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109 雨の草原で休憩

 

 (つら)なる火山の(あいだ)()うようにドラゴンの群れが分かれて行動する。時々吹き出すマグマを避けるため、雲に近いところから下を観察していた。


「ありますかね? このまま夜になったら……」

「別に全部が全部こんなに灼熱(しゃくねつ)ってわけでもないですよ。私たちが見た限りだと、木々が生えてるところもあったので生物が生存出来る程度の温度の場所もあると思います」

「そうだね! でもきっと死ぬほど暑いだろうね! ははは!」

「大丈夫ですかね……ちょっと心配です」


 暑いの嫌だな。そういえばドラゴンって暑くないのかな。それで変に暴走……まぁ、暴れちゃったら大変だし。

 そんなことまで考えてられんな。そうなったらもう諦めよう……いや、それぐらいならなんとかなるか。


「あれ? あそこになんかありません?」

「ん? どれ?」

「いや、あっちの方向に……動いた?」


 俺が指差した先をみんなが見つめる。みんなはなにも見えてないみたいだけど、俺には水色のワカメみたいなのがヒラヒラと動いているのが見えた。


「なんだろうね。行ってみる?」

「そうしますか?」

「そんなに広い場所もないから二人で行こっか」


 俺と大臣が二人でその水色のワカメに近づく。近寄ると分かったがそれは普通に水色の布だった。


「なんですかね」

「ここまでは人が来てるんだね。ということはもうすぐ国があるかも」

「え? まだ探し始めたばっかりじゃないですか?」

「ドラゴンだからね。普通に火山の中を通っていくとなると数日かかったかも」

「はぁ」


 思ったより短い旅になるかもしれない。みんなと感動的? な別れをした割には大したことなかったな。俺もちょっと心配しすぎてたかも。

 そこからまた上空に戻り、二人にもうすぐで着くかもと話す。


「思ったよりも近いんですね。もっと遠くかと思ってた……」

「そんなもんじゃないですかね。だってセントラルに徒歩で来れたってことはそういうことですからね」

「確かに。てか、思ってたよりドラゴンが速いね」

「それはあるかもしれませんね。ただ、問題はこれからですからね」


 問題は本当に他国があるのか。あったとしたら仲良く出来るのか。大丈夫らしいが、俺はほとんど関わってないからなんとも言えない。


 それからしばらく火山の上を飛行していると向こうの空に雲が見えた。色からして雨雲な気がする。


「雨ですかね」

「……みたいだね。あともう少しだ」


 予想通りその雲の下には雨が降っていた。セントラルだとマジで雨降らないから懐かしい感じがする。元の世界を思い出すなぁ。


 雨の中を進むとそこには草原があった。火山をついに抜けて行ったらしい。


「お、やっとだね。ちょっと休憩する?」

「良いですねー。流石にお腹も空いてきた頃じゃないですかね。みなさんもね」

「でも雨降ってますね。地面が草だとめちゃくちゃ濡れそうですけど……」

「もう濡れてるから関係ないよ。はは!」


 その通りではあるけど、地面が濡れてるのと身体が濡れてるのはちょっと違うような気がする。もしかしてそういう経験が少ないから、その不快さが分からないのかな?

 まぁ、何にせよ大臣の指示に従うまでだな。


 地上へドラゴンの群れが移動する。そういえば途中で襲われることもなかったな。仲間と思われていた可能性もあるのか?


 思った通り草原は水を吸っていて、びしょびしょだ。降りる前からちょっとためらわれる。そういえば気温も下がっているような気がする……いや、濡れてるから体温が奪われてるのかな?


「ここにします?」

「うん。ダメ?」

「いや、地面が……」

「ならなんか魔法でも使ってみる?」

「……どんな魔法ですかね?」

「まぁまぁ、とりあえずやってみるよ」


 大臣はそこの場所だけをカラッと乾燥させる。その間に布を床に敷いた。

 布を上に貼り付けるための木がないので、建物の外枠を魔法で作り出した。木製だ……変な建材じゃなくて良かった。

 そこそこ大きくて四人でも十分ゆったり出来るぐらいのスペースがある。


「ふぅ……ちょっと疲れちゃったね。ご飯でも食べようか?」

「そうですね。流石にここじゃドラゴンもいなそうなんで、持ってきたやつ食べます?」

「そうしよっか。もうすぐで見つかりそうだしね?」


 カバンから缶詰やらジャーキーみたいな肉やらを取り出し、床にそれを広げ、腰を下ろす。

 ちゃんと地面は乾燥していたので、座ったりしてもお尻が濡れたりとかはなかった。


「結構美味しいんだね。思ったよりはだけど」

「そうですね」


 ふと思ったけど、カエデさんあんまり喋らないなぁ。

 まだ大臣とかに気を使っちゃってるのかもしれない。そんなに気を使うような相手でもないのに。

 てか、いきなりほぼ初対面の人と長旅なんてヤバイよな。まぁ、仕事だからと言ってしまえばそこまでかもしれないけど……


 俺もそこまでコミュ力高くないから、橋渡し的な役割は出来ない。これが終わる頃には普通に話せるようになってると……うーん、難しいか。だって大臣もエラさんもちょっと……アレだし。アレ。


 なんかまたウダウダ考えてるなぁ。これはどちらかって言うとカエデさんの問題な気がするから俺に出来ることなんてないような……あるような。


「どうしたんですか? ぼんやりとしてましたけど……」

「え? 俺?」

「はい。アキラさんです」

「……まぁ、考え事……そんな大したことじゃないけどね」


 声をかけられて現実に戻る。カエデさんのことを考えていたから、カエデさんに話しかけられてびっくらこいた。びっくりした。


「僕はちょっと眠るよ。もし何かあったら起こしてね?」

「え? 寝るんですか?」

「うん。ダメ?」

「いや、おやすみなさい……」


 大臣が寝てしまったので、さらに静かになる。雨音が即席の屋根を叩いていた。


 暇だなぁ……と思ったので、俺も眠ることにする。

 なんか雨だと気分下がるなぁ。



読んでいただきありがとうございました!


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ありがとうございます!

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