102 ホントに行くのか?
カバンはどこにあるんだろう? 雑貨屋かな?……となるとアイラのところか?
「ふぅ……疲れた」
でも今はちょっと休もう。まだお店も開いてるだろうし、時間はいくらでもある。
……こんな一人も時間も好きなんだよな。カエデさんと居ると楽しいけど、なんかドキドキしちゃうし。
「ルドリー、他国行きたくないよー」
(そんなこと我に言ってどうする)
「だって、俺、弓も使えないし、剣もないし。なにも出来ないじゃん」
(魔法でも使えばいいだろ)
「魔法も得意じゃないよ。だって今体が動かないしさ」
(それは魔法以外のこともやったからだろ)
「……契約したいんだけど、なんで出来ないの?」
(我に聞くな)
その話を聞いてから何度か試してみたことがある。だってルドリーのことは信頼してるし、力はほしいし。
もし成功すれば、剣が使えなくてもなんも問題がないからなぁ。必要なはずなのに、出来ない。
「親方ってなんで、グェールと契約出来たのかな?」
(さぁな)
「……もしかしてルドリーの方が嫌がってる?」
(我はいつでもその時を待っているぞ)
「マジでー。待たせてごめんね?」
(いくらでも待つさ)
ルドリーって優しいんだよな。優しいからきっと大丈夫なはずだけど、どうして心配になっちゃうんだろ。
俺に問題があるのかもなぁ。はぁ……
「よし。アイラん行こっと」
返事はなかったが、独り言のつもりで呟いたので無い方がありがたい。
リンゴを一つ拾って皮ごとかじり付く。歯形が付いたリンゴを持ちながら、家を出た。
これ酸っぱい。真っ赤っかだから甘いのかなって思ったけど、匂いもしないし、酸っぱいしで美味しくない。でも、全部食べようかな。うん。そんなのあったよな?
アイラの雑貨屋に入る前にリンゴは全部食べた。芯とかも柔らかかったから、そのまま丸ごと食べた。ドラゴン食べるようになって顎とかが強靭になってる……
「お邪魔します」
「いらっしゃいませ」
「あの、ここってカバンとか置いてある? 出来るだけ沢山さ?」
「カバンならありますよ。こちらに」
アイラが指していたのは、買い物に行くためのカバンだ。確かにこれもカバンだけど、大臣はそういうことを言ってるんじゃなさそうだな。
「もっと大きいのはない? 実はちょっと長い旅をすることになったから」
「そうなんですか? ミリアさまは?」
「あ、今回は来ないよ……最近調子どう? 元気そう?」
「私もほとんど会ってないです。忙しいみたいで」
「前よりも熱意凄いよね。このままほっといても大丈夫なのかな?」
「……アナタは知らないかもしれませんが! 昔はもっと凄かったんですよ? 倒れるまで作業してたりだとか……」
それはすごい……それぐらいの熱意が無いと契約も出来ないのか? それは関係あるのか?
自分の人生を懸けてなにかに取り組めるって本当に羨ましいよ。俺はただ楽しいからドラゴン狩りが好きなだけだし、それ以外にドラゴン狩る理由なんて無い。
……俺にとってのドラゴンはそこまで悪いものじゃないから、そのせいで力が欲しくないのかも。
「てか、カバンは? 大きなカバンとかある?」
「あぁ、それなら奥に有ると思います。でも一つしかないですよ?」
「じゃあ、とりあえずそれちょうだい。他にカバンが買えそうなところ知らない?」
「他の雑貨屋さんにあるんじゃないですか?」
「じゃあ行ってみようかな……とりあえず奥に有るカバン見せてもらってもいい?」
「分かりました」
アイラも昔と比べて仲良くなってきたように俺的には思ってる。
アイラが持ってきたカバンは、なんかの革で出来た丈夫そうなカバンだ。これなら旅の途中に破けてしまうことも無さそう。
「お、じゃあコレ買うよ」
「ありがとうございます。お気を付けて」
「あ、ありがとう。気を付ける」
いきなり優しくされたけど、なに? コワ。怖くないか! 別に。
その後、数軒雑貨屋をハシゴして、なんとか五個のカバンを集めた。しかしもう暗くなってきちゃった。
一回、大臣の部屋に行こうかな。このまま俺一人だけ仕事を終えてもいいかもしれないけど、もし待ってくれてたら申し訳ないし。
ほんのり暗い中でお城へと歩いていく。大臣の扉をノックした時には、ここに来たことを後悔するぐらい夜になっていたが、中から応答か帰ってきた時はそんな気持ちも薄くなった。
「あ、大臣だけですか?」
「うん。みんなもう帰ったよ?」
「あー、じゃあ一応、全部集めた報告だけ……」
「えー! 思ったより早いね! 流石にもうちょっと掛かると思ってたんだけどね? はは!」
「後で確認に来てください。もし、ダメだったら大変なんで」
「もちろん!……他国に行く準備は出来てる? もう明後日にでも出発出来るかもよ?」
「……うーん。流石にもうちょっと時間が欲しいですね。弓も全然上達してないんで」
「魔法じゃダメなの?」
「魔法だと疲れやすいじゃないですか? 弓でやった方がね?」
「じゃあ明後日は休み。その次の日に出発にする?」
「まぁ、そうしますか?」
「明日は集まるだけでいいから。最終確認ね?」
本当に他国に行くことになっちゃってる。えー、どれぐらいの期間旅をすることになるのか分からないけど、すごい不安だ。
「それじゃ、また明日?」
「明日もよろしくお願いします」
うわぁ。考えれば考えるほど嫌になってきた。他国行きたくない……ここに居たい……
でもそんなことを言っていてもなにも変わらないので、数日後には普通に旅立ってるんだろうなぁ。
読んでいただきありがとうございました!
よろしければ下の☆マークから評価等もお願いします!
頑張れます!
ありがとうございます!