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112 ヘェルミィー。ヘルミー。

 

 それからはお互いの自己紹介などをした。女性は自分のことを「ヘェルミィー」と言った。変わった名前だと思ったけど、この国にとっては普通の名前なんだと思う。

 それとおんなじように俺たちが名前を伝えた時には「それが本名なんですよね?」驚かれた。

 そんなに変なのか?


「ひとまず今日は泊まっていってください。私の家でもよろしいでしょうか?」

「え? いや、それは……どうなんですかね?」

「失礼しました……ですが私の家以外となると少し窮屈(きゅうくつ)な思いをすることかと」

「宿とかは無いんですか?」

「ありません」


 宿が無いのか……えー、それならヘルミーさんの家に泊まっちゃおうかな……みんなと相談するべきか。


「どうしますか?」

「泊まればいいんじゃない? なんでダメなの?」

「だって……迷惑じゃないですか?」

「いいじゃん。だって泊まってって言ってるんだよ?」

「確かに……二人もそれで大丈夫?」

「あ、はいー。ヘェルミィーさんさえ良ければ全然問題ないですよ?」

「私も大丈夫です!」


 ということはみんなでヘルミーさんの家にお世話になることがこちら側では決まってしまったわけだけど、一回断ってるからなぁ。

 多分、会話は全部聞いてくれてただろうけど、ちゃんと頼まないとかな。


「あの、さっきは一回断っちゃったんですけど……もしヘルミーさんさえ良ければ、泊めてもらっても良いですか?」

「ふふ……はっ……はは……」

「え?」

「はははは! あっははは!」


 いきなり笑い出したけどこの人も大臣か? そういえば役職聞いてないし。

 いや大臣ってクレイジーな人じゃなくても出来るから……


「ど、どうしましたか?」

「いや、発音がぁ、私、そんな風に呼ばれたの初めてで……ふふふ……」

「あ、あぁ、発音かぁ。え? 正確にはどんな感じですか?」

「ヘェルミィーですよ?」

「ヘェルミー?」

「あぁ! 惜しいです! ちょっと違います!」

「え? どう違うの?」


 その後も何回かそのやりとりを繰り返したが、俺が正確な発音でヘルミーさんのことを呼べることはなかった。

 俺はなんだか話づらくなっちゃったので、斜め下の辺りを見ながらみんなが話しているのを聞いていた。


「それじゃあ、泊めてもらっても大丈夫かな?」

「もちろんです。ここからは少し離れているので、足元にお気をつけて」

「……そういえば今って夕方ぐらいかな? もしご飯を食べれるところがあればそこにも寄りたいんだけど」

「ご飯ですか?……雨なので私が用意します。それでもよろしいですか?」

「はは。もちろんだよ。ありがとね」


 雨なので? てか四人分のご飯をいきなりって大丈夫か? そんなに沢山食材が余ってたのか? まぁ、本人が良いって言ってんなら良いのか。


 それからはヘルミーさんの家へと向かうことになった。相変わらず傘も差さずに俺たちはずぶ濡れのままだ。

 まさかとは思うけど、濡れた状態が当たり前なのか? さっきのちょっとした建物にも濡れたまま入っていったし……


「どうぞ。お入りください」

「え? でも服とか濡れたままですけど」

「お気になさらず」

「えー、でも……」

「弓はここに置いていってください。重たいでしょうし……」


 噂で聞いてたけどやっぱりここも弓矢なんだな。剣じゃなくて。

 背負ってた弓を台に立てかけて少し身軽になる。


 こんなにずぶ濡れで入っていいの? と俺がためらっている間に大臣は中へ入っていった。流石だな。俺ももしかしたらちょっとはこういうところを見習わないといけないのかもしれない。


「これって服はこのまま? だとしたら着替えとかあるかな?」

「いえ、こちらに火がありますので」

「火っていうと?」


 ヘルミーさんの家の奥の方には広い空間があった。床は土が敷かれていて、壁際には大きな(たる)が二、三個置かれている。

 部屋のど真ん中に木が山の形で積み上がっている。キャンプファイヤー的な? そこまでは大きくないけど。

 ここで乾かすのか、案外普通だな。でもそれだけで乾く?


「今着ているお召し物はこちらにお掛けください」

「え?」

「お服を乾かしますのでこちらに」


 こちらにって言われてもこの下にパンツくらいしか履いてないんだけど。しかもそれも雨でビショビショだし。


「いや……このままで大丈夫……です……」

「そうしますと時間がかかりますよ?」

「……君って色んなこと気にして生きてるんだね。ははは」

「え? 大臣?」

「え、皆さんはそのままですか? なら私だけですね」


 そういうとヘルミーさんは服に手をかけて、何もためらうことなく脱いだ……さっきの様子から予想していたが服の下には謎の素材で出来た水着を着ていた。

 水着とは違うところがあって、ちょっとゆったりとした感じだ。人前に出たとしてもそこまでおかしくないかな?ってぐらいのゆったり感


「へぇ。ここの人ってみんなそれを着てるの?」

「はい。あ……もしかして皆さんは着ていなかったんですか?」

「はは、そうだね」

「それは……それは失礼いたしました……」

「え? ははは! 気にしないで大丈夫だよ?」

「あぁ、ありがとうございます……」


 うーん。大臣が人と上手くコミュニケーションをとっているところを見ると変な気分になるなぁ。仲良くできるのは今の内だけだぞ?






読んでいただきありがとうございました!


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ありがとうございます!

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