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98 空から弓矢を打つ

 

「これで実力は大体分かったから、ドラゴンに乗る練習でもしようか? もうちょっと街から離れよう?」

「間違えてドラゴンが倒されちゃったら大変ですもんねー」


 その可能性は考えてなかった。ドラゴン狩りをしている人が俺たちのドラゴンを殺しちゃったらついでに俺たちも死ぬのか?

 大臣と俺はなんとかなるけど、カエデさんとエラさんは……魔法を教えよう……


「あの、先に魔法教えといた方が良いんじゃないですか? 二人に……」

「え? エラは出来るよね?」

「落下したときに死なないようにするぐらいなら出来ると思いますけどね。実際そうなってみないと分からないですが」

「カエデさんは?」

「魔法自体は出来るようになったんですけど、大丈夫ですかね……」

「まぁ! そんなに心配しなくてもいいよ! 大丈夫だからさ! 絶対に」

「絶対?」

「はは! きっと助けてくれるよ?……女神様がさ! はははは!」


 ツボに入ったのかゲラゲラと笑う大臣。女神様?……でも言い方からしてスティーが助けてくれる感じかな?


 人気のない静かなところにやってくると、いつものように大臣がドラゴンを大きな声で「おーーい!!!」と呼ぶ。この時、いつもちょっとビクッとしちゃう。なんか慣れない。


 ……向こうの空からドラゴンの群れがやってきた。8匹くらいいる……


「え? これ大丈夫ですか?」

「大丈夫! 沢山居た方が良いかなって思って増やしたんだよ!」

「それにしても多いですね。八? くらい?」

「僕も正確には覚えてないや。好きなのに乗っていいからさ? あ! 後、弓矢も忘れないでね?」


 弓矢を持って乗るのは初めてかも。でも旅をする時はもっと多くの荷物を持つことになるのかな。

 しかし、これが全部味方なら安心出来るな。こんだけ居るなら(おそ)ってくるドラゴンも居ないかもしれない。

 やっぱり大臣って無謀(むぼう)なように見えてちゃんと考えてるよねぇ。考えてもなさそうな時もあるけどねー。


 俺は前と同じ青いドラゴンに乗る。みんなもそれぞれ好きなドラゴンを選ぶと縄をくくりつける。慣れてないカエデさんには俺とエラさんの二人で教えた。


「これで大丈夫なんですか?……心配です」

「……確かに俺もちょっとは心配だけど、でも、大臣も親方のことも信頼して良いと思うよ」

「そうですよね? 私も、信じます……」


 信じられないよ。普通は……でも、信じようとしてドラゴンに乗ってくれてるんだし、俺も絶対に助けるぞ! 出来るだけ離れないようにしておかないと……


 大臣が「飛べ」といって上空へ羽ばたく。俺はカエデさんが飛んだのをちゃんと確認した後に飛ぼう。いや、過保護すぎるか? そんなことないはず……だって死ぬかもしれないんだし。

 冷静に考えたらエラさんもちゃんと見とかないとダメかな。大臣も気を遣ってくれたら楽なのに……


「と、飛んでください!」


 カエデさんがその声をかけるとドラゴンはなんだか不安そうに空に向かう。動物って不安が伝わるってよく言うよね。ドラゴンもあるのか?

 まだエラさんは飛んでないので、俺はカエデさんを目で追うだけだ……早く飛んでくれないとはぐれちゃう……


「あ、もしかして私を待ってくれてます?」

「え?……いやぁ……どうだろ?」

「もしそうだとしたら心配ご無用ですね。どうもお先に……」

「えー、じゃあ、お先に失礼」


 ドラゴンに飛行を許可する。もう慣れた飛び立つ瞬間、心は恐怖に満ちていた。今までとは違う恐怖。

 両手が空いてるお陰でそこまで邪魔じゃない弓矢は風の抵抗を受けて後ろへ飛んでいきそうだった。


 親方とかエラさんが大事じゃなかったわけではない。でも、カエデさんはなんかどうしても心配になってしまう……この(くせ)は治さないときっと面倒だぞ……


 スピードを上げ、カエデさんの近くに行くと、興奮した恐怖の感情を浮かべていた。初めて見る顔だ……


「大丈夫!?」

「あ、アキラさんも大丈夫ですか!? 私は平気です!……多分……」

「俺は大丈夫! もう慣れたから」


 慣れたって言っても三回ぐらいしか飛んでないけどね。でも、流石に初めての人よりは経験があるから、俺がこう……上手いこと先導(せんどう)していかないといけない。

 後ろからはエラさんも合流する。遠くに居るので話しかけられないが、笑顔で楽しそうだ。


「おーい! どうかな?」

「あ、大臣さん! なんとか大丈夫です!」

「それなら良かった! 弓矢は持ってきた!?」

「はい!」

「俺も持ってきました!」

「ははは! 君も!?……じゃあ、地上のあの木に当ててみてよ? ポツンッと立ってる木?」


 草原の中に一つだけ(さび)しそうに立ってる木は的としてちょうどいい。この宇宙に近づいた場所からあそこまでの距離は分からないが、動かない木ならば俺にも可能性はある。今度は俺が動いているけれども。


「ちょっと、とまって!」


 ドラゴンに止まるように指示をする。その場で羽をバタバタとさせ、ホバリングのような状態になる。これなら……いけるのか?


「まずは君から? やってみてよ?」

「よし……当てるぞ……」


 いくらドラゴンが止まってくれているとはいえ、ちょっとした揺れはあるし、風も地上より、強く吹いている気がする。

 ……難しい……ここは魔法とか使わずに実力で……いや、魔法使ったほうが……使うんなら弓じゃなくても良いか。弓の練習だ!


 おそらく無理だなぁとか思いながら、弦から手を離す。それは木に届く気配もなく地上に落ちていった。


「下手だね! はは!」

「私もやってみます!」


 真剣な顔をして、木を狙うカエデさんを見ていると、どこか神的な、霊的なものを感じた……カエデさんだけじゃなくて周りの環境がその弓に力を貸してるように。これは当たるな。間違いない。


 矢は遠くから音を立てて、命中したことを教える。思った通り当たった。


「凄いね!」

「ありがとうございます!!」


 俺よりも全然上手いじゃん。

 もしかしたら俺が助けられることになるのかもな。



読んでいただきありがとうございます!


よろしければ下の☆マークから評価などもよろしくお願いします!


ありがとうございました!

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