表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/334

118 中華的蒸料理

 

 晴れている。今は布団の中にいる。でも外が晴れているということを理解した。天井を叩く雨音が聞こえてこないから。

 いや、(くも)りもあるのか? でも晴れてる気がする。見てみないと分からんがな。


 布団から出て、窓を探す。何故か見つからなかったので、玄関を開けて外を確認した。晴れだ。ヤッホー……


「おはようございます」


 焚火の部屋にはみんなが揃っていた。挨拶をするとそれぞれが返してくれる。こういうのはなぜかちょっと苦手だ。別に理由なんてないけど。

 俺が火の前に座ると、ヘルミーが口を開いた。


「今日はここを案内させて頂きます。準備が整いましたら出発しましょう」

「あぁ、ありがとうございます……」

「僕たちはみんな準備出来てるよ? つまり後は君だけ」

「あぁ……うーーーん。もうちょっとだけゆっくりしても……」

「もちろんです。朝ごはんは出先(でさき)で食べましょう」


 ゆっくりしてたいけど、こんな空気の中でゆっくり出来るはずもない。やっぱり行った方が良かったかも……でもちょっと言い出すの恥ずかしいな。でも言わないのもアレだし……


「……あ、もう行きましょうか?」

「え? もう良いんですか?」

「すみません……もう準備出来ました……」

「ははは!」


 大臣が笑い出した。ホントーーーに性格悪過ぎるだろ……。

 別に用意する物もないので普通に立ち上がり、玄関へ向かう。昨日ヘルミーさんに渡したコインの袋が置いてある。これ今あげちゃおうかな。


「あ、これお世話になってるので……」

「え? 良いんですか?」

「いやぁ、色々気を遣ってくれて助かります。そのお礼……っていうとちょっと変な感じですけど……」

「それでは頂きます。ありがとうございますね」


 カエデさんの方をチラッと見ると驚きつつも、納得してくれてる感じがしたので良いだろう。本当は相談してからの方がいいけど。そもそも納得してくれてるのかも分からないけど。


 晴れた街には人が沢山いた。雨の音しか聞こえなかった街に、人のザワザワという音が溢れる。まさに快晴と言った天気はその人達の顔を照らした。

 あぁ……なんかカッケェ人とか美人とかばっかりだ。疎外感(そがいかん)が凄い……


「それではご案内しますね? ついてきてください」


 ヘルミーさんについていきながら建物や街の様子を見てみる。

 まず思うのは色が濃い。最初に来た時に雨の中でも目立つように明るい色にしているのかなと考えた事があったが、おそらくそうではない。

 太陽光に反射して、今までも奇抜だった色がさらに奇抜になっている。

 街全体がギラギラしていた。

 落ち着くことが出来なくなり、自然とワクワクする。やっと違う国に来たんだって実感が湧いてきた。

 雨で落ち込んでた気分が一気に上がる。そういう目的なのかな?


 ワクワクしてきたせいか汗をかいてきた……いや、普通になんか暑くなってきたぞ? それに空気がベットリとしてきたような……

 空に白い湯気が上がっていた。あぁ、これが噂の蒸し料理かぁ。


「こちらでご飯を食べましょう? いいですか?」


 断る理由もないのでみんなで首を縦に振る。

 お店の中に入ると湯気と共にお肉の香りがやってきた。それがこの建物の中に充満している……お腹が空いてきた……

 店内は意外と質素で落ち着いた雰囲気だった。ここならゆっくり出来そうだな。


「こちらで頼んでしまっても? なにか食べれないものが有れば……」

「みんなある? 僕はないけど」

「俺もないですね」

「基本的にはないですね」

「私もありません」

「なら、すみませーん」


 片手を上げて店員さんを呼ぶ。中々繁盛(はんじょう)していて、声をかけないと気付いてもらえないほどだった。


「はぁいはぁーい」

「それでは巻龍(まきりゅー)を人数分お願いします」

「あぁ! ヘェルミィーさんってことはアンタらが例の? ならもっと頼んでいきなよぉ? 折角なんだしさぁ……とは言っても分からないかぁ! なら色々美味しいの持ってくるからねぇ!」


 元気な店員さんだ。

 てか、ここの人ってなんか間延び? したような。語尾が伸びてく感じの話し方するんだな。ハリォードさんもそんな喋り方だったよね。


 しばらく待っていると店員さんが複数人やってきて、テーブルにご飯を置いていく。

 並べられた物の全て大きな笹の葉みたいなのに包まれていたので、もしかすると全部蒸し料理かもしれない。そんなに蒸したい?


「どうぞ。遠慮なさらずに」

「なら、いただきまーす」


 大臣が遠慮なさらずに巻かれた笹をとっていく。出てきたのは春巻きみたいな小籠包とか、シンプルに肉を蒸したやつとか、なんか中華っぽい。

 蒸し料理っていうとそうなるのかな。まぁなんでも良いや! 食べよう!


「これが巻龍です。食べてみてください」


 ヘルミーさんが俺たちの前に結構大きな笹の葉を置いた。中身を見るとお米だ。肉の匂いがする米。

 両手で持って口に運ぶ。これは……おにぎりだ。ただのデカいおにぎり……肉風味のおにぎり……

 疑問に思いつつもう一口食べると中からお肉とか野菜が肉汁と一緒に出てくる。美味いかもしれん。でもこれだけで満腹になるぞ。


 そんな感じでお腹いっぱい食べた。お腹いっぱい過ぎて、困っちゃうぐらい食べた。ちなみに全部美味しかった。それこそ巻龍は元の世界の料理と比べても美味しい。なにが巻きなのかは知らないけど。


「食後のお茶と果物です」


 店員さんから貰った焼肉屋みたいなおまけをつまみながら、動けるようになるまでゆっくりした。



読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークからの評価などもよろしくお願いします!

ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