123 崩壊した森
ドラゴンの巣の場所は森の中を進んだ先にあるらしい。今、森をズンズン進んでいることからそう予想される。
背中には背負い慣れない弓、両手にはたっぷりのご飯が入ったカバン。
魔法しか戦力にならないので、もはや弓なんていらない気もするが、持ってないのも変なので背負う。
たまに現れるドラゴンは大臣とカエデさんが何事もないように退治していく。やっぱウメェ!
「ホントに合ってるんですかね。そこそこ歩いてますよね?」
「さぁね。でも森を抜けたら見えるんだって」
「へぇ」
俺たちがこの国に来た時は草原が広がっていた。でも、その反対側はフッサフサの森だ。生い茂っている。
重たい荷物を持つという任務を十分に果たしていたら森を抜けた。
「あったね」
「……ありましたね……」
噂には山を覆い尽くすほどだと聞いていた。マジだった。
遠くの方には山があったが、その山には無数のデコボコが出来ていた。それはパッと見、ただ木々が生えているだけだが、よく見るとやっぱちょっと違う。
山の手前の平地には崩壊した森がある。木が根っこだけを残して乱暴に引き裂かれてた。
草や枝が乱雑に放置されている。ドラゴン達が無理やり木を取ろうとした時のものだろう。
「……やっぱりやめます?」
「違うね」
「へぇ?」
「多分だけど、ドラゴン達はあの街を襲うことになるよ。遠くない未来に。だって、タグュールって人はこの景色のことなんて一つも言ってなかったでしょ?」
「まぁ、はい」
「近づいてるんだよ。間違いなくあのドラゴン達は街に近づいてる。これを見れば分かるんじゃない?」
大臣が指差したのは木の根っこ。素人ではあるけど、まだ壊されて間もない気もする。切り口が生きてるというかなんというか……
このまま行くとこの荒れた森が街まで続くってことかな。そうなるとやっぱりあれかぁ。
「でも、なんとかなるんじゃないですか? 木も自然に生えるでしょうし……」
「はは! 楽観的だね! まぁ、じゃあ目的を変えようよ。あそこのドラゴンを殺す。一匹でも多く。そうしたら少しはマシになるでしょ?」
「結局そうなるんですか?」
「じゃないといつかは街に来ちゃうじゃん。これから仲良くしようって国なんだから助けてあげようよ? はは!」
「確かに……ちょっとなら……」
「ならもう行こう。一匹でも良いんだからさ」
大臣はその後二人にも相談に行った。きっと上手いこと言ってドラゴンの巣に行かせるんだろうなぁ。マジで口が上手いの羨ましい。
やっぱり思った通りでみんな前に進んでいく。俺は最後尾をトボトボ歩いた。
(お前はいつもこうだな)
「なんでだろうね」
(お前自身がそれを望んでいるんじゃないか?)
「それはないでしょ……てか、ルドリーは俺が死んだらマズいんでしょ? 止めないの?」
(我の力をお前が使えば問題ない)
「そんなに強いの? てか、契約もしないで死んじゃったら?」
(そんな状況になってもしないならこれから先もないだろうな)
確かに。死にかけても契約出来なかったらもう絶望的に俺たち合わないってことだよな。
そうなったらルドリー的にも俺は要らないから死んでも良いってことか。そういうとこじゃないか? よく分からないけど。
恐らく大臣はあの国がどうなろうとどうでも良いと思ってる。多分。でもそれで俺を説得出来ると思ったから話に出してきた。そして俺は説得された。
やっぱ怖い人だなぁ。これでちゃんとヘルミーさんとかの事考えてたら申し訳ない。
「増えてきたね。そろそろ始める?」
「ここからなら狙えると思います。始めましょう」
大臣とカエデさんが二人で弓矢の準備を始めた。俺とエラさんはどうせ届かないのでボーッとしている。無駄に矢を使うよりは良いだろうし。
「エラさんって魔法使えるんだっけ?」
「私ですか? 使えるか使えないかであれば使えます。でもそういう意図の質問じゃないですよね?」
「……」
久しぶり! こういうのも懐かしいなぁ。てか、昨日から普通に顔出してるけどいいの?
「あ、そういえば顔の布は?」
「それならもう辞めました。ここに来てどうでも良くなりましたね。みんな鼻が高いので私が気にする必要もないです」
「へぇ。そうなんだぁ……」
「最初の質問はあれで終わって良かったんですか? 本来聞きたいことはまだ聞けてないんじゃないですか?」
「え?……じゃあ……ドラゴンとかは倒せるの? 魔法で」
「それは無理ですね。そこまで上達してないです」
結局、無理なんかい! なら俺が守らないとか。役割が出来た感があっていいな。
大臣達は準備が出来たのか矢を放っている。時間差で遠くから物音が聞こえてきたので多分当たってる。しばらくの間はそうしていた。
エラさんと久々にちゃんと話していると大臣とカエデさんがこっちに来た。
「ちょっとヤバそうだから今日は戻ろうか。ね?」
「へ?……あ」
「すみません……もっと早く終わりにしてれば……」
「いや、とりあえず今は逃げようか? ははは!」
遠くの巣の方からツバメかスズメみたいに黒い群れがやってくる。百は居るかなぁ。そりゃあんだけデカかったらそれぐらいは居るかぁ。
切り株に置いていたご飯を持って、来た道を一生懸命戻ることにした。これ、巣の中に入るの絶対無理だわ。
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