116 雨が降ってもドラゴン狩り
朝も雨。また雨。
雨だけど今日は頑張らないと。このまま雨が上がるのを待ってたらいつまで経ってもセントラルに帰れないし。
布団から這い出て周りを見るともうすでにみんな居なかった。俺が最後か。
記憶を辿って焚火の部屋までいく。なんだか体が冷えてる。ここはセントラルより寒かった。
しかし焚火の熱気が廊下まで来ていて、そこを歩いていると暖かくなってきた。てかこの家クソ広いけどあの人何者? 偉い人ではありそう。
「あ、おはようございます」
「遅かったね。もう彼女は準備できてるみたいだよ?」
「おはようございます!」
カエデさんが真っ直ぐな目でこっちをみてくる。眠気とかは全くなさそうだ。いつ起きたんだ。
いや、準備ってなんの準備だ? 今日なんか予定あったっけ?…………あぁ、ドラゴン狩りに行くんだぁ。ダルッッソトサムソ〜。
「もうちょっとだけ待って? まだ眠い……」
「もちろん待ちます! あ、そういえばご飯も用意してくれたみたいですよ?」
「ホントだ。食べちゃお」
部屋の土から木に変わる部分にお皿が置かれていた。上にはドラーゴンの肉。本当にドラゴンドラゴンドラゴンって感じだ。は?
「そういえばあの人って何者なんですか?」
「ん? ここの王様だって。正確にはちょっと違うらしいけどね」
「あ、一番偉い人?」
「へぇ? うん。そうだよ?」
「へぇ。そうなんですねぇ」
知ってしまえばもう興味はない。ちょっと淡白な返事になってしまったが、なんとなくそんな感じの人だろうと思ってたから驚きもしなかった。
肉にかぶりつきながら、ボーッと火を見る。さっきまでの寒さは消え、今はちょっと暑い。
俺はセントラルに帰りたいと思っている。
「……食べ終わったからもう行こうよ。ちょっと待ってて」
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ?」
「いや、まぁ、いいからさ」
この世界に来たときはあんまり感じなかったけど、今めちゃくちゃホームシックだ。家に帰りたい……帰りたいつっても元の世界じゃないけども。
パクパクパクパクご飯を食べたので、外に出ることになった。本当はもうちょっとじっとしていたかったが、しょうがないから行こう。そんなこと言ってたらなにも始まらないし。
「それじゃ、行ってきますね。大臣とエラさんも頑張ってください」
「はーい。私にはドラゴン狩りとか無理なのでよろしくお願いしますねー」
「はは。気を付けてね? 巣も近くにあるらしいしさ?」
あんまり遠く行き過ぎないようにするか。さっき歩いた廊下をまた歩いて玄関へ向かう。立て掛けた弓矢を背負って、外に出た。やっぱ雨だ。
「傘とかないのかな。あった方が便利なのにね」
「そうなんですかね。でもすぐ壊れちゃいますよ?」
「ここの傘ってそんなんだっけ?」
「はい。ずっと外にいるとそれだけで穴が空いちゃうみたいですね。私は使ったこととかないんですけど……」
「そんなに脆いの? マジか」
そこの技術はまだまだなんだな。頑張ればちゃんとした傘も作れそうだけどなぁ。特にこの国だとめちゃくちゃ使えるじゃん。わざわざ服とか乾かすの面倒だろうし。
そんな感じのことを考えつつ、街の外に出てドラゴンを探す。どこにいるのかなぁ。
雨だからちょっと視界が悪い。もしかしたら時間がかかるかもしれないな。
「ドラゴンいるかな?」
「うーん。ちょっとここには居ないかもしれないですね。もっと草原の方へ行ってみますか?」
「そこの方が見晴らし良さそうだしね」
ちょっとした森を抜けて前も見た大きな草原に出る。広ーくてどこまで続いてるのか分からない。晴れたらどこまで大きな草原なのか分かるのかな。
「ここにも居ませんね。どこだろ……」
「うーん。視界が良くないなぁ」
とは言ってもどうしようもない。魔法でどうにか出来ないことも無さそうだけど、それをしたらもう今日は寝るだけだ。
雨に打たれながら待っていると、遠くの方にドラゴンの群れが見えた。
「ちょっと遠すぎるかな」
「そうですね……当たったとしても取りに行けるか分かりません……」
「あ、そっか。ここは自分達で取りに行くのか」
「はい。今朝教えて頂きました」
「なるほど……」
めんどくさいなぁ。そうなるとこの草原で遠くのドラゴンを狩るよりも森の中に隠れてるやつを探した方が早いとかある?
「あの……一度森の中に戻りませんか?」
「そうだね。ここでやっても意味なさそう」
同じこと考えてたようですぐに引き返す。
慣れない土地でドラゴンがよく居る場所も分からない中だ。手探りでやっていくしかない……
それからしばらく森の中を進んでいるとガサガサという普通ではない大きな音が聞こえてきた。
カエデさんは素早く弓を構える。俺も一応は構えておいた。
音の先に居たのはドラゴンだった。しかも群れ。
俺はそれに狙いを定め、カエデさんと同じタイミングで矢を放つ。当たらんかったけどね。打った瞬間から当たらないことは分かったが、放った。
カエデさんの矢は当たっていたが、いつもなら一発で仕留めるところが今日は上手くいっていない。
「……雨でちょっとズレましたね。調節します」
こちらに気付いた群れの一部が近づいてきた。三匹のドラゴンはノッソノッソと地を這う。
これ当たんなかったから魔法使お。と思いながら放った弓矢は敵の頭にコツンと当たる。勢いが足りなくてダメージを与えられなかったみたいだ。当たりはしたけどな。
「ちょっと離れる?」
「そうですね。いや、でもなんとかなります」
その言葉の後の矢で一匹は動かなくなる。なら俺もと思い、魔法を使って一匹をぶん殴る。
残りの一匹もカエデさんがやってくれた。やったー。
「奥にもまだ居ますね。一度離れますか?」
「そうしよっか」
剣を持ってたらどこまでも突っ込んでいっただろうけど、持ってないしカエデさんの言うことに従おう。
時間が経ってからまた戻ると群れは居なくなり、三体の死体が残されていた。
俺は二体を引っ張りながら、街へと戻った。
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