117 ドラゴンの巣に行こう
報酬はすぐに貰えた。セントラルだと回収を待つことになるので時間がかかったが、ここでは自分で持ってくるのですぐに査定してくれる。ここは良いとこかもしれない。
小さな袋にパンパンに入ったコインは多いのか少ないのかまだ分からない。でも体感だとそこそこ貰ったような気もする。
しかし人通りが少ない。ここを通ることも今まで何回かあったが、まともに人に会ってない気がする。雨だから? それともそういう国民性?
明日晴れた時にどうかだな。でもヘルミーさんは社交的な方だったし、特別人を避けてるような雰囲気もないし、やっぱ雨だからか?
「人少ないね」
「そうですね。雨だからでしょうか?」
「かもね。てか、こんなにびしょ濡れになってまで外出たくないか、普通は」
「そうですねぇ」
そうですわねぇ。やっぱ雨って不便だな。元の世界でもそうだったけど雨ってダルい。考えてみりゃ傘もそんな大したもんじゃなかったし、水に濡れたくなかったら外に出ないのが一番だな。
ずっと降ってるならそれじゃダメだろうけど、別に止むこともあるみたいだしね。明日が楽しみになってきたな。
ヘルミーさんの家に着いたので、コンコンッとノックする。勝手に入ってはいけない。流石にそれはヤバい。
「あ、お疲れ様です」
「あの、これはどこにおけば……」
「私が預かります」
それを手渡しした時にちょっと目が開いたような気がした。まさか盗むつもりか?
「やっぱりお上手なんですね。雨の中これだけ貰えるのはすごいですよ」
「あぁ、やっぱりカエデさん凄いんだね」
「いやいや、アキラさんも一緒だったじゃないですか?」
「えー、なんもしてない……」
事はない。何もしてない訳ではないから謙遜しすぎるのはやめとこう。
「まぁ、二人とも上手ってことでいいか!」
「そうですね!」
そんな感じです。
その後は焚火の部屋は行き、服を乾かした。
何故か大臣達は居なかったので……いや、考えてみればヘルミーさんは居たじゃん。俺が居ない間になんかあったんかな?
聞いてみようかと思った。でも眠かったし寝た。魔法を使ったから眠たいのだ。
目を覚ますと目の前には大臣とこの前の人が居た。なんか話してるなぁ。
「俺はぁ知らないなぁ。そうなるともしかしたら違うのかもなぁ」
「そう? それなら良いや……あ、起きたんだ」
「あ、おはようございます……こんにちは」
確か……ハリォード? さんにも声をかける。軽く会釈をしてくれた後、大臣との話に戻った。
「アンタはここじゃないかもなぁ。なんかなぁ」
「ははは! それならそれで良いよ。それにまだ決まったわけじゃないしね?」
「あかるいやつで良かったよ。へへ」
ここじゃない? なにが? なんの話をしてんだ?
「お連れの人も目覚めたようだしなぁ。俺は帰るとするよぉ、また聞きたいことがあったらきてなぁ」
「ははは! ならまた行くよ。その時はよろしく」
俺が目覚めたせいで会話が終わってしまった。まぁ、帰る機会を見計らっていたと考えよう。
大臣はその場から立ち上がってお見送りに出た。あれ? そんなまともな人だった?
大臣のイメージはいつもぼんやりしてる。本当はどんな人なんだろう。
「あ、お疲れ様です」
「どうも。ドラゴン狩れた?」
「まぁ、一応」
「それなら良かった。でさ、話すことがあるんだけど……」
「え? なんですか?」
次の言葉を言う前にニタッ笑った。これは嫌なことを言われるな。めんどい系のやつ。
「ドラゴンの巣の場所が分かったからさ、今回の旅で行っちゃう? 出来るだけ早く。ね?」
「うーん。ホントに行くんですかぁ?」
「行くよ。ここまで来たんだからいいじゃん?」
ここまでってどこまでだ。そこまで深みに入り込んだつもりはないぞ。
「心配してるの? 大丈夫だよ! スティーもいるしさ? はは!」
「でも、助けてくれますか? 最近見ないし……」
「いつでも近くに居るは居るんだよ。話しかけてこないだけでね」
「……スティーになんかしたんですか? 俺が初めてあった時と全然変わってるし」
「ははは……ふっはは! 僕が、スティー君に勝てると思うの? ははは! 僕が彼になにを出来るの? ははは!」
「……」
うざぁ。今マジで殺意が目覚めかけたわ。危ない危ない……
でも、実際にスティーの性格変わってるでしょ。こんな人の近くにいたからおかしくなっちゃったのかな。
「とにかくさ。ドラゴンの巣には行こうよ。ね?」
「……えー、本当ですか?」
「そんなこと言っときながらいつも行くじゃん! 一応了解だけしておいてよ」
うん。正解。もう抵抗するのやめよう。なんか俺がドラゴンの巣に行ってる姿がいくらでも想像できるわ。
「行きますよ。まぁ、ドラゴンの巣。楽しみにしてますね……」
「ふふ。僕も楽しみにしてるからさ? ははは!」
「みんなには許可……あれ? エラさんとカエデさんは?」
「えー……今気付いたの? ちょっとヤバくない?」
ヤバくない。よ。多分。
「挨拶へ行ったんだって。商人の長に」
「ここにもそんな感じの人居るんですね」
「買い物とかタダで出来るようになるらしいよ。ドラゴン狩りとか無駄だったね」
「えーーー……寒かったのに……」
「まぁ、僕たちが他国から来たってことを信じてくれたってことじゃない? 別に悲観するようなことでもないけどね」
「確かに……」
……あのお金はヘルミーさんに渡そう。お世話になってるし。
改めて考えると俺、この旅に必要か? 一番何もしてない説がある。
いやぁ、帰りたいねぇ。ねーー。
火に当たりながら自分の存在価値について考えていた。
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