115 ツギハギ天然パーマ
ガタガタという音で起きた。
焚火の上に石で作られた台が設置され、そこにヘルミーさんがお鍋を置こうとしている。
「危ないのでこれは触らないでくださいね?」
「あ、はい……これなんですか?」
「スープです。パンも持ってくるのでちょっと待っててください」
鍋の中を覗き込んでみるとオニオンスープみたいな香りと見た目だ。オレンジがかった茶色のスープの中に薄く切られた謎の野菜が浮いている。
半透明な野菜は玉ねぎっぽかったが、繊維の感じがちょっと違うような気もした。
ヘルミーさんはカッタそうなパンを持ってきた。固そうなパンはおそらくスープに浸して食べるんだろう。もっと食文化が違っているのかと思っていたけど、そこまで変わらないみたいだ。
「どうぞお食べください」
ガツガツガツガツ食事を食べた。いや、ちゃんとそこそこ礼儀正しく食べた。
オニオンスープの玉ねぎは思ったよりシャキシャキしていて美味かった。ちょっと薄かったけど。
「すみません。ごちそうさまでした」
「もうお休みになられますか?」
「あ、そうします」
もう全身乾き切っていた。それに天井を叩く水の音で雨が上がってないことも分かった。どうせ出来ることなんて何もないならもう寝てしまおう。さっき寝たばっかりではあるが、この旅の疲れを考えるとまだまだ寝足りない。
このまま火に当たりながらまどろんでいるのもいいけど、もうすでに服の下に汗をかき始めている。
普通に布団に入って寝る方が安眠できそうだと思い立ち上がる。みんなも同じようなタイミングで起き上がった。
「俺たちがドラゴン探してる時、どんな話してたんですか?」
「ん? 別に大した話はしてないよ?」
「まぁ、それなら……あ、そういえばお金とかどうでした?」
「僕たちの国と変わらないよ。ドラゴンを倒したら貰える。それだけ」
「なら、ここで稼いだりとかも出来るんですかね? 明日とか行ってみます?」
「君たち二人で行って来なよ。僕は調べたいことあるし」
「私もですか?」
「そうだよ? だって彼、弓矢ヘッタクソじゃん。ははは!」
「……ははは……」
ヘッタクソだけどね。てか、ここに来てもやることはドラゴン狩りかい。せっかく新しいとこに来たんだから珍しいこととかやりたいなぁ。
廊下を歩いていても中々寝室に着かない。結構この家も広いんだなぁ。大臣にまだまだ聞きたいことがあったので、歩きながら雑談を続けた。
「雨とか止むんですか? それは聞いてないですか?」
「普通に止むらしいよ。今までの感じだと明後日あたりは晴れだって」
「へぇ」
「その日はみんなでブラブラ歩こうよ。君たちが稼いだお金で買い物しよ?はは」
「まぁ、狩れたらですけど」
「カエデくんが居るなら大丈夫でしょ?」
「こちらでゆっくりしてくださいね」
「ありがとうございます」
そんな感じの会話をしていると、玄関の方からドンドンッと音がしてきた。おそらく扉を叩いている音だ。
「入るぞぉ」
ちょっと早歩きで玄関に向かうとそこには天然パーマの三十代くらいだろうと思われる男がいる。俺よりも年上だ。多分。
ずぶ濡れ、とまではいかないくらいに全身が濡れている。
ツギハギだらけの服の水を絞りながら目を凝らして俺たちを見る。
「おぉ、アンタたちが噂の?」
「わざわざ雨の中来たんですか?」
「あのぉ、いやぁ、この様子だと明日も雨だろぉ? だから待ち切れなくてさぁ」
「どなたですか?」
「俺はハリォード。アンタらは?」
一人一人名前を名乗っていくと、ヘルミーさんの時と似たような反応をされる。マジでそれ本名なの? みたいな感じで。
「はらぁ〜。そりゃあれだなぁ。見た目は変わらねぇのになぁ」
「まだ火が残ってるんですが……どうしますか?」
「大丈夫大丈夫! すぐにかえるからさ!」
なんだか身振り手振りが多い騒がしい人だな。声もちょっと大きいし。
「で、話を聞かせてくれるか? まずはどうやってここに来たんだぁ?」
「すみません……少し付き合ってもらってもよろしいですか?」
「ははは。もちろんだよ。僕も話したい気分だし」
俺は眠りたい気分だけど。チラッと見ると玄関の外は大分真っ暗になっている。
月明かりや星明かりとかも雨空のせいで見えないので、セントラールよりも暗い。こんな中よく来ようと思ったな。
「君たちはどうする? 話す?」
「俺はいいですかね……眠たいですし」
「まぁ、一人いりゃいいよぉ。そんじゃぁよろしくな。えっとぉシューリィーさん」
「はは。スューリだよ。僕の名前はスューリ…………あっははは! ははは!」
「おぉ? なんでそんなに笑ってんだぁ?」
確かにちょっと名前を変な感じで呼ばれると面白いな。向こうに悪気がないからだろうけど。
しかし笑い過ぎじゃないか? お腹抱えて笑ってるけどそんなに面白かった?
「みなさんはお休みになられますよね? こちらへ」
そんな大臣はおいといてヘルミーさんに着いていく。
案内された先には敷布団があった。そこそこ感覚も空いているのでなんか安心した。
適当に寝支度を済ませて布団に入る。慣れない場所で寝れるか不安だったが、ちょっと魔法を使うと信じられないくらい眠気がきたので良かった。マジで便利だぁー……
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