114 テレパシ〜
流石にドラゴン達を探しに行くことはせずにそのまま街に戻る。橋をかけてもらう時のために小石は道中で拾っておいた。
「いやぁ、困ったね。帰れなくなっちゃった」
「そうですね……でも、魔法とかを使えばなんとか……」
「中々骨が折れそうな感じだなぁ。とにかくみんなと相談してみないとかな」
ヘルミーさんの家の場所を思い出しながら、二人で雨の中ずぶ濡れになりながら歩いた。
「あの、お邪魔します」
「お疲れ様でした。落とし物は見つかりましたか?」
「あぁ、それが……見つからなくて……」
「それはそれは……この雨が止めばきっと見つかりますよ」
「ありがとうございます」
案内されてまた焚火の部屋へと向かう。残った二人はそこで横になって眠っていたが、俺たちが来ると大臣が目をパチっと開けた。
「どうだった?」
「いやぁ……見つからなくて」
「へぇ……また後で話を聞かせてよ。今はゆっくり休んだら?」
「まぁ、はい……」
焚火に当たりながら靴を脱ぐ。おそらくもっと詳しく話を聞きたいと思ってる大臣だが、ヘルミーさんが居ので躊躇っているようだ。
俺も早いとこ話してしまいたい。どうしようか?
試しに魔法で話しかけてみようかな。テレパシーみたいに。あーあー、聞こえてますかぁ。
(聴こえるよ。すごいねこれ)
「あ、出来ちゃった……」
「どうかされました?」
「あぁぁ、独り言です……」
びっくりして声が出てしまった。これじゃあテレパシーで話しかけた意味がない。
(で、何かトラブルでもあった?)
(ドラゴンの巣って分かります? そこにドラゴンがみんな行っちゃったらしいんです)
(ドラゴンの巣ねぇ。元々ここに住んでたドラゴンじゃなくても誘い出されちゃうとなると、もしかしたら僕たちにも何かしらの影響があるのかもしれない? どうかな? 考えすぎ?)
(えー、どうでしょ?……でもこれからどうしますか? 徒歩で帰るわけにもいかなくないですか?)
(ドラゴンはまた見つければいいだけなんだけどさ、カバンの中身がちょっと惜しいよね……ちょっと巣に行ってみる? どう?)
(でも女王みたいなドラゴンもいるみたいですよ? デカいドラゴン)
(デカいのなら沢山倒してきたじゃない? 今更?)
(まともな武器もないし……)
(魔法があるじゃん。もう使い慣れてきたでしょ? こんなことも出来るようになったんだしさ?)
大臣が寝っ転がりながらこちらを見て笑っている。クッソー……確かに魔法にも慣れてきちゃったよ。
いや、普通に考えて国を見つけたんだからもう帰れば良くない? 魔法で帰ろうよ……なんでわざわざここに来てまでドラゴンを狩らないといけないんだ……
(楽しみにしてるから。明日になったらみんなで話し合おうね?)
(……はい……)
今までの経験から分かるがこれは間違いなくドラゴンを倒すことになる。いやぁ……マジで無理だろ……どうすんだろ?
魔法でなんとかするとか言ってもやっぱり魔法使うとスゲー疲れるし、現に今あんだけしかテレパシー使ってないのにクソ眠い。このまま火に当たりながら寝ようかなぁ。
お世話になってる身でアレだけどお腹も空いてきちゃった。あのちょっとしたご飯じゃ足りないよ!
まだまだ保存食いっぱい残ってたのに……行くならカバン置いていってくれよ……
「あの、みなさんはご飯、いつ頃食べますか?」
「え? あぁ、いつでも……いや、実はもうお腹空いてて……」
「ふふ。なら良かったです。これからご飯作るので待っててくださいね?」
「あ、手伝いますよ」
「ははは。君はまだ服が乾き切ってないじゃん。僕がやっておくからゆっくりしてな?」
「すみません……じゃあ、ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず。私もこんな出会いがあるとは思ってもみなくてワクワクしてるんです」
ヘルミーさんと大臣が二人でテクテクと歩いていく。エラさんはずっと寝てる、カエデさんは火に手をかざして暖かくしている。暇そうだし話しかけようかなり
「優しい人で良かったよね。いきなり他国の人に会ったのにこんなによくしてくれて」
「そうですね……素敵な方だと思います」
「うーん。あの、もしかしたらこれからドラゴンの巣のとこに行くことになるかもしれない。実はさっき大臣と……なんて言うんだろう魔法で会話してたんだけど」
「そうなんですか?……」
「細かいことはまた話すらしいからその時にみんなで決めるみたいだよ」
話し合いで決めるっていってもほとんど行くことは確定みたいなもんだからな。だって大臣だし。
カエデさんとか大臣は大丈夫だろうけど、俺とエラさんは本当に大丈夫なのか? 弓矢なんて使えないぞ?
あ……そういえば親方に貰ったナイフ。カバンに入れたままだ。終わった……
「ちょっと寝てても良い? 魔法使ったら疲れちゃって」
「もちろんです! おやすみなさい……」
「おやすみー……」
カエデさんは微笑んでから少しだけ俺に近づいた。しばらくの間、火をぼんやりと見ていた。
その内意識が遠のく感覚があって、眠れそうな感じになってきた。
色々あったなぁ。とか振り返る暇もなく、眠りについた。
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