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107 出発だ!

 

 早朝。真っ暗な空の向こうに太陽が昇りかけている中でカバンに荷物を詰めた。


「よし! それじゃ出発だね! なにか言いたいこととかある?」

「あ、一応お守りとか買ってきてたんですけど……」

「え? お守り? ははは! なら持って行くと良いよ!」

「みんなの分も……」

「えー! はははは! 適当にカバンに詰めちゃってよ。はは!」


 案外受け入れられた。てか、めちゃくちゃ笑っとるわ。


「街の外に出てからは僕から離れないようにしてね? それじゃ行こうか」


 沢山のカバンが乗った荷車をスティーが魔法で運んでくれている。一応、俺も引いてるフリをしていた。早朝とは言え、起きてる人も居るだろうしさ。

 しかしこんな朝っぱらからうるさい荷車だ。ゴロゴロゴロゴロと石畳の上を騒音を立てながら進む。


「あ! アキラさん」

「え? ルイスくん?」


 まさかルイスくんに出会うとは思ってなかった。だってまだ日も昇っていないぐらい早朝だ。


「なんで? ここに?」

「朝の絵を描こうと思ってて……あと、もしかしたらなぁって」

「え、わざわざ見送りに来てくれたの?」

「いや、そう……ですね」

「あ、ありがとう……」


 素直に嬉しい。まだ出会ってそんなに経ってないのに、こんなに良くしてくれるなんて、神か?


「重たそうですね。運びましょうか?」

「あ、いや大丈夫だよ!」

「後ろから押しますよ……あれ?……」


 おそらく中身が軽すぎて驚いているんだろう。だってほとんどスティーが浮かせてるし。


「……やっぱりアキラさんが?」


 もう正直に言おう。こんなに良い人なんだから良いや!


「今回は違うけど……そうだよ」

「どうやって、ですか?」

「魔法……イメージするだけでなんでも出来る。だから、長旅も安全なんだよ。人にはあんまり言わないでね」

「……帰ってきたらまたお話、聞きたいです。それまで待ってますね」

「もし、聞きたいことがあったら、親方の……ミリアって人の家に行ってみて? 俺の家の通りにある雑貨屋で話を聞いたらきっと教えてくれるから。アイラって人の雑貨屋」

「……はい」


 そこまで教えちゃって良かったのかな。良く分かんないけど、旅の途中で死んだら関係ないし良いか。


「それじゃ出発だね! あ……ミリ?」

「お前か」

「あ、親方! あの人がミリアさんだよ」

「あの綺麗な方が?」

「え、まぁそうだよ」

「なんだ? 何の話をしているんだ?」


 綺麗な方。確かに親方は綺麗だけど、初対面の頃からちょっと変な人だったから気にしたことあんまりなかったな。

 いや、これを気にしたら前みたいに接することが出来なくなりそうだから、忘れよう……うん。


「実はこの子ルイスくんって言うんですけど、魔法をいまさっき教えたんですよ」

「そうなのか?」

「それで俺が居ない間は親方とかに話を聞いてみたらって……あ、勝手に話進めててすみません」

「謝るな……分かったよ。お前が戻ってくるまで私が魔法を教える」

「オシエル!」

「え? なんですか?」

「なんでもないよ! 声が……いや、その話も後で聞けると思うよ」


 グェールのことを隠す必要もないだろう。親方ならきっと教えるだろうし。

 カエデさんも親方に挨拶がしたいのかここにやってきた。


「あの、ミリアさん。お久しぶりです」

「久しぶりだな。元気か?」

「はい!」

「気を付けろよ。もし危なくなったらこいつを盾にして良いからな?」

「えー、俺ですか?」

「ふふふ、良いですか?」

「まぁ、良いけどさ?」


 親方とカエデさんも話すのが久しぶりのはずなのにもう打ち()けてる。親方は人に壁を作らない人だから、話しやすいんだろうな。二人ともお世話にもなったし。


「……あ、そういえば親方は見送りに?」

「そうだ。作業をしてたら朝になっていたからな」

「まぁ、気を付けて行ってきます。親方も気を付けてくださいね」

「はは。私は大丈夫だよ」

「もう良い? そろそろ行くよ?」

「それじゃあ、また」

「またな」


 二人に手を振って街の外に出た。太陽が出てきたおかげで色濃い世界で影が伸びて行く。

 ……俺は死ぬのか? もうここで死んでもなんにも問題ないって言うぐらい色々なことが起こってる。まぁ、死ぬのは慣れてるから……いや、まだ一回しか死んだことないわ。


「ミリアさんも来てくれてましたね? アキラさん」

「そうだね。もう出発なんだね」

「うん! もう出発だよ」

「もう少し歩いたらドラゴンを呼ぶんですかね? それとももう呼んでしまいますか?」

「ここで呼んじゃおうか? ね?」

「それなら縄を取り出しますね。ちょっと荷車を見させてもらいますね?」


 エラさんがカバンから長い縄を取り出している間に、大臣が大きな声でドラゴンを呼んだ。まだそこまで街から離れていないけれど大丈夫なのかな。

 声によってやってきた十匹? のドラゴンは指示を待っている。

 その中から馴染み深い青色をしたドラゴンに縄を巻く。


「ドラゴン増えてますね」

「はは! 昨日ね? ちょっとだけ増やしてみたんだよ!」


 他のドラゴンにはカバンを縄で結びつける。離れないように硬く結んだ。


「それじゃ行こうか! 飛べ!!」


 大臣が一足先に飛ぶ。俺はみんなが飛んだことを確認してから飛んだ。

 高くなってきた太陽が、眩しい。

 出発はこれまでの時間の全ての中で、一番ワクワクしていた。



読んでいただきありがとうございました!


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