103 サイコな大臣
朝から仕事だ。そのかわりすぐに帰れることになっている。これが終わると出発まで休み。
「良く来たね。それじゃ色々と確認しておくよ?」
俺が居ない間に細々としたことを沢山決めていたらしく、確認作業中に置いてかれることが多々あった。
問題だった他国との交流に関しては、タグュールさんや火山に入った商人さんなどの持ち物を借りて、それで他国に敵意が無いことをを知らせるみたいだ。
彼らへ話を聞いてみたところ、友好的な国民性なので、争いになる危険性も少ないらしい。本当かな?
それからもとにかく色んな話をした。
食料は基本的に現地調達をし、緊急時に持ってきた物を食べる。
荷物は他のドラゴンの背中に綴りつけることで、運べるようにする。
「こんなものかな? でもあんまり心配しないでいいよ! 僕と彼は魔法が使えるからさ?」
「まぁ、多分、大丈夫だと……ただ、離れ離れにならないようにすれば多分」
「それじゃ明日はお休みだから! 明後日出発ね?……それと後で君の家に荷物を見に行ってもいい?」
「あ、もちろんです。確認してもらった方が良いです」
「もし仮にダメだったら延期ね? 別にいつだって良いんだからさ! ははは!」
問題なければ明後日出発? マジでか。全然準備出来てないけれども……
ただ、スティーが居れば絶対に死なないと思う。
カエデさんにはそれを……言ってたっけ? 王子様の話をした時にしたような気もするけど……
まぁ、とにかくエラさんにスティーがバレたら……バレたらどうなるの? 別に不味いことにならない気もするけど、一応ね。
部屋から出て、カエデさんと二人で話しながら街を歩く。
「明後日だって、まだ信じられなくない? この……街から別の国を探しに行くって」
「私もつい最近知ったので……」
「そっか! カエデさんはいきなり聞いたんだもんね? それは流石に信じられないよなぁ」
「……これはわがままかもしれないんですけど……これから村に行ってきても良いですか?」
「そー、だよね。だって……」
死ぬかもしれないとかは言いたくない。いや、コレはその通りだ。俺も親方とかアヤカとかハヤトとかにちゃんと挨拶しておかないと……
でも、これから村に行って明後日出発となると大変じゃないかな? これから行くと帰りが夜になるかも、いや、明日になるかもしれないし。
「ちょっと大臣のところ行こ? 別に明後日じゃなくても良いみたいだし、ちょっと遅らせてもらおうよ」
「でも、申し訳ないような……」
「旅始めたら長いんだからさ。後悔は少ない方が良いよ。それに延期のことも考えてたじゃん?」
「すみません。さっき言えば良かったですね」
「とにかく行こう? 大臣のとこ」
また戻って大臣の部屋に入る。ちょっと驚いた様子でこちらを大臣が振り返った。
「あれ? どうしたの? 忘れ物?」
「すみません。わがままなんですけど、村に挨拶に行ってきても良いですか? それで、出発を延期してもらえたらと……」
「え? 良いよ? 別にいつでも良いんだしさ?」
「あ、ありがとうございます!」
「確かに死んだらもう会えないもんね! ははは! 会っておいた方が良いよ!」
そんなにサイコな人だったっけ? それは流石に言い過ぎじゃない?
普段は俺に向かってこういうのが飛んでくるけど、いざ他人に言ってるところを見るとアレだな。微妙な気持ちになっちゃうな。カエデさんだから?
「ただ! それなら別に延期する必要もないよ?」
「え? マジ……どうしてですか?」
「ドラゴンに乗っていけばすぐ着くでしょ? せっかくだから乗って行きなよ」
「え、カエデさんどうする?」
「そうしてみますか? いや、そうしましょう!」
「ははは! その間に君たちの家の荷物を確認させてもらうよ? 足りないものが有れば延期。はは!」
縄と金具を大臣から渡された。
二人でドラゴンに乗るのは初めてだ……てか、大臣が居ないんだったらスティーも居ないじゃん! えー、大丈夫なのかぁ……
「……でも、大臣が居ないと万が一みたいなことが……」
「ん?……あー、そういうこと? なら心配しないで? うん」
表情からしてこっちの言いたいことが分かってくれてるような気がする。多分……おそらく……スティーが見張りに来てくれるはずだから、安心して飛ぼう、うん。
てか、エラさんとかカエデさんはこんなに不安なまま飛んでたんだなぁ。ちょっと、申し訳ない。
「それじゃあ、外行こっか。大丈夫?」
「分かりました。弓矢も持って行きましょ?」
「そうだね。大臣、ありがとうございました」
「どうも。ははは!」
今度こそ家に帰る。弓矢を俺も一応持って、街の外に出た。
出来るだけ遠くに移動して、ドラゴンを呼ぶ。大臣みたいに大声出せるかな?
「じゃあ、呼んでみるよ」
「はい!」
「おーーい!」
遠くの方からドラゴンの群れが飛んできた。いやいや、そんなに来なくてもいいのに……
その中から二匹を選んで縄を巻く。その他のドラゴンは暇そうにしている。
「準備出来た? 飛べる?」
「はい! 行きましょう!」
「君たちは帰っていいよ? 来てくれてありがとう」
周りを取り囲んでいたドラゴン達が戻っていく。マジで言葉が通じてるよ。スゲー。
「楽しみだね!」
「はい! 楽しみです!」
本当は不安とかもあったけど、心配させないように虚勢を張った。
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