111 やっと来れた
橋は下ろされていない。
なので入れない……困った。
「これどうしましょうかね」
「あのー、壁に石を投げるといいらしいですよ? ユーリと調べてた時にそう言うことを聞きました」
「え? ホント?」
「それなりに準備はしてきたので、まぁ、とにかくやってみませんか? これが正しいのか間違ってるのかを確かめるという意味でもいいので」
人の家? に石を投げるなんてそんなことやっていいのか? これが間違ってたらめちゃくちゃ失礼な人達になるけど……まぁやってみるか。
「俺がやってみてもいいですか?」
「もちろん。こんなの誰がやっても変わらないしね。はは」
適当に落ちてた石を拾う。適当にと言っても中々石が見つからなかったので、時間はかかった。
目の前には数メートルの堀。気合を入れて石を投げると思ったよりもいい音が命中した場所から鳴った。
ポーンと壁の中から反響して聞こえてくるその音は雨音の中でもしっかり聞こえてくる。
それにしばらく耳を傾けていると、ギィギィといいながら橋が門のところまで架かった。
「降りましたね! すごい!」
「これって入ってもいいんですかね?」
「え? ここまでやって戻るの?」
「いや、まぁ、行きますか」
ついでに開いた門の中はこの雨雲に似合わないぐらいにカラフルな街並みだ。
建物はオレンジやピンクなど「マジでなんでその色使おうと思ったの?」みたいな派手派手な色ばかりでちょっと落ち着かない。まぁ、落ち着いてない理由はそれだけじゃないだろうけど。
「こんな雨の中……あら? 誰だあんた達は?」
「えー……とその……」
「こんにちは。大事な話があるんだけど、この国の偉い人って会えるかな?」
「いきなりか?……その前にお前達が誰なのかを教えろ」
「……この国から多くの人が僕たちの国にやってきててね? それで彼らを帰すためにここを探していたところなんだ」
「……何を言っているんだ?」
「うーん……あれ? 彼らの名前なんだっけ?」
「はい。スィードさんや、タグュール、ツィーダという名前に覚えはありませんか? その方達が私たちの国に迷い込んできてしまっているので」
「……うーん。俺には分からない。しかしもしかしたら……」
門番? とにかくこの国に入ってから一番最初に出会った人は重たそうな鎧を身に付けたまま、考え込んでいる。
しかし、こういう時に説明上手な人は羨ましいなぁ。俺だったら文字通り門前払いだったかも知れん。もうすでにちょっとは中に入ってるけどね。
「他に人を呼んでくるから待っててくれ。俺には判断出来ない」
「もちろん。いくらでも待つよ。はは」
カラフルな街の中に消えていく。よく見たら地面は赤茶色? のレンガで出来上がってる。
……この街でずっと外にいたら具合悪くなりそうだな。色がキツくて。
幸いにも今は雨だから、色合いが多分いつもより薄れているだろうけど。
もしかして雨の中で一番綺麗なように作られてるとか? そんなに雨ばっか降るのかな?
「ホントにありましたね……すごい驚きました……」
「確かにね。驚いた」
「でも、アキラさんと初めて会ったときはもっとびっくりしましたよ? 知らない人が倒れていたので……」
「そりゃそうだね。しかも服装も変だったでしょ? 確か」
「いや、素敵な服でしたよ? すごい似合ってました!」
「はは。そう?」
他愛ない感じの会話をしていると向こうから地味目な女性が歩いてきた。
全身黒の服装のせいでなんかお葬式みたいな雰囲気を醸し出していて、全体的に長い髪は目にも少しかかっている。
「はじめまして」
丁寧に頭を下げながら、こちらに声をかけていた。
声は透き通っていて、聞き取りやすい。
会釈を返した時に気付いたが、地面に引き摺ってしまうぐらい長いドレスを着ていた。雨なのに? 裾がずぶ濡れになるよね?
いや、それだけじゃなくて傘も差してない。こんなに雨降るのに傘差さないの? 不便じゃない?
どうでもいい疑問が浮かんでいる。横にいる大臣が頭を下げながら口を開いた。
「どうもはじめまして。話しちゃっても大丈夫かな?」
「ここでは濡れます。場所を移しましょう」
女性についていきながら、ここの街を眺めていると根本的な建物の作りだったりとかは大した変わらないように思えた。
変わっているところは色合いが派手なところぐらい。それぐらい。
「私たちの国の人間が迷い込んでるそうですね」
「はい。そうですねー、どうやって来たのかはまだ曖昧なんですけど、彼らの言ってることの信憑性は結構高いかなと。実際にこうして私たち以外の国もありましたしね」
「……分かりました。それでその方達は?」
「あー、今回は僕たちだけなんだよ。次に来るときは連れてくるからさ?」
「どうやってここまで来たんですか?」
なんて言うんだろ? ドラゴンに乗ってきましたとかは言えないだろうし。
「歩いてきたよ」
「え!?」
やば……大臣が何事もないように言うから驚いて声が出てしまった。
「どうかされましたか?」
「あー……」
「ははは! もうずっと歩いてきたもんね? 疲れておかしくなっちゃった? ははは!」
大臣がこちらを見て、ははは! と笑う。うーん……俺の失敗を誤魔化してくれてありがたい……けど、ありがたいと思う気持ちはあるけど、こんなに笑われるとムカつく……
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