126 大臣作の剣
家に帰って焚火の部屋に行ってみると、そこには十数本くらい剣が置いてあった。これ、ヘルミーさんに見つかっても大丈夫なやつなの?
「ああ! 待ってたよ。ちょっと試してみてくれない? 僕はそんなに詳しくないからさ」
「こんなに作ったんですか?」
「一応、エラが作ったやつもあるよ。疲れて寝ちゃったけどね?」
「ここじゃあれなんで外出ます?」
「こんなに広かったら大丈夫じゃない? というか僕はここで試しちゃってたけどね? はは!」
「……まぁ、気を付ければ……」
魔法を使った後だというのに随分と元気な大臣の言う通り、ここで軽ーーーく素振りすることにした。これ全部外に持っていくのも大変だし……
土の床にぶっ刺してあった一本を抜き取る。見た目よりも軽い感じがしてちょっとびっくりしたが、別に使えないわけでもなさそうだ。
「どんな感じ?」
「問題ないと思います。ただ、ちょっと軽いかもですね」
「へぇ。軽い方が良いんじゃないの?」
「いや、なんか……滑っちゃうんですよね。力が入りすぎて」
「まぁ、一通り終わったら意見聞かせてよ」
それを思いっきり振ってみる。
思った通り、止めたいところで止まらず、下に少しだけブレた。うーん、微妙。てか、親方の剣ってやっぱり凄かったんだなぁ。
そんな感じでそれからもこの部屋にあった剣を一々試していく。もちろん今までの剣と比べると圧倒的にダメダメだったが、それでもなんとかやっていけそうなのがちょっとだけあった。
試し終わったところでずっと俺の様子を見ていた大臣に声をかけてみる。
「これならなんとか……」
「……はは! なんとかなりそう? でも今までで一番大変になりそうだよ?」
「そう考えるとちょっと……」
「僕はまだ元気だからさ。最後に二本作ってみようかな? 僕と君の分をさ?」
「なら、俺の要望も出して良いですか?」
「もちろん! そもそもそういう話じゃなかったの?」
それから気になってたことをいくつか挙げていく。例えば剣の重たさだったり、柄の部分の持ちやすさやら何やら。
大臣も今までとは違い、ちゃんと話を聞いてくれた。一つのことを具体的に広げてくれる。マジで普段からこういう人だったらと何回か思った。
「それならやってみるよ……君も試しに一本やってみたら?」
「あ、そうですね。確かに……」
「……」
大臣が集中すると空中からいきなり二本の剣が出てきた。見た目はさっきまでのとほとんど変わらない。
その大臣の様子を見た後、自分でも試してみる。
……むむむむ……出てこい、剣!
出てきた剣はそこそこ形にはなっていたが、持った瞬間、あ、これゴミだ……と分かった。さっきまで偉そうに大臣にあーだこーだ言ってたのが少し恥ずかしくなる。
「君はどんな感じ?」
「……あー、まぁ、ダメですね」
「へぇ、そっか。ならこれは?」
大臣がさっき作ったやつを受け取る。うーん……悪くはないけどさぁ。やっぱり親方のやつと比べちゃうなぁ。ただこれでやっていくしかない。
一回向こうに戻るってのは無しかな? 俺だけ戻って親方から武器を貰うみたいな? でも今回はドラゴン居ないし、ちゃんと魔法使えるわけじゃないしな。
「とにかくそれで頑張ってよ。弓よりはマシでしょ? ははは!」
「やってみます。今から辞めるっていうのはナシですもんね……」
「辞めても良いんじゃない? ただここがどうなるかは分からないけどさ」
「……」
ため息が出そうになったが、あんまりしたくないので止めた。
剣を作る作業を終えたので大臣はいらない剣を片付ける。それも魔法を使って一瞬でどこかへ消し去る。なんでそんなに魔法使えるんだろ。
「大臣って魔法使っても疲れないんですか?」
「え? 疲れるよ? でもずっと使ってると大丈夫になってくるからさ」
「いつも魔法使ってたんですか? なにに?」
「別に? 目的とかは無かったけど、空いた時間とかはずっと魔法の練習してただけ。もしかしてそういうのはしてないの?」
「えー、そうですねぇ。魔法の練習はあんまり……」
「ははは! もっと考えた方が良いよ? 魔法って使えば使うだけ上手くなるんだからさ! ははは!」
その通りではあるんだよなぁ。結局弓使わないなら最初から魔法だけ練習しておけば良かったって思い始めてる。
俺より忙しいであろう大臣が俺より魔法使えるって地味にショックだ。しかもがっつり努力の部分で負けてるし。
言い訳ばっかり言ってる場合じゃねーな。これから俺も魔法を……でも疲れるんだよぉ……
俺って割とダメ人間なんだってことを知りながら、少し火に当たる。本当はこういう時に練習するべきなんだろうけど、なにしたら良いんだろ。
大臣は疲れ切ったのか、剣を近くに置いたまま寝ていた。
「カエデさんって何か欲しい物とかある?」
「え? 欲しい物……ですか?」
「うん」
「そうですね……実は荷物の中にクシが入ってたんですけど、それが無くなっちゃって……」
「クシね」
クシならなんとか作れそうだな。
頭の中にクシのイメージを強く持つ。それが空中からポンッと!
「あ、凄い!」
「ふぅ……これ使えそう?」
「はい! ありがとうございます!」
カエデさんは嬉しそうに髪を解き始めた。
……これが出来るなら元の世界のやつも作れそうだなぁ。なんでそれにもっと早く気付かなかったんだろ。
これから暇な時はそういうのやってみようかな。
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