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121 炭酸水と両親の記憶

 

 受付でシュワシュワの炭酸を買った。色が薄いコーラみたいで、何かしらの味がついてるらしい。

 どうやらこの国のお風呂上がりの定番はこれみたいで、様々な味が店に並んでいた。あんまり違いも分からないので、二人とも適当に同じものを買った。

 木のグラスを(かたむ)けてゴクッと飲む。懐かしい炭酸は思ったよりハードで、喉がイテェ……

 喉がイテェが味は美味しい。見た目はコーラっぽいが味は美味しいサイダーだ。


「これスゴイ……あ、そういえばカエデさんって炭酸飲んだことある?」

「昔……昔に飲んだような気がします」

「へぇ。どこに炭酸水なんてあるんだろう。湧いて出たとか?」

「…………たまにあるみたいです。森の中に」


 ん? なんかスゲェ沈黙が長かったような気も。まぁ、記憶を思い返してたんだろう。てか、森の中にあるって何? もっと詳しく聞いても良いかな……


「あ、あっちに炭酸の井戸があるみたいですよ? 見に行ってみません?」

「え? 井戸?」


 カエデさんに付いていく形で井戸に向かう。無加工で炭酸があるの? てか、炭酸水って自然にあるもの?

 矢印の看板には井戸の場所が書かれていた。

そこに向かうまでの道、早歩きだからか、伸ばせた体からいつもより汗が出てくる。


「これかな?」

「そー……みたいですねぇ……あ、シュワシュワしてますよ?」

「あ、ホントだ」


 あんまり人のいない、木に囲まれた場所にそれはあった。石で出来た井戸の横に縄で繋がれた木のバケツが置かれている。これって勝手に飲んでも……


「ご自由に……って書いてあるね」

「飲んでみます? さっきと違うんですかね?」

「味が付いてなさそう……まぁ、せっかくだし飲んでみるか!」


 バケツを井戸に投げ込む。シュワシュワという音が一気に強くなって、バケツを飲み込んでるみたいだ。

 しっかり炭酸水が入ったバケツを縄で引き上げる。ちょっと重いなぁ。


「……よっし! 重かったぁ……」

「飲んでみましょう?」


 バケツに口が付かないように少し高いところから喉に炭酸水を送る。

 さっきよりも炭酸がキツくて口と中で爆発が起こったみたいだ。ぼんやりとしてた意識もバッチリ回復した……でもイテェ!!


「あぁ……これ、もしかしたらこのまま飲むもんじゃないかもぉ……飲む?」

「……はい」


 バケツを同じように高いところから傾ける。流れてきた炭酸水を口の中に入れた瞬間、目がパッチリと開いていた。そうなるよねー。


「飲んだことあります!……思い出しました!」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「……お父さんとお母さんと、一緒に……」


「え?」とか言おうと思ったけど、随分悲しそうな顔になったので辞めておいた。

 そういえばカエデさんって両親生きてらっしゃるのかな……まぁ、人には色々あるってことにしとこう。深く詮索(せんさく)するようなものでも……


「みんなで一緒に狩りに行くことも多かったんです。両親とも今の私よりずっと狩りが上手かったので、ドンドン奥へと進んで行って……」

「……うん」

「そこで見つけたんです。シュワシュワした水が地面から湧いてるのを……あそこはどこだったのかな」


 考え込んだカエデさん。記憶を辿ってみんなで歩いた場所を思い出しているのかな。


「……今度、探してみる? 村に戻った時とかに」

「え? 良いんですか?」

「もちろん! あっちでもこれ飲みたいからさ。はは」

「ありがとうございます!」


 さっきまで悩んでいたカエデさんが満面の笑みになる。こっちを見る。

 ……あぁ、なんか幸せやな。はは。


「もう戻ってみる? みんな待ってるかもだし」

「そうですね!」


 二人でちょっと迷いながら夕陽色をした温泉まで戻る。

 ここからの道もちょっと曖昧(あいまい)だが、ほのかな記憶を頼りに最初の白濁(はくだく)した温泉を目指した。道中、空がめちゃくちゃ晴れてるせいで暑かった。

 汗が吹き出してきて、シャワーでも浴びたい気分になる。流石にそういうのはなさそうだよなぁ。


「……居ないね」

「居ないですね……あっちの方に行ったんですかね?」

「多分。、もう帰っちゃってることなんてないだろうし……多分」


 そこそこ探したのにこの場所に三人は見つからなかった。という訳でまだ行ってない道に行くことにした。

 そもそも三人揃って行動してるかも分からんしなぁ。

 もしかしたら大臣はもうすでに帰ってるかもしれない。流石にそれはないと思いたいが……


「ここはお湯が緑色ですね……匂いもスッキリとしてる……」

「ちょっと興味あるけど……いや、軽く入る?」

「うーん……とりあえず今はみんなを見つけましょ?」

「確かに。そうだね」


 それからもカラフルな温泉達をスルーして、みんなを探す。それにしてもどれだけ大きいんだこの場所は! ホントに温泉が本体って感じだ。


「もしかしたら帰ってるのかもね。受付の人に聞いてみよっか。見てるかもしれないし」

「そうですね……」


 そんな感じできた道を戻っていると普通に三人とも居た。三人も俺たちを探していたみたいで、目が合った時に驚いている様子だった。


「あ、見つかったよ」

「はぁ……良かったぁ。それじゃあ行きましょ?」


 三人の所に早足で向かった。




読んでいただきありがとうございました!


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ありがとうございます!

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