12 ドラゴン討伐
街の外に出ると人が乗れるくらいの荷車に乗せられ、森の奥に引っ張られていった。俺の他にも剣やら弓やらも荷物として乗っかっていた。
「あの、どこに向かってるんですか!?」
「ふふ、ドラゴンの生息地だ! ドラゴンにこれから鎧と剣を試すんだ」
とにかく着いてみるまで考えるのはやめよう。そうした方が精神的にいいだろう。
生息地に向かうまでの道には滝があり、少しの水飛沫が鎧を冷やしてくれて気持ちがよかった。
どうやら道が安定して来たようで荷車の揺れが心地いい。そのまま目的地まで昼寝でもしようかと思った矢先、声が聞こえた。
「ついた! ここだぞ!」
止まった場所を眺めてみると丘になっていた。
少し離れた場所で噴火が起こっているみたいでマグマのようなものも遠くの方に見える。そのせいかこの辺りも暑い。恐ろしいほどの熱が鎧の中にこもっていた。
「あつい……この鎧ってちょっと脱いでもいいですか?」
鎧の中に汗をかなりかいていたので一度全部脱いでしまいたいと思った。
「脱ぎたければ脱げ。だが、食われてもいいのか?」
親方の言葉の後に向こうから何かやってくるのが見えた。遠くの空を見上げると大群の影がこちらに来るのがわかる。おそらくドラゴンだろう。
荷車から降り、剣を構えてみるが鎧と剣の重たさでふらついてしまう。この状態で何が出来るだろうか。
「あの! どうすればいいんですか?」
「お前はただドラゴンがやって来た時に剣を振ってるだけでいい。私の作った鎧を信じろ!」
群れが上空にとどまり、こちらの様子を見ている。
「いいか? 君に襲いかかって来たらすぐ剣を振り下ろすんだ。それだけで大丈夫だ」
親方がしっかりとこちらを向いて話しかけてきてくれていたので少しだけ信頼することにした。
「はい! 分かりました! 親方!!」
今は言われた通りにやるしかない。
様子を見ていたドラゴンの群れから一匹がしびれを切らしてかこちらに向かって来る。
おそらく今まで見た中で一番小さかったがそれでも一番大きく感じた。それに向かって勢いよく剣を振り下ろす。
スパッ!
「す、すごい!」
親方の言う通りに剣を振り下ろすと簡単に刃がドラゴンに入っていき、そのまま引っ掛かることなく進む。真っ二つになって動かなくなった死体を見て群れが騒ぎ始める。
「まだまだ来るぞ! 油断するな!」
その後も同じように剣を振り下ろし続けていき、おそらく10何匹も切っていったがだんだんと疲れがやって来て剣を動かせなくなってしまった。
もうどれだけの時間が過ぎたんだろう。多分そこまでの時間は経ってないが疲れはとんでもなく溜まっていた。
「はぁ、はぁ、もう…………動けない……」
動かなくなった俺を見てここぞとばかりに残りのドラゴンが全員で向かってくる。そのまま抵抗できずに飛びつかれてしまった。
後方に吹き飛ばされ、丘を転げ落ちていってしまうが鎧のお陰で致命傷はなかった。しかしなんだか全身の力が抜けてしまい、体が動かない。ずっとしっかり握っていた剣ももうどこかに行ってしまったようだ。
丘の上からさっきの群れがこちらを見ている。
「あぁ、これでおしまいだ……」
全身が汗まみれになり、まるで熱中症のように頭がクラクラとして来てしまった。
「おい! ちょっと待ってろ!! 助けにいく!」
意識が朦朧としていたが親方が群れに飛びかかり、残りのドラゴンをどんどんと倒していく。ドラゴンは残り数匹になった時にどっかに去っていった。
「おい! 大丈夫か!? 立ち上がれるか?」
親方が呼びかけてくれるがもう意識が…………限界だった。
「お……やかた」
ドラゴンの群れがいなくなったことに安心したのかそのまま寝こんでしまった。
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「おい! 起きろ! 大丈夫か?」
親方の大きな声が聞こえたので目が覚めた。
起き上がるとなんだかひんやりとしていて足が水に浸かっているようだった。どこからか滝の音もする。
「あ、あぁ親方」
横をみると彼女がこちらを見つめていた。
「あー! 良かったー! 起きた!」
親方が俺にいきおいよく抱きついてくる。かなり心配してくれたみたいだった。
一人で荷車に俺を乗っけてここまで連れて来てくれたのかと思うとありがたい。
「助けてくれてありがとうございます。本当に死んだかと思った」
倒れてしまった後の看病もしてくれたようでさっきまで着ていた鎧が向こうに転がっている。
「申し訳ない! 君のことを考えられてなかった、許してくれ!」
「気にしないでください、もう大丈夫なんで」
一体、何匹ドラゴンを倒したのだろう。もしかしたら20匹くらいはいたかもしれない。あの大群を俺が倒せたことを考えるとあの剣と鎧はものすごく意味があったんだな。
「とりあえず今は街に戻ろう! 後のことは私がやるから安心してくれ、立てるか?」
立とうと思えば立ちあがれたが水が気持ちよかったのでもう少しゆっくりしていたかった。
「すみません、あと少しだけゆっくりしていってもいいですか?」
「わかった、もう少し休んでいこう! 私たちは本当すごいことをしたんだ! いくら休んでも構わないよ」
親方に見守られたまま、目を閉じる。足下にある水が気持ちよくてすぐに眠りについた。
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