113 ドラゴンの巣にドラゴン
先に服が乾いたヘルミーさんは、俺たちのために軽いご飯を用意してくれた。
ここでも出されたのはドラゴンだ。あぁ、別の物が食べれると期待したのに……あ、そういえば。
「これありがとうございます……あの、ちょっと聞いても良いですか?」
「私ですか? なんでも聞いてください」
「この国では蒸し料理が有名みたいな話を聞いたんですけど……どっかで食べれたりします?」
「そうですね。今は雨なので難しいですが、晴れたら食べに行けると思います」
「そういえばそんな話もありましたね。ここがどれだけ火山に近いのはあんまり分からないですけど、これだけ気候が違うと食文化も変わるんですかね?」
「どうだろうね。なんか食以外も色々と違うし、そういうのもあるのかも」
やっぱり違う国なんだなぁ。後でそれも食べに行きたいけど、用事が終わらないと……てか、もう他国を見つけちゃったし、用事は終わってるといえば終わってるんだよな。
他になんかあったっけ? タグュールさんの知り合いを探すとか?
時間が空いたらみんなと相談でもするか。
「それでは私はみなさんの布団を用意しておきますので、ごゆっくり」
「あぁ、何から何まですみません……手伝えることがあったら」
「お気になさらず。あ、お靴は脱いだ方が宜しいかと……」
「あぁ、そうします」
ニコッて笑ってからこの焚火の部屋を出ていった。ニコッて笑ってた。
それからみんなで靴を脱ぎ、火の近くに置いた。その時に気付いたが、ここは地面が土で出来ているのに濡れた足にそれが引っ付いていない。
ベタベタとしないのはありがたいが、この土は何で出来てるんだろう?
「良い人で良かったぁ」
「そうですね! ここに来るまで心配してたんですけど……良かったです」
「あ、そういえば……他国見つけましたけど、これからどうするんですか?」
「あ、そういえば」とか言ってみたが、別にその瞬間思い付いたわけでもない。クッションがないと話しづらい。うん。
「そうだね。とりあえずはもう少しこの国を調べようかな? 確か名前は分かってたよね?」
「ウィールドでしたよね? ここなら何かのきっかけが有ればセントラルに来れる可能性もあるので、他国の会で知り合った人たちの故郷かもしれないですね。
「それならとりあえず僕たちが得た情報がどれだけ正しかったのかを聞いてみよっか? 他にある?」
普通に観光したいなぁ。蒸し料理とか食べてみたいし、もうちょっとぐらいこの街を歩いてみたい気もする。てか、観光するにもお金がねーか。
「この国にお金とかあるんですかね? せっかくならなんか買って帰りたいけど、無理ですかね?」
「なるほど。それも聞いてみる? ドラゴンを狩りなら得意なんだけどね?ははは!」
「置いてきたドラゴンは大丈夫ですかね? もしかしたらここの人達に見つかってしまっているかもしれませんね」
「もうちょっと安全な場所に移しても良いかもね。後数日の間はここに居ることになるのかな?」
そんな話をしているとヘルミーさんがここに戻ってきた。布団を敷いてくれたようだ。
「僕たちは話を聞いてるからさ。君は様子を見てきてよ」
「俺だけですかぁ?」
「あ、私も着いていきます!」
「ははは。なら二人で行ってきてね?」
「どうかされました?」
「ちょっと落とし物だよね? 探してくるんだよね?はは」
「はは……そうですね。行ってきて良いですか?」
「どうぞ。お足元に気をつけて」
めっちゃ足元に気を付けさせられる。いってらっしゃいみたいなものかな?
そんなわけで靴を履き直し、せっかく乾いたのにまた外へ出ようとする。ドラゴンをどこに留めておいたのか微妙に覚えてないんだよなぁ。
「あ、アキラさん。弓忘れてますよ?」
「あぁ、そっか。ありがとう」
カエデさんから弓を受け取り、玄関の扉を開けた。
外はわずかに暗くなっている。早めに見つかるといいけど。
「どこに居るかな? どこらへんか覚えてる?」
「はい! そういうのは得意なんです!」
「えー、すご。俺は覚えてなかったから助かるよ」
門番らしき人に声をかけてまた外に橋をかけてもらう。ずっと濡れっぱなしかと思いきや、近くの屋根がある場所でわずかな光が見えた。おそらく焚火だろう。
「ハクション!」
「大丈夫ですか? 寒いですか?」
「いやぁ、大丈夫だよ」
さっきまで火に当たってたからか余計に雨の中が辛い。風邪引かないようにしないと……
カエデさんの後を歩きながらドラゴン達を探す。居場所に全く検討がつかないので、あっちこっちに首を回していた。
「あれ? この辺りのはずなんですけど……どうして?」
「ん? 居ない?」
「……はい。私はここだと思ってたんですけど、間違えてたのかな……」
カエデさんも分からないならもう終わったな。俺ももうちょっとちゃんと記憶の中からドラゴンの場所を引っ張り出してみるか……
『よ。久しぶりだな』
「あ、スティー! 久しぶり!」
「あれ? 声が……」
「スティーだよ。あれ? 紹介したっけ?」
あれ? スティーのこと紹介したっけ?……あー、でもなんか話したような記憶がある。それにこの状況を受け入れてるってことは知ってるのかな。
『お前らドラゴンを探しに来たんだろ?』
「あ、場所教えてくれるの?」
『ドラゴンはここには居ねーぞ。みんな森の方に行っちまったわ』
「えー、待ってくれなかったんだ。荷物とかも無くなった?」
「あの、そのドラゴンさん達はまだ近くに居ますか?」
『近くはねーけど場所は分かるぜ……今光った方角にドラゴンの巣があるんだけどさ。そこにアイツらは居るみたいだな』
「あ、なんか聞いたことあるような……」
あれー、なんかめんどくさいことになってないか? ドラゴンの巣って死ぬほどドラゴンが居る場所でしょ? で、ルドリーが言うには女王蜂みたいなデカいドラゴンも居ると。はぁ……面倒なことに。
(楽しくなってきたな)
「……楽しくないよぉ」
「え? どうされました?」
「あぁ、独り言。ごめん」
楽しいのか? 俺は今どんな気持ち?
雨の中でスティーが光らせてくれているその方向をじっと見ていた。
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