125 燃やせば燃える
四人で外をブラブラ歩く。見慣れない街を歩くのは楽しいもんだ。ただこれから話すであろうことは楽しくない。流石に楽しくない。
「君がさぁ。剣とか使えたらいけそう?」
「え?……でも、流石にじゃないですか。あんなに一度に大量は無理です」
「良いとこまでは行けそう? 僕も剣にするからさ」
「どうですかね……」
「じゃあ! カエデくんも剣持つ? エラもさ」
「私は剣を使ったことがないので……それに良いんですか?」
「良いよ。だってそうしないとここが危ないんだからさ」
「でも……私は弓矢で良いですか?」
「もちろん。君なら十分力になってくれるだろうしね」
「……あのー、ちょっと良いですかねー?」
エラさんが口を開いて何かを切り出そうとしている。剣のことか? それとも…….
「私はここで待ってましょうか? そっちの方がやり易そうですし、なにより私が出来ることなんてどう考えてもないですしね」
「え? そんなわけなくない? それとも行きたくない?」
「いや、そんなことは無いんですけど……」
「荷物でもなんでも持ってくれたらそれで良いよ。別に君が戦えないのは最初っから知ってるからね。ははは!」
「……良いんですかねー?」
「そんなの君が一番分かってるはずでしょ? まぁ、万が一の時に一番最初に死ぬのは君だけどね! ははは!」
「はは……それなら行きますよ」
どうしてだ! 死ぬとか言わなければ良い人だったのにどうしてそんなこと言うんだ!
「そもそも死なないから。安心して良いよ」
大臣はそう言ってまた歩き始めた。多分、スティーが手伝ってくれるから死なないと言いたいんだろう。ホントに守ってくれるのかなぁ。
信頼してないわけじゃないけど、最近あんまり話してないから不安はある。
「話を戻すけどさぁ。僕が魔法かなんかで剣作ってみようと思うんだよねぇ。それが有れば戦えるでしょ?」
「ここでは剣とか使えるんですか?」
「使えるみたいだよ。誰も使わないけど」
大臣が作る剣。ちょっと不安だけど、無いよりはマシかな。魔法だったらちゃんとした形になってくれるんじゃない?
「それならよろしくお願いします。弓とかホントに苦手みたいで」
「はは! でもまだ足りなそうだよね。なにか案とかある?」
「うーん……」
案って言われてもなぁ。そもそもあんだけドラゴンが居る場所を壊すなんて絶対に無理だろ。
「森があれだけ荒れてたってことは、ドラゴンの巣の材料って木材であることが考えられますよね? ならどうにかして燃やせないですかね? そうすれば多くのドラゴンは閉じ込められて逃げることも出来ないと思います」
「それは良いね。ただそうなるとパニックになったドラゴンがここまで来るかも」
「でも、普通に壊そうとしてもここまで来る可能性は否定出来ないと思いますよ。前もってここのみなさんに相談しておく必要があるかもしれませんね」
「そうだね。いつかはやらないといけないことだし、説得しようとすれば出来そう」
「……街のみんなでドラゴンの巣を潰すってことですかね?」
「うん! 楽しくなってきたね! はは!」
出来そうになってきちゃった。そもそも巣を壊そうとしてるのはここの人たちの為なんだし、危険なことは俺たちがやるって言えば普通に手伝ってくれそうかも。
それに説得するのは大臣だからな。なんか知らんけど上手いこと話すんだろう。
「それなら決まりだね。細かいことは僕たちで決めていくから。多分、明後日ぐらいから本格的に始まるかも」
「明後日……」
「もしかして明日にでも行きたい?」
「いや、明後日にしてください……」
ホントに行くんだなぁ。嫌だ……でもやらないとここが大変なことになるし、なによりもう手を出しちゃったし。
それにしてもどうして大臣はこんなに乗り気なんだ? 元々戦うのは好きな人ではあるけど、それにしても今回は規模が大きすぎるし、そういうのも関係ない人?
考えてみれば大臣の行動の理由って良く分からんなぁ。
確か、「やりたい事をやる」っていうのは聞いた覚えがあるけど、ドラゴンの巣を壊したいってどんな願望?
「一旦家に戻ろうか? 試しに剣も作ってみたいしさ」
「あ、そうしますか? ご飯とかは?」
「適当に買って帰ればいいじゃん? あ、それともここで別れちゃう?」
「あぁ、じゃあ俺はご飯食べてから帰りますね」
「あ、私もそうしたいです!」
「エラは?」
「いやぁー。そこまでお腹が空いてるわけでもないので、私はお店で買って帰ることにしますかね。話さないといけないことも多いみたいですし」
「ならそういうことで。じゃあねー」
「また後で」
またこの二組に分かれることになった。やっぱり話し合いとかは向こうに任せた方が良いし……いや、でも任せちゃってるから色んなことをやることになってるんじゃないか? もうちょっと俺も会話に入ったほうが主導権を……あんまり関係なさそうだな。
「じゃあ、ちょっとお店入ってみようか」
「そうですね!……お金とかは大丈夫なんですかね……」
「多分、大丈夫だけど……じゃあ一応、前のお店にしておく? そこなら分かってくれるだろうしね」
「そうですね! なら行きましょう!」
勢いで手を繋がれた。いきなりでビビったが、悪い気がするわけもなかった。
読んでいただきありがとうございます!
よろしければ下の☆マークから評価などもよろしくお願いします!
ありがとうございました!