97 当たらない以前に届かない
昨日は疲れた……いつもより弓矢の練習が捗ってしまって、夕暮れまで外にいた。しかしドラゴンは一匹も倒せなかった。
なんだっけ? 今日はなにすんだっけ? 他国に行くためのアレコレをするのか?……とりあえず起きるか。
支度を済ませて、城への道を歩く。もう慣れたもんだよ。この街にも慣れた。だからここが大変なことになったら俺も嫌だし、出来ればそういうのは避けたい。
でも剣使いたい……どうしよっかねー。
城に入り、いつもと同じようにエラさんの部屋の扉をノックする。中からどうもと聞こえてきた。入ろう。
「おはよー」
「おはようございます。なんだかお疲れですねー?」
「そうだねー……で、今日は何しようか?」
「大臣のところにでも行きましょう? そっちの方がより具体的な話が出来ると思うので」
「それじゃ、とりあえず行ってみようか? 忙しくないと良いけど」
エラさんの部屋から大臣の部屋までの道を歩く。この道よく歩くなぁ。
「大臣? 今大丈夫ですか?」
「あ、来ると思ってたよ。入って?」
中に入るとそこには……カエデさんが居た。
「あ! カエデさん? どうしたの!?」
「アキラさん! 実は今日からみなさんと……」
「そう! もうこのメンバーで行くことが決まったから。四人も居れば十分でしょ? 多すぎても邪魔だしね」
「本当に大丈夫なんですかねー? 私は弓をまったく使えませんよ?」
「私も久々なので……心配です……」
俺も心配だ……クソ! 剣さえあれば!
「そもそも僕たちの目的はドラゴンを倒すことじゃなくて、他国を見つけることなんだから弓矢が下手くそでも良いんだよ?」
「まぁ、それはそうですね。確かに」
「とにかく一回、外に行ってみようよ? 弓とか持ってさ?」
そんなわけで一同は弓矢を持って外に出ることになる。その準備のために我が家へカエデさんと一緒に帰った。その途中で話した。
「良く許可してくれたね? でも大丈夫かな? 無理しないでね?」
「大丈夫です! 感覚が戻ればきっと……それに王子様も応援してくれたので……」
「そうなの!?」
「はい……違う国の話が聞きたいと言ってくださって」
「そっかぁ……じゃあ頑張ろう!」
「はい!」
へぇ、そこまで仲良くなってたんだ。もっと一緒に冒険するのは後になるかと思ってたけど今日からか。ただ……そうなると下手くそな弓矢が恥ずかしくなっちゃうな。うぅ……
「教えてくれない? 弓矢? ホントに全然飛ばなくて……」
「もちろん教えますよ! 私で良ければですけど」
「ありがとう! よろしくね」
家にある弓矢を取り、合流場所へと急ぐ。
「お! 来たね? それじゃあ行こうか! 楽しみだなぁ、ははは!」
「よろしくお願いします!」
「はは! よろしくね!?」
テンションたけー。何かおかしなものでも食べたか? それともホントに嬉しがってんのかな? 意外と大臣も戦いとか大好き? 意外でもねーか。
街の外に出て比較的安全な場所でドラゴンを待つ、その間は雑談とか大事な話とか色々な話をした。
「ひとまずドラゴンと戦って、その後にドラゴンに乗ってみようよ? カエデくんは初めて乗るよね?」
「そうですね。初めて乗ります」
「これに慣れないことには何もが始まらないからさ? 頑張ってね?」
「はい!」
「あの提案です。キャンプなどを出発する前にしてみるとかはどうでしょうか? 何日か野外での生活にも慣れる必要があるのかと思います」
「それもそうだけど……多分、問題ないよ? 魔法があるんだからさ。心配はあんまりしなくて良い」
そっかぁ、ここに居る人達ってみんな魔法のこと知ってるから堂々としてられるのか。咄嗟に魔法が出ても驚かれないっていうのは良いな。
「ん? 来たかな?」
「来ましたね! 私が!……」
「お! 君は上手そうだね? ちょっと待って?」
「え? どうしてですか?」
「エラとアキラくんにやらせてみてよ。ね? 二人で頑張って倒して。はは!」
ドラゴンの襲来にいち早く気付いたカエデさんが早速弓を構えて発射の体勢を整えている。しかし、それを大臣が制止した。
俺とエラさんの二人はいきなりそんなことを言われてしまって困っている。二人で出来るかな?
「やってみますか。隊長?」
「やるしかないね。頑張ろう」
空に向かってエラさんが弓を放つ。それは真っ直ぐ飛んでいって、もしかしたら当たるかもと期待した……が外れる。
そもそも動いてるドラゴンに弓を当てるって至難の業では? それこそ子供の頃から練習しても上手くいかないような……
「すみません……やっぱり私には……あぁ……」
「大丈夫……」
じゃない。大丈夫じゃないよ。俺も多分、当たらないし。うーん……魔法とか使わずに一回やってみるか? みんなにはバレるもんね……
狙いを定めて弦を引っ張る。思いっ切り引っ張ったそれを離すと、一応矢は飛んだ。でもドラゴンにはどう考えても届かないほどしか飛ばなかった。
「無理だ! 魔法使わないと絶対に無理……」
「アキラさん……」
「ふっはは!! でも上手くなってるよ! はは!」
ドラゴンは俺たちに向かって突進してきた。避けるのは得意だから問題ないけど、このままじゃ一生倒せない……
「もう分かったから良いよ? 君もやってみて?」
「分かりました! 今助けます!」
カエデさんは簡単そうに弓を構えて、放ち、簡単そうに当てた。いや、それマジで凄いよ……
「スゴ……」
「お怪我は?」
「大丈夫……でも……」
大丈夫か? これ、ホントに他国行けるのか?
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