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108 野宿……

 

 空ではなーーにも障害物がない。

 これからこんな感じでずっと空を飛び続けるのかと思うと少しだけ頭がおかしくなりそうだ。

 太陽は常に俺を直視していて、日陰がないここでは逃げ場もない。

 火山まではそこまで遠くないが、そこから先は完全に未知の世界だ。本当になにがあるのか分からない。

 ドラゴン以外のケモノやモンスターも居たりして……まぁ、それはあんまりなさそうだけど。


 重たい荷物を抱えたドラゴンが周囲を囲んでいるせいか、こちらに攻撃されることもない。比較的安全なフライトだが、それでも時折(ときおり)下を見てしまうと忘れていた恐怖心が湧き上がってくる。帰りたくなってきた……


「これからどうするんですか?」

「そうだねぇ。火山近くの森に一泊しようかなって思ってるんだよ。で、明日の早朝になったら火山の上を突っ走る」

「今日はもう寝るだけですか?」

「いや、軽く火山の様子も見るよ。出来るだけ安全な道を選ぶために」

「将来的には我々だけではなく、一般の市民も行き来出来るようになるのが理想ですからね。安全な道は探すことも重要だと思います」

「でも、先に泊まる場所を見つけちゃお。それで良い?」

「あ、もちろんです」


 思ったよりも平和的な空の旅はまだまだ今までの冒険とあんまり変わらなさそうだ。ただ火山の先は全く持って未知数なので、なにが起こるか分からない。

 魔法以上に意味不明なものがあったら、その時は静かに死ぬことにしよう……


「こことかどうかな?」

「良さそうですね……荷物とか下ろしてからいきます?」

「そうしよっか。ドラゴンも疲れてるだろうしね! はは!」


 近くの森の中にちょうどいい広場を見つけたので、そこにみんなで降りる。

 ドラゴンたちもそこに降りたので、ちょっとだけ窮屈(きゅうくつ)だったし、目の前にドラゴンがいるとやっぱりちょっとだけ緊張する。攻撃されるようなことは無いと思いたい。


