を壊さないといけない」
やっと本題に入った感じかぁ。この調子だとやっぱり俺たちがやることになりそう。
ザワザワしていたこの部屋も一旦静まる。みんなを代表して口を開いたのはヘルミーさんだ。
「……ただそんなことは不可能です。あんなに巨大な物をどうやって壊すんですか」
「そこは僕たちがやるよ。前にも似たようなことしたことあるし。そうでしょ? 君?」
「あ、俺ですか?」
「うん。今までもこれぐらい大変なドラゴン狩りをしたことはあるでしょ?」
こんなに大変だったことはないよ! でもめっちゃうんって言えって目で言ってくる。
(よろしくね? ははは!)
笑いながら頭にも言ってきた。やだぁ! ドラゴンの巣行きたくない!……結局、俺はどっちなんだよ。
「そうですね……あの時は大変でした……」
「この規模の巣がぁ他にもあったのかぁ。しかもそれをなんとかしたことがあるとぉ……ほぉう」
「とにかくさ。ここのドラゴンの巣に関しては僕たちに任せてよ。その時にもしかしたら討ちもらしがここに来るから知らないからさ。その準備をお願いしようと思ってね」
「ただぁそれを失敗したらどうするんだぁ? アンタたちがダメだった時はぁ」
「その準備もお願いしたいんだよ。そもそもドラゴンの巣はいつか壊さないといけないでしょ? それなら僕たちが居る時の方がいいじゃん。ね? ははは!」
これで話は切り上げだ!って感じで高らかに笑い出した大臣。本当にズルい人だわ。マジで……付き合い考えようかな。でもやろうとしてることはちゃんとこの国の利益になることなんだよなぁ。
「ダメです! そんなことをいきなり言われても……」
「そうなると僕たちはこのまま帰ることになるよ? しかも、次、いつここに来れるかも分からない。もしその間にドラゴンの準備が出来ちゃったら僕たちは手伝えないなぁ」
「まぁまぁ、ヘェルミィーさん。この人はぁ俺たちのことを心配してくれてるだけだよぉ」
ホントか? ホントに心配なんかしてんのか?
でも実際このまま巣を放っておくのは良くなさそうなんだよ。間違いなくいつかは問題が起こる。そうなるとやっぱり早い内に……
「少し私たちだけで話させてください。まだ話すことがあれば、今ここで」
「うーん……ここに居る彼はこの世界の人間じゃないんだよ。だから普通の人が出来ないようなことも出来る。やってみてよ」
「へぇ? 何をぉ?」
「魔法だよ」
いきなりだなぁ。てか、魔法はアンタも使えるだろ!
(ほら、なんか魔法使ってみてよ! ははは!)
はぁ……しょうがないから掌にちょっとした火を作る。それを見てみんな声を上げて驚いていた。そりゃそうだ。
「やろうと思えばもっと出来るよね?」
「まぁ……」
「はは!……魔法が使える彼が居ればドラゴンの巣なんて簡単に潰せそうじゃない? どうかな?」
「……すみません。私たちだけで話し合います」
俺たちはこの家の外に出た。
俺は大臣に話しかけてみた。
「魔法のこと言っても良かったんですか?」
「うん。あのままだと断られそうだったしさ」
「でもちょっと嘘付きましたね」
「そうだよ。だって魔法をみんな使えるって知ったら大変なことになるじゃん? はは」
「確かにそうですけど……」
「君も嘘付いてね? 魔法が不便で限定的な使い道しかないものだってさ」
「なんでそこまでしてドラゴンの巣を?」
「そこまで? 僕がそんなに変なことしてるとは思えないけどなぁ。ははは!」
その後、焚火の部屋に戻るとドラゴンの巣を壊すことを許可された。もうやるしかないな。
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