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95 スパーダ

 

 大臣が去ってからは他国に行った後にどうするのか? ということがテーマになる、行くことは決まったようなものだから。

 細々(こまごま)としたことを決めたらいい時間になってしまった。今日はこれでお終いだな。カエデさんに話すこともあるし。


「それじゃ、今日はこれで。あと明日は休みね」

「はい。分かりましたー! お疲れ様でした!」


 家に帰る前に鍛冶屋さんに行ってみようかな。一日経ったし出来ててもおかしくない。

 なんとなく近づいてみるとまだトントンと中から音が聞こえてきたので、どうやら終わってないみたいだ。明日また来よ。でも、考えてみれば一人で作業してるんだもんな。ちょっと時間かかるのかも。


 話しかけるとまた邪魔になるだろうし、今日は大人しく家に帰ろう。


 家でじっと待っている。こういう時間にボケーッと絵画見てると有意義だと錯覚(さっかく)できるからいい。本当は無駄な時間なんだろうけど、だからといってやる事もないしな。


「ただいま帰りました。あの、お話聞きましたよ」

「ウソ!? もう知ってるの?」

「はい。えっと、長旅になるかもしれないんですよね?」

「それに死ぬかも……まぁそれはほとんど無いけどね」

「ついて行きたいです! 元々ずっと一緒に冒険したかったから」

「ありがとー、一緒に行こうか!」

「はい!」


 一緒に他国へと旅する。海外に旅行するような気持ちでいるけど、仕事だからな! ちゃんとしろよ俺!

 ニヤニヤとしてしまいそうなところを頑張って押し殺す。やっと一緒に冒険出来るんだ。


「まだいつから休みが貰えるかは分からないんですけど、休みになったら一緒に練習しませんか?」

「しよう。全然矢が飛ばなくて困ってたんだ」

「楽しみですね!」


 楽しみだよ! バカたれ! 楽しみに決まってんだろ!

 はぁ……やっと人生が良い方向に向いて来たぞ。このまま波に乗って、ここで幸せに暮らすんだ!


 …………


 珍しく朝早く起きたので、カエデさんと少し話した。


「おはようございます。早いですね?」

「カエデさんっていつもこれぐらい?」

「そう……ですね。いつも朝は早いです」

「途中までついてって良い? 邪魔?」

「あ、私も少しお話したいことがあったので……嬉しいです……」


 まだ寝癖(ねぐせ)がついたままの俺は眠いまま朝の街を歩く。朝ってなんか眩しいよなぁ。目があんまり開かない。


「あの絵、とっても素敵ですよね。でもどうして買うことになったんですか?」

「あぁ……」


 俺はお詫びのつもりで買って来てたんだけど、そういえば直接言ってないのか。言った方がいいのかな?


「夜に帰れなかった時あったじゃん。それの……お詫びじゃないけどさ。悪いことしたなーって思ったからまぁ……カエデさんにって思って」


 ここまで言ったら無粋(ぶすい)かな? でも正直に言ったほうがいいという説もある。難しい。


「そんな……お詫びだなんて……」

「いや、でも!……結局、俺が欲しい物を買っちゃったからさ。そんなに考えなくても良いよ?」

「そうですか?」

「うん。だって綺麗な絵だしね?」

「そうですね! 懐かしいなぁ……」


 またあの時と同じように物思いにふけったような顔をする。なんか申し訳ないけど、この顔のカエデさんも素敵だな……気持ち悪いかも、俺。


「送っていただきありがとうございました! 頑張ります!」

「それじゃ、いってらっしゃい?」

「いってきます!」


 城の中に消えていくカエデさんをしっかりと最後まで見送る。なんなら居なくなってもずっと見てる。

 さて、これから何をしようかな。とりあえず、おじいちゃんところ行こうかな。鍛冶屋の。


 うーん。出来れば俺たちが他国を探しに行ってる(あいだ)に工事を進めて欲しいな。そうするとパズルみたいに時間の使い方がハマって気持ちいい。

 親方の正式な鍛冶屋の再開がいつになるか分からない以上はメインはこっちになるわけだし、こことも長い付き合いになりそうだ。


 鍛冶屋の通りを歩いているといつもとは違って音が聞こえない。作業してないってことだ。

 朝早いからって可能性もあるけど、もう終わったのかな。


「すみませーん!」


 来ないだろうなと思いながら呼び出してみる。うん。ダメ。

建物の入り口とは言えない穴の中に首を突っ込んで、もう一度呼び出す。


「すみませーん!!」


 すると背後から背中をどつかれた。


「いったぁ……」

「なんじゃー! わしの家に!」

「あ、どうも。お疲れ様です……」

「ん? 見たことあるのぉ〜?」

「剣を……ミリアさんの紹介で……」

「ミリア?……あぁ、あぁ! 思い出したぞー」


 思い出してくれて良かった。こう言っちゃアレだけど年齢的にアレかと思った。失礼か。


「出来上がっとるぞい。ほれ!」

「あ、ホントだ。凄い……」


 渡された剣を中々しっかりしていて、思っていたよりは綺麗な出来栄えだ。でもやっぱり親方の方が上手いのは持っただけでわかる。ちょっと重心の位置が噛み合ってないような……でも! 十分!


「あの、お話があるんですけど、良いですか?」

「ほう、なんじゃ」

「これから俺の剣を……あの、ミリアさんが鍛冶屋再開できるまでここで剣を作ってもらって良いですか?」

「何!? ホントか!」

「はい。それでですけど……このままじゃ作業しづらくないですか? だから、大工さんを」

「大工!? わしはそういうのは好かん!」

「えー、でも……」

「このとおり作業は出来る! 余計な世話をやくんじゃないわい!」


 そう来るかぁ。こだわりが強い系の人ね。困ったなぁ、困ったのか? 剣を作り続けてくれるなら別にこのままでも……いや、だって俺が中に入れないじゃん! それは不便だよ。多分。


「大工さんはダメですか? 俺もおじいさんが作業するところ見たいです」

「……な、うーん。いや! ダメ……」

「俺はアキラって言います。この剣も大切に使います……どうですか?」

「……スパーダじゃ」

「ん?」

「わしの名前はスパーダ。お前がその剣を使いこなせるのならば! 工事を認めやろう!!」

「え、というか?」

「今から外に出るぞい! いそげー」


 元気だなぁ。でも、認めるって何をしないといけないの? 普通にドラゴン狩り? なら大丈夫だな!



読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークから評価などもよろしくお願いします!


ありがとうございます!

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