 硬く結ばれた縄を(ほど)く。するとドラゴンも気持ち良さそうに伸びをした。

 他の子たちの荷物も下ろしてあげた。


「疲れましたねー。時々休憩を挟まないといきなりドラゴンに襲われた時に対処出来ないかもしれません」

「ここに拠点を作ろうか。大きな布とかってどこにしまった?」

「ここに敷くんですか?」

「うん。あと上に貼るやつとね」

「私、覚えてますよ? 確か……」


 カエデさんが鞄の一つから大きな布を二枚引っ張り出した。その内の一つは地面に敷いて、もう一つは周りの木々に引っ掛けて一時的な天井にした。

 薄い光が緑の布から漏れ出していて、この空間自体がライトグリーンに包まれている感じだ。いい雰囲気だねぇ。


「休みながら話し合おうか。これから火山に偵察に行くんだけど、必要なものがあるよね?」

「食料ですかね? 私たちも持ってきてはいますが、五日分くらいしかないですし、基本的な主食は現地調達だということは前もって話してありましたしね」

「だからここで二つに分かれようと思う。僕とエラで火山の様子を見に行って、君とカエデくんで食材を調達する。ドラゴンとか木の実とかの食材をね」


 カエデさんと俺の二人で狩り。まさか大臣が変な気を使ってくれたのか? それはマジでなさそうな気がする。

 となるとエラさんと行った方がより情報が集まるとか考えたのかな。カエデさんはこの仕事を始めたのが最近だし、俺は……考えないとこ。


「分かりました。ちょっと休んでからでもいいですよね?」

「うん! まだ時間はあるからね」

「ここら辺に川とか滝とかってありますかね? もし、あるなら行きたいです。上から見たときは無さそうでしたけど……」

「それもついでに探してきてよ。無かったら無かったで良いからさ」


 少し休んでから徒歩で森の中を歩く。俺も弓を一応持ってきてはいたがやることは木の実とか果物とかを集める役割だ。それを(かご)にいれるのだ。


「これって食べれる?」

「あ、それはダメです……食べるとお腹を壊しちゃいます」

「これは?」

「それも……ちょっと。あんまり美味しくないですね……」


 この通り、その役割も十分に果たすことは出来ていなかったが、時間をかけたのでそこそこの量が集まった。あとは主食のドラゴンだ。これはカエデさんに任せる。


「ドラゴン居ないね」

「そうですね。もうちょっと森の外に行ってみますか?」

「あ、来たみたいだよ」


 ガサゴソと森の中からトカゲが飛び出してくる。食べ物を持っていた俺は特に構えることもなく、カエデさんがそれに矢を当てるのを待った。もし外れても魔法でなんとかなるし。


「……当たりました!」

「お、やっぱり凄いよねぇ……」

「ありがとうございます! 一度戻りますか?」

「そうしよっか」


 俺は果物が入った籠を両手で抱えて、カエデさんはドラゴンを引きずって、拠点に戻った。これ逆の方がいいかな?


「俺、そんなに疲れてないから代わろっか?」

「いえいえ! 私もまだ大丈夫です!」

「普段はドラゴン運ばないし大変じゃない? 魔法で運ぼっか?」

「でも疲れちゃいませんか?」

「じゃあ、交代交代で運ぼっか」

「はい!」


 その後も日が暮れるまでドラゴンを狩り、最終的に四匹のドラゴンを倒せた。これで一人一個だな。俺はほとんど何にもしてないけど。



 大臣達が空から地上に落ちていくところが見えた。

 夕方までずっと火山を調べていたのかな。


「君たちもお疲れ様。どれぐらい集まった?」

「人数分はありますよ。カエデさんが全部やってくれました」

「ははは! 君はなにしてたの? はは!」

「まぁ、食べれそうな物を適当に……」

「そっか! ははは!」


 食事の準備をしながら、火山の様子について大臣から話を聞く。これで特に問題がなければ明日は本格的に出発することになるんだろう。


「どうでしたか?」

「中々広そうだったよ。もしかしたら火山地帯を越えるだけで、数日かかるかも」

「その間ってずっと空中?」

「見たところ全部が全部灼熱(しゃくねつ)ってわけじゃないから。涼しそうなところに泊まる感じかな? 魔法も使いながらね」

「となるとドラゴンがどうこうよりもそっちの方が心配ですね」

「そうだね。でもなんとかなりそうだったよ?」

「……明日からは火山ですかね?」

「そうだね! これでやっと他国に行けるかもしれないね! ワクワクしてきた?」

「えー、まぁ、そうですね」

「なんか乗り気じゃないね? まぁ、いいや! ご飯食べようよ!」


 乗り気じゃないわけじゃない。ただただ心配なだけだ。事故とかもそうだけど、それ以上にいきなり違う国から来た人たちをその国が歓迎してくれると思わない。

 噂によると友好的らしいけど、それでも……いや、シンプルに俺が人見知りなところがあるから緊張してるのかもしれない。


 ……今はご飯でも食べるか。うん。


 ご飯をみんなで食べながら明日の計画を話し合った。俺はただ聞くだけだったけど。

 ご飯が終わると自然に寝支度に入るようになる。そこまで深い時間ではないが、外灯が一つもないこの森の中では真っ暗になるのが早い。


「今日はもう寝よっか! その代わり明日は朝早くから出発ね?」

「分かりましたー。それでは私は寝ますねー」

「カエデさんは寝られそう?」

「多分……でも大丈夫だと思います!」

「そう? なら良かった……」


 思いの外眠たい俺は会話を切り上げるとテントらしきこの布の角のほうに移動した。

 布団はないので空いた鞄を体の上に乗せた。


 明日は火山か……あぁ……眠いからそのことは明日考えよ……







読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークから評価などもよろしくお願いします!


ありがとうございます!

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